ウズベキスタンがステーブルコイン決済とトークナイズド株・債券を承認-中央アジア発の「規制型クリプトハブ」戦略とは

ウズベキスタンがシテーブルコイン決済とトークナイズド株・債券を承認-中央アジア発の「規制型クリプトハブ」戦略とは - innovaTopia - (イノベトピア)

中央アジアの一国が、ステーブルコインとトークナイズド証券を「実験段階」から「制度の中核」へと押し上げようとしています。
遠い国の出来事というより、これから私たちが触れる金融インフラの「次の当たり前」なのかもしれません。


ウズベキスタンは2026年1月1日から、National Agency for Perspective Projectsと中央銀行が管理する規制サンドボックスの下で、ステーブルコインを決済手段として試験運用する制度を導入する。

同日から、国内に登録された法人は分散型台帳技術を用いたトークナイズド株式や債券の発行が可能となり、ライセンスを受けた証券取引所が専用の取引プラットフォームを準備する。

中央銀行総裁Timur Ishmetovは、ステーブルコインの決済利用を厳格な監督付きで認める方針とし、一般向けではなく銀行間決済向けのホールセールCBDCモデルの検証も継続すると述べた。 2023年以降、住民の暗号資産取引は国内のライセンス登録済み事業者経由に限定され、匿名取引や海外取引所の利用は禁止されている。

2024年時点で人口の約1.5%が暗号資産を保有し、国内事業者は累計10億ドル超を処理し、同国は暗号資産普及度で世界33位となっている。

From: 文献リンクUzbekistan Legalizes Stablecoins for Payments and Tokenized Stocks in Massive 2026 Overhaul | CryptoRank.io

【編集部解説】

ウズベキスタンは、中央アジアの中でもとくに「管理されたかたちでのデジタル金融」を志向している国です。 2026年1月からのステーブルコイン決済とトークナイズド証券の制度化は、単なる暗号資産の容認ではなく、既存の金融インフラをブロックチェーンで補強する試みと捉えられます。

今回の枠組みの特徴は、「フルオープンなクリプト市場」ではなく、National Agency for Perspective Projectsと中央銀行が運営する規制サンドボックスの中で、利用範囲と参加主体をコントロールしている点です。 ステーブルコインを決済に使えるようにしつつも、リスク監視や技術検証を並行させる設計は、既存インフラが十分とはいえない新興国だからこそ取りやすいアプローチだと感じます。

トークナイズド株式・債券をライセンス取得済みの証券取引所で扱うという設計は、「トークン経済」の中でもリアルワールドアセットにフォーカスしていることを示しています。 これは、既存の証券規制の延長線上でブロックチェーンを組み込む発想であり、DeFi的な無許可市場とは距離を取りつつ、流動性とアクセス性を高めようとする動きです。

一方で、中央銀行はホールセールCBDCの検証にとどめ、一般向けCBDCには踏み込んでいません。 国内居住者の暗号資産取引をライセンス事業者に完全に集約し、匿名取引や海外取引所を禁止している現状を見ると、「通貨主権を守りつつ、デジタル資産のメリットだけを取り込みたい」という慎重さもはっきり見えてきます。

グローバルを見ると、EUのMiCA、米国のGENIUS Act、香港やUAEのライセンス制度など、2025年前後はステーブルコイン規制が実装フェーズに入ったタイミングです。 その中でウズベキスタンは、規模では劣る一方、「規制サンドボックス+RWAトークン市場」をセットで走らせることで、地域レベルの金融ハブを狙うポジション取りをしているように見えます。

日本から見たとき、このモデルは「狭い範囲であっても、実際の決済と証券市場にブロックチェーンを組み込む」ための一つの実験例として参考になりそうです。 その一方で、規制当局への依存度が高いがゆえに、政治や政策の変化がダイレクトに市場リスクになる点もあり、長期で関わるプレイヤーにはガバナンスリスクの見極めが求められる局面だといえます。

【用語解説】

ステーブルコイン
法定通貨や資産に価値をペッグし、価格変動を抑えることを目的とした暗号資産の一種である。

トークナイズド証券(Tokenized Securities)
株式や債券などの既存の証券をブロックチェーン上のトークンとして表現し、発行・保有・取引をデジタルに管理できるようにした証券である。

規制サンドボックス
一定の条件や期間のもとで、新しい金融サービスや技術を限定的に実験できる制度であり、当局がリスクと効果を検証する枠組みである。

ホールセールCBDC
一般市民ではなく、銀行や決済事業者など金融機関間の決済用途に限定して発行・利用される中央銀行デジタル通貨の形態である。

リアルワールドアセット(RWA)
株式、債券、不動産など現実世界の資産を指し、これらをトークン化してブロックチェーン上で扱うコンセプトを含む用語である。

暗号資産サービスプロバイダー(CASP)
取引所、カストディ業者など、暗号資産の売買や保管、交換を提供する事業者の総称で、ライセンス制や監督の対象となることが多い。

【参考リンク】

National Agency for Perspective Projects(外部)
ウズベキスタンで暗号資産やフィンテックを含む将来プロジェクトを管轄する政府機関の公式サイトである。

Central Bank of the Republic of Uzbekistan(外部)
ウズベキスタン中央銀行の公式サイトで、通貨政策や決済システム、金融規制に関する情報を発信している。

Cryptonews(外部)
暗号資産・ブロックチェーン関連のニュースや分析を提供するグローバルなオンラインメディアである。

CryptoRank(外部)
暗号資産市場の価格データやニュースフィードを提供し、プロジェクトや市場トレンドを可視化する情報プラットフォームである。

Fireblocks(外部)
機関投資家や企業向けにデジタル資産の保管・送金・決済インフラを提供するセキュリティプラットフォームである。

Polygon Labs(外部)
Ethereum互換のレイヤー2ソリューション「Polygon」を開発し、スケーラブルなブロックチェーン基盤を提供している組織である。

Solana Foundation(外部)
高スループットなブロックチェーン「Solana」のエコシステム支援を行い、開発者やプロジェクトを支援する財団である。

TON Foundation(外部)
Telegram由来のブロックチェーン「The Open Network(TON)」を開発・普及させる財団であり、メッセージングとWeb3の連携を推進している。

Stellar Development Foundation(外部)
クロスボーダー送金などを主用途とするブロックチェーン「Stellar」の開発と普及を支える非営利組織である。

【参考記事】

Uzbekistan Legalizes Stablecoins for Payments and Tokenized Stocks in Massive 2026 Overhaul(外部)
2026年1月1日からの規制サンドボックス導入やステーブルコイン決済、トークナイズド証券解禁の概要と、既存の暗号資産規制との関係を整理した記事である。

Uzbekistan to Permit Stablecoin Payments from 2026(外部)
国内登録法人によるトークナイズド証券発行と、ライセンス取得済み取引所での売買が可能になる点に焦点を当て、制度の施行スケジュールや規制サンドボックスの枠組みを説明している。

Uzbekistan Legalizes Stablecoins for Payments Beginning January 2026(外部)
ステーブルコインが支払い手段として認められるプロセスと、暗号資産サービスプロバイダーのライセンス制度、厳格な監督体制について解説している。

Uzbekistan Embraces Stablecoins: Regulatory Sandbox Launches in 2026(外部)
規制サンドボックスの目的や決済システム近代化へのインパクトを解説し、国際的なステーブルコイン規制の動きとの比較も行っている記事である。

Stablecoins Become Legal Payment in Uzbekistan Starting 2026(外部)
ステーブルコインを公式な支払い手段として位置づける決定について、導入スケジュールと市場への影響を簡潔にまとめている。

Uzbekistan Launches Stablecoin Payments Under Tight Oversight(外部)
厳格な監督体制のもとで行われるステーブルコイン決済と、国内ライセンス事業者への取引集約を軸に、同国の「強監督型」アプローチを紹介している。

Uzbekistan Greenlights Stablecoins for Payments Under New Sandbox Mechanism(外部)
規制サンドボックスの新メカニズムと、暗号資産普及率や取引量、世界ランクなどの数値を紹介し、中央アジアでの位置づけを示している。

【編集部後記】

中央アジアのウズベキスタンが、ステーブルコインやトークナイズド証券をここまで本気で制度に組み込みにきたことを、どのように感じましたか。 日本にいると「まだ先の話」に見えがちなテーマですが、決済や証券のインフラそのものを作り替える実験が、すでに各国で静かに走り始めています。

もし、自分の生活圏や仕事の現場でステーブルコイン決済やトークン化された株・債券が当たり前になったとしたら、どんなことが便利になりそうか、一度イメージしてみてください。 そのイメージが、これからどんな技術やサービスに関わっていくかを選ぶうえでの、小さなコンパスになるはずだと感じています。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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