くまアラート™発表、エッジAIで市街地のアーバンベア被害を初動防御─2026年4月実用化へ

くまアラート™発表、エッジAIで市街地のアーバンベア被害を初動防御─2026年4月実用化へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Forex Robotics株式会社は2025年11月28日、市街地に出没するアーバンベア対策システム「くまアラート™」を発表した。

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Forex Robotics社PRTIMESより引用

同社は千葉県船橋市に本社を置き、代表取締役は髙橋一行氏である。2025年は統計史上最悪のクマ被害数を記録し、11月時点で死亡事故は13名に上る。被害ケースの半数が市街地での「アーバンベア」による「ばったり遭遇型」事故だった。

くまアラート™はエッジAIでクマを検知し、警告灯の点灯、クラウドサーバへの通知、半径5km以内のスマートフォンアプリユーザへの一斉通知をリアルタイムで行う。現在、Tokyo Innovation Baseと栃木県の支援を受け、那須塩原市で12月からフィールド実証を実施予定である。正式販売は2026年4月を予定している。また、被害自治体への導入を促進するため、CAMPFIREでクラウドファンディングプロジェクト「みんなで応援!クマ対策実証パック」を近日中に開始する。

From: 文献リンクエッジAI利用のアーバンベア対策「くまアラート」を発表。被害自治体向けのクラウドファンディングを開始へ。

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Forex Robotics社PRTIMESより引用

【編集部解説】

2025年のクマ被害は統計史上最悪のペースで推移しており、環境省の速報値では4月から10月までの人身被害が196人に達しています。特に注目すべきは、死亡事故13件のうち半数が市街地での「ばったり遭遇型」という点です。これまでクマ対策は山間部での問題として捉えられてきましたが、東京都八王子市での目撃情報が示すように、もはや都市近郊でも無視できない脅威となっています。

くまアラート™が採用する「エッジAI」とは、クラウドにデータを送らずデバイス内でAI処理を完結させる技術です。野生動物検知の分野では、インターネット接続が不安定な山間部や森林地帯でもリアルタイム検知が可能になるため、近年注目を集めています。既存のトレイルカメラは記録するだけで即座の警告ができず、クラウド型AIカメラは通信遅延が課題でした。エッジAIなら検知から即座に現地での警告灯点灯と周辺住民への通知が実現できます。

このシステムの本質的な価値は「初動対応の時間を生み出す」点にあります。クマとの遭遇事故の多くは、存在に気づかず至近距離で鉢合わせすることで発生します。半径5km以内のユーザーにリアルタイム通知することで、住民は外出を控える、子どもの登下校ルートを変更する、農作業を中断するといった具体的な回避行動をとれるようになります。

一方で、誤検知による「オオカミ少年」効果は避けられません。頻繁に誤報が続けば、住民が通知を無視するようになるリスクがあります。AIモデルの精度向上と、ユーザーが通知の信頼性を判断できる仕組み(検知画像の共有など)が実用化の鍵となるでしょう。また、プライバシー保護の観点から、市街地での監視カメラ設置には住民の理解と合意形成が不可欠です。

2026年4月の正式販売を前に、12月から那須塩原市で実施されるフィールド実証では、検知精度だけでなく、自治体や住民がどのように運用に関わるかという社会実装の側面も検証されることになります。政府のクマ対策パッケージが捕獲に重点を置く中、テクノロジーによる「予防」と「減災」のアプローチは、人とクマの共生を模索する新たな選択肢として期待されています。

【用語解説】

アーバンベア
市街地や住宅地に出没するクマを指す用語。従来、クマは山間部に生息する野生動物とされてきたが、近年は人里に降りてくるケースが増加している。特に都市近郊での「ばったり遭遇型」事故が問題となっており、従来の山間部対策とは異なるアプローチが求められている。

エッジAI
クラウドサーバーにデータを送信せず、デバイス内部でAI処理を完結させる技術。通信遅延が発生しないため、リアルタイム処理が可能になる。また、インターネット接続が不安定な環境でも動作し、プライバシー保護の観点からも優れている。野生動物検知システムでは即座の警告が必要なため、エッジAI技術が適している。

トレイルカメラ
野生動物の生態調査や監視に使用される自動撮影カメラ。動物が通過すると赤外線センサーが反応して自動的に撮影する。ただし、撮影した映像は後から確認する仕組みのため、リアルタイムでの警告や通知には対応していない。

ガバメントハンター
政府主導で育成される公的なハンターのこと。高齢化や人員不足が深刻化する狩猟者の状況を踏まえ、公的機関が雇用・育成する専門的な捕獲従事者を指す。政府のクマ対策パッケージでも育成強化が盛り込まれている。

【参考リンク】

Forex Robotics株式会社(外部)
2015年設立のソフトウェア会社。有害獣捕獲情報管理システム「いのしかレコード」や「くまアラート™」を開発。

CAMPFIRE クマ対策実証パックプロジェクト(外部)
被害自治体へ「くまアラート™」のフィールド実証と1年間の保守を届けるクラウドファンディング。

環境省 クマに関する各種情報・取組(外部)
環境省が公開するクマ被害の統計データや対策に関する公式情報ページ。全国の被害状況を確認できる。

東京都クマ目撃情報(外部)
東京都が公開するクマの目撃情報データベース。八王子市など都市近郊での目撃情報をリアルタイム確認。

【参考記事】

2025年の熊被害は196人に|環境省が4〜10月の状況を発表(外部)
環境省の速報値として2025年4月から10月までの人身被害が196人に達したことを報告する記事。

Edge AI Wildlife Detection System for Remote Farm Protection(外部)
エッジAIを活用した野生動物検知システムの技術解説。リアルタイム処理の利点を説明している。

Edge AI Wildlife Detection Using Raspberry Pi Zero(外部)
小型デバイスによるエッジAI野生動物検知システムの実装例。検知から警告までの遅延を最小化する技術。

Wildlife Detection Systems – AI for Habitat Protection(外部)
AI技術を活用した野生動物検知システムの概要と課題。リアルタイム通知の重要性について解説。

Wildlife Research Centre in Japan use IoT to track roaming black bears(外部)
日本の野生動物研究センターがIoT技術でクマを追跡する事例。GPS首輪とクラウドシステムの活用。

【編集部後記】

クマ被害が「もはや地方だけの問題ではない」現実を、私たちはどう受け止めればいいのでしょうか。東京都八王子での目撃情報は、テクノロジーによる予防策が都市生活者にとっても無関係ではないことを示しています。

くまアラート™のようなシステムが実用化されたとき、私たちの街にもカメラが設置されることになるかもしれません。そのとき、安全とプライバシーのバランスをどう考えますか?また、クラウドファンディングという形で市民が防災インフラを支える仕組みについて、皆さんはどう感じられるでしょうか。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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