11月30日【今日は何の日?】「カメラの日」カメラが138年かけて辿った道を、AIは何年で辿るのか

 - innovaTopia - (イノベトピア)

1977年11月30日。小西六写真工業(後のコニカ、現コニカミノルタ)が、世界初のオートフォーカスカメラ「コニカC35AF」を発売しました。愛称は「ジャスピンコニカ」。2年間で100万台を売り上げました。

それまでカメラを扱うには、ピント合わせという技術が必要でした。被写体との距離を測り、レンズを回し、ファインダーを覗いて微調整する。

オートフォーカスは、その壁を取り払いました。シャッターを押すだけで、機械が自動でピントを合わせる。

しかし、カメラが最初に世に現れたのは1977年ではありません。その138年前、1839年のことでした。

1839年、機械が絵を描いた

1839年8月19日、パリ。フランスの科学アカデミーと芸術アカデミーの合同会議で、世界初の実用的な写真術「ダゲレオタイプ」が発表されました。

銀板に光そのものを定着させる。絵筆を使わず、機械が現実を写し取る。

「ダゲレオタイプ狂」という言葉ができるほど、人々を熱狂させました。

詩人シャルル・ボードレールは、1859年のサロン評でこう書きました。「もしも写真が、芸術の諸機能のいくつかにおいて芸術の代行を果すことを許されるならば、写真は間もなく芸術の地位を奪ってしまっているか、芸術を完全に堕落させてしまっていることでしょう」

写真はその本当の義務に戻るべきだ。「諸科学、諸芸術の下婢」として。

機械が現実を写し取ることで、画家は不要になるのではないか。何百年も続いてきた絵画という営みは、終わりを迎えるのではないか。

しかし、歴史はそうなりませんでした。

写真の登場により、画家たちは写実から解放されました。光や印象を描く印象派が生まれました。クロード・モネ、オーギュスト・ルノワール、エドガー・ドガ。

ドガは写真を積極的に使い、写真的な構図を絵画に取り入れました。

2020年代、機械が絵を描く日(再び)

Stable Diffusion、Midjourney、そしてChatGPT。

プロンプトを入力するだけで、一瞬で絵が現れる。

クリエイターたちの間に恐怖が走りました。

「これはその人が絵にかけてきた何百何万時間を馬鹿にするようなこと」。「長年かけて築き上げた独自の画風が、AIによって瞬時に模倣される恐怖」。SNSに、怒りと不安の声が溢れました。

構造は、1839年と同じです。

ただ、冷静な声もあります。あるイラストレーターは言いました。「生成AIに潰されてしまうぐらいなら、生成AIとか関係なしにそれまでのクリエイターだったんだな」

オートフォーカスは、波のように訪れる

1839年、ダゲレオタイプが登場しました。しかし、それは「誰でも使える」ものではありませんでした。銅板を磨き、ヨウ素蒸気にさらし、水銀で現像する。露光時間は10〜20分。専門的な知識と技術が必要でした。

138年後の1977年、オートフォーカスが登場して初めて、写真は本当に「誰でも撮れる」ものになりました。

では、AIはどうでしょうか。

2022年、ChatGPTの登場

それまでのAIは、プログラミング言語やコマンドラインでの操作が必要でした。機械学習モデルを訓練し、パラメータを調整し、コードを書く。

2022年11月、ChatGPTが登場しました。自然言語で話しかけるだけで、AIが応答する。プログラミングの知識は不要です。

しかし、それで終わりではありませんでした。

2023年以降、まだ途中

ChatGPTが使えるようになっても、まだ壁があります。プロンプトエンジニアリングという「技術」。「このデータを整理して」ではなく、「このデータをこのようなルールに基づき、このような順番で出力して」と指示する必要があります。

2023年以降、AIは進化を続けています。画像を見て、音声を聞き、動画を理解する。複数のツールを自律的に使いこなすエージェントAIも登場しました。

でも、まだ完璧ではありません。企業の担当者からは「どうやって使えばいいのかのイメージがわかない」という声が上がります。AIを「使いこなせる人」と「使いこなせない人」の差は、まだ大きい。

未来、どこまで行くのか

AIが人間の意図を完全に理解し、専門知識もプロンプトの技術も不要になる日は来るのでしょうか。あなたが「何かいい感じにしてほしい」と言えば、AIがあなたの文脈、好み、過去の行動から意図を読み取り、最適な結果を返してくれる。

その日が来るのかどうか、まだわかりません。

1977年の後に起きたこと

1977年、オートフォーカスカメラが登場した後、写真は爆発的に普及しました。誰もが日常を記録し、瞬間を残すようになりました。

プロのカメラマンは消えませんでした。むしろ、「機械にはできない」構図、光の捉え方、ストーリーテリングが重要になりました。

1839年の画家たちが、写真の登場後に印象派を生み出したように。

カメラは、写実という営みを機械に委ねました。

AIは、生成という営みを機械に委ねようとしています。


Information

参考リンク

用語解説

ダゲレオタイプ 1839年にルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが発明した世界初の実用的写真術。銀メッキした銅板を感光材料として使い、水銀蒸気で現像する。

オートフォーカス(AF) カメラが自動的にピントを合わせる機能。1977年、コニカが世界初のオートフォーカスカメラ「コニカC35AF(ジャスピンコニカ)」を発売した。

プロンプトエンジニアリング AIに対して効果的な指示を作成する技術。現在の生成AIでは、的確なプロンプトを作成することで、より意図に沿った結果が得られる。

エージェントAI 自律的に複数のツールを使いこなし、タスクを遂行するAI。ユーザーの指示に基づいて、情報検索、データ分析、ファイル操作などを自動的に実行する。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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