2025年11月25日、Messier 42 LLC(M42)はConstellation NetworkおよびDFNN Inc.と協業し、フィリピンでAI・ブロックチェーン・暗号資産を統合したエコシステム構築に向けた戦略的提携を発表した。
この取り組みでは、規制された取引所、ナショナルロッテリー、ゲーミング、キャピタルマーケット、バンキング、オンライン取引などをWeb3技術と分散型金融と結びつけることを目指している。
フィリピンではロッテリーがゲーミング収益の45%超を占め、アジア太平洋地域が世界ロッテリー市場の38%を占めているほか、人口の約13%が暗号資産を利用しており、世界でも高い暗号資産採用率となっている。
フロントエンドでは暗号資産によるナショナルロッテリーチケットの購入を可能にし、バックエンドではM42のTransformational AIとConstellation NetworkのHypergraph NetworkおよびDAGトークンを活用して、データ検証やセキュリティ、透明性を担保する設計となっている。
DFNN Groupは、ロッテリー、ゲーミング、キャピタルマーケット、取引所、バンキング、ペイメント、オンライン取引などに関するフィリピン国内のライセンスと運営ノウハウを提供し、規制とイノベーションの橋渡し役を担う。
【編集部解説】
このニュースは、フィリピンという「規制産業が色濃い市場」に対して、AIとブロックチェーン、暗号資産を一気通貫で実装していく大規模な実証実験の入口として捉えると分かりやすいです。 単に「暗号資産でロッテリーが買えるようになる」という話ではなく、取引所やゲーミング、キャピタルマーケット、バンキング、オンライン取引といった既存のインフラを段階的にWeb3化していく長期的なロードマップの起点になっています。
技術的な構造はシンプルで、フロント側では暗号資産でナショナルロッテリーチケットを購入できる体験をつくり、バックエンドではM42のTransformational AIとConstellation NetworkのHypergraph Networkを組み合わせてデータの検証・トレーサビリティ・不正検知を担います。
このネットワーク上ではDAGトークンが検証とセキュリティ維持の役割を持ち、DFNN Groupがフィリピン国内で保有するロッテリー、ゲーミング、キャピタルマーケット、ペイメントなどのライセンスを通じて、規制順守と新技術の導入を両立させるポジションを取っています。
フィリピンが舞台に選ばれた背景には、ロッテリーがゲーミング収益の45%以上を占め、アジア太平洋が世界ロッテリー市場の38%を担うという市場規模に加え、人口の約13%が暗号資産を利用しているという高い採用率があります。 さらに、海外送金インフラが発達していることや、AI・ブロックチェーン技術の受容性が高いことも相まって、「責任あるデジタル金融インクルージョン」を試すには相性の良い条件が揃っていると言えます。
ポジティブな側面としては、ブロックチェーンを利用することでロッテリーの抽選プロセスや資金フローの透明性が高まり、不正抑止や信頼性向上につながる余地がある点が挙げられます。 すでにロッテリーに親しんでいるユーザーが、暗号資産ウォレットやWeb3サービスに自然にオンボードされることで、フィリピン発のデジタル金融エコシステムの裾野が広がる可能性も小さくありません。
一方で、国家レベルのロッテリーと暗号資産を結びつける以上、依存や過度な投機、マネーロンダリングといったリスクも増幅し得るため、これまで以上に厳格なガバナンスが不可欠になります。 KYC/AMLの徹底やスマートコントラクトの脆弱性対策、RegTechとしてのAIの説明可能性など、技術だけでは解決しない設計課題にどこまで向き合えるかが、このプロジェクトの成否を大きく左右するはずです。
長期的には、今回の取り組みは「ロッテリーのWeb3対応」にとどまらず、「国家レベルの基幹業務をAI+ブロックチェーンで段階的に置き換えるためのリファレンスモデル」を世界に提示する試みと見ることができます。 もしフィリピンで安定した運用実績が積み上がれば、同様の枠組みが他国のロッテリーやデジタル債券、送金ネットワーク、さらには公共サービスの配分プロセスにまで展開される可能性があり、「規制産業×Web3」の標準事例として位置づけられていくでしょう。
【用語解説】
ナショナルロッテリー
国家レベルで運営される公的な宝くじ事業の総称であり、フィリピンではPhilippine Charity Sweepstakes Office(PCSO)が所管している制度である。
Web3
ブロックチェーンなど分散型技術を前提とした次世代インターネットの概念であり、ユーザーがデータやデジタル資産の所有権を直接持つことを重視するアーキテクチャである。
分散型金融(DeFi)
銀行などの仲介機関を介さずにスマートコントラクト上で金融サービスを提供する仕組みの総称であり、レンディングや分散型取引所などが含まれる。
Transformational AI
M42が掲げるAIプラットフォームコンセプトであり、業務フローやデータ処理を再設計しつつ、コンプライアンスや不正検知といった領域にもAIを活用することを志向する枠組みである。
Hypergraph Network
Constellation Networkが運営する分散型ネットワークで、DAG構造を採用し、スケーラブルかつ検証可能なデータ伝送と処理を行うためのインフラである。
DAGトークン(DAG)
Constellation Networkのネイティブ暗号資産であり、ネットワーク上でのデータ検証や報酬付与、セキュリティ維持に利用されるユーティリティトークンである。
フィリピンの暗号資産採用率
暗号資産の保有または利用経験がある人口比率を指す指標であり、複数の調査で世界上位に位置づけられていると報告されている。
【参考リンク】
M42(外部)
AIとデジタルトランスフォーメーションを軸に、クラウドやセキュリティを含む技術ソリューションをグローバルに提供するテクノロジー企業である。
Constellation Network(外部)
Hypergraph Networkを基盤としたブロックチェーンエコシステムを運営し、スケーラブルで検証可能なデータインフラをWeb3とエンタープライズ向けに展開しているプロジェクトである。
DFNN Inc.(外部)
フィリピン証券取引所上場のITソリューション企業で、ゲーミングやロッテリー、金融、オンライン取引分野でシステム統合や決済サービスを手がけている。
Philippine Charity Sweepstakes Office(PCSO)(外部)
フィリピンのナショナルロッテリーを運営し、その収益を医療支援や社会福祉プログラムに充当している政府機関である。
Philippine Amusement and Gaming Corporation(PAGCOR)(外部)
カジノやオンラインゲーミングなどを監督し、DFNNグループの電子ゲーミングやスポーツベッティング関連ライセンスの発行主体となっている政府系機関である。
【参考記事】
M42, Constellation Network and DFNN Group Announce Agreement to Pioneer the World’s First Blockchain and Crypto-Integrated National Lottery(外部)
M42、Constellation Network、DFNNがフィリピンでAI・ブロックチェーン・暗号資産を統合したエコシステムを構築し、暗号資産でナショナルロッテリーを購入できる仕組みやDAGトークンの役割、DFNNのライセンス保有状況を詳細に説明している。
M42, Constellation Network, DFNN Group Team up for New Use Cases in Philippines(外部)
フィリピンの高い暗号資産採用率やロッテリー市場規模を背景に、この提携がロッテリーやゲーミングだけでなく決済や資本市場にも波及し得るWeb3ユースケース拡大の試みであると解説している。
M42, Constellation, DFNN Unite to Build AI-Blockchain-Crypto Ecosystem in Philippines(外部)
AIとブロックチェーンを組み合わせたコンプライアンス強化や透明性向上の狙い、DFNNが保有するロッテリーやゲーミング関連ライセンス、フィリピンにおけるデジタル金融インクルージョンの文脈を整理している。
Philippines Launches Blockchain-Integrated National Lottery(外部)
フィリピンのロッテリー収益比率やアジア太平洋地域の市場シェア、暗号資産利用人口の割合などの数字を示しつつ、ブロックチェーンでロッテリー抽選プロセスを透明化する取り組みを紹介している。
M42, Constellation, DFNN Launch Web3 National Lottery(外部)
Web3ナショナルロッテリー構想として、ユーザー体験の変化やDAGトークンのユーティリティ、他国へのモデル展開可能性などに焦点を当てた解説を行っている記事である。
【編集部後記】
ナショナルロッテリーにブロックチェーンと暗号資産、さらにAIまで重ねていく動きは、「公営ギャンブル×Web3」というかなり攻めた実験にも見えますが、フィリピンの現状を踏まえると、生活に近いレイヤーから社会インフラが変わっていく可能性を感じさせる取り組みでもあります。
もし自分がフィリピンに暮らしていて、給料の一部や海外からの送金、そしてロッテリーまでもが暗号資産やオンチェーンの仕組みとつながっていくとしたら、どんなメリットや違和感がありそうか──そんな「自分ごと」として、このニュースを眺めてみてもらえるとうれしいです。






























