サムスン電子は初のマルチ折りたたみスマートフォン「Galaxy Z TriFold」を発表した。12月12日に韓国で発売され、その後中国、台湾、シンガポール、アラブ首長国連邦でも展開される。米国での発売は2026年第1四半期を予定している。
価格は3,594,000韓国ウォン(2,449ドル)で、16GBメモリと512GB/1TBストレージを搭載した黒色のモデルとして出荷される。
デバイスは2つの内向き折りたたみヒンジを使用して10インチディスプレイに展開し、解像度は2160 x 1584である。折りたたみ時の厚さは12.9mmで、Galaxy Z Fold6の12.1mmや最新のGalaxy Z Fold7の8.9mmよりもわずかに厚い。
3つの折りたたみ可能なパネルは3つのアプリを縦に並べて実行でき、別のディスプレイなしでデスクトップのようなモードを提供する。サムスンの折りたたみ式モデルの中で最大のバッテリー容量を備え、30分で50%まで充電できる超高速充電をサポートする。IP48定格で最大1.5メートルの水深で30分間の耐水性を持つが、防塵保護は限定的である。
サムスンは2019年に初の折りたたみ式デバイスを発表した。ファーウェイは9月に中国市場向けに第2世代の三つ折り携帯電話を発表しており、折りたたみ時の厚さは12.8mmである。
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Samsung launches its first multi-folding phone as competition from Chinese brands intensifies
【編集部解説】
サムスン電子が初の三つ折りスマートフォン「Galaxy Z TriFold」を発表しました。折りたたみ式スマートフォン市場において、これは単なる新製品の発表以上の意味を持つ出来事です。
2019年に初の折りたたみ式スマートフォンを発表し、この分野を牽引してきたサムスンですが、実は現在、同社は厳しい競争環境に直面しています。調査会社TrendForceによれば、サムスンの折りたたみ式スマートフォン市場におけるシェアは2024年の45.2%から2025年には35.4%まで低下すると予測されています。
その最大の理由が、中国メーカーの台頭です。特にファーウェイは2024年9月に世界初の三つ折りスマートフォン「Mate XT」を発表し、さらに2025年9月には第2世代の「Mate XTs」を投入しました。これらの製品は中国市場で大きな成功を収め、ファーウェイの折りたたみ式スマートフォンの出荷台数は2024年に90%以上増加しました。
Galaxy Z TriFoldは、サムスンがこの競争に対抗するための重要な一手です。技術的には非常に野心的な製品で、展開時にはわずか3.9mmという薄さを実現しています。これはiPad Airよりも薄く、現在の主流スマートフォンと比較しても驚異的な数値です。また、5,600mAhという折りたたみ式スマートフォンとしては最大級のバッテリー容量、200MPのメインカメラなど、技術的な進化が随所に見られます。
しかし、このGalaxy Z TriFoldは大量生産を目指した製品ではありません。価格は約2,449ドル(約36万円)と非常に高額で、韓国での初回販売は12月12日、米国での発売は2026年第1四半期と限定的です。アナリストのLiz Lee氏が指摘するように、これは「技術的リーダーシップを強化するためのパイロット製品」なのです。
なぜサムスンがこのタイミングでこのような製品を投入したのか。その背景には、2026年に予想されるAppleの折りたたみ式スマートフォン市場参入があります。複数の信頼できる情報源によれば、Appleは2026年後半に初の折りたたみ式iPhone「iPhone Fold」を発売する予定です。予想価格は2,000〜2,500ドルで、クリースのない革新的なディスプレイ技術を採用すると言われています。
折りたたみ式スマートフォン市場は現在、転換点を迎えています。2025年の市場浸透率はわずか1.6%程度に留まり、成長が停滞していますが、調査会社Omdiaは2026年に50%以上の成長を予測しています。Appleの参入が市場全体を活性化させるというのが業界の共通認識です。
サムスンにとってGalaxy Z TriFoldは、Apple参入前に技術的優位性を示し、ブランドイメージを強化する重要な製品です。大量生産よりも、「サムスンは最先端の折りたたみ技術を持っている」というメッセージを市場に発信することが主な目的と考えられます。
ファーウェイMate XTとの比較も興味深い点です。Mate XTは10.2インチディスプレイ、折りたたみ時12.8mm厚で、66Wの超高速充電に対応しています。一方、Galaxy Z TriFoldは10インチディスプレイ、12.9mm厚、45W充電です。スペック上は拮抗していますが、ファーウェイは中国市場に集中しているのに対し、サムスンはグローバル展開を視野に入れています。
折りたたみ式スマートフォンが真に普及するためには、価格、耐久性、実用性の3つの課題を克服する必要があります。Galaxy Z TriFoldの200,000回の折りたたみテスト、IP48防水防塵規格、チタニウムヒンジなどは、耐久性への取り組みを示しています。しかし、価格は依然として高く、一般消費者向けというよりは、テクノロジー愛好家やビジネスユーザー向けの製品です。
2026年は折りたたみ式スマートフォン市場にとって重要な年になるでしょう。サムスン、ファーウェイ、そして新たに参入するAppleが競い合うことで、技術革新が加速し、価格も徐々に下がっていくことが期待されます。三つ折りという形態が主流になるかは未知数ですが、スマートフォンの進化における一つの可能性を示す重要な実験であることは間違いありません。
【用語解説】
折りたたみ式スマートフォン(フォルダブルスマートフォン)
ディスプレイが折りたためる構造を持つスマートフォン。従来の固定式スクリーンとは異なり、柔軟な有機ELディスプレイと特殊なヒンジ機構を採用することで、コンパクトに折りたたんだり、大画面に展開したりできる。主に「ブック型」(横開き)と「クラムシェル型」(縦開き)、そして「三つ折り型」の3種類がある。
三つ折り(トライフォールド)
ディスプレイを2つのヒンジで3つのパネルに分割し、折りたたむ方式。従来の二つ折り式よりも大画面を実現できる一方、構造が複雑で技術的難易度が高い。
IP48
防水防塵性能を示す国際規格。「4」は直径1mm以上の固形物に対する保護(限定的な防塵)、「8」は水深1.5mで30分間の耐水性を意味する。一般的なIP68よりも防塵性能は低いが、折りたたみ式スマートフォンでは標準的なレベルである。
LTPO OLED
Low Temperature Polycrystalline Oxide(低温多結晶酸化物)を使用した有機ELディスプレイ。リフレッシュレートを1Hzから120Hzまで動的に調整できるため、バッテリー消費を抑えながら滑らかな表示を実現できる。
Snapdragon 8 Elite for Galaxy
Qualcommが製造し、サムスン向けにカスタマイズされたプロセッサ。TSMCの3nmプロセスで製造され、高性能と電力効率を両立している。
クリース(折り目)
折りたたみ式ディスプレイを折りたたんだ際にできる折り目や跡。初期の折りたたみ式スマートフォンでは目立つ問題だったが、技術の進化により徐々に改善されている。
Counterpoint Research
テクノロジー市場調査を専門とする国際的なリサーチ会社。スマートフォン市場のシェアやトレンド分析で知られる。
【参考リンク】
Samsung Galaxy Z TriFold 公式発表(外部)
サムスン電子による初の三つ折りスマートフォンGalaxy Z TriFoldの公式プレスリリースと詳細仕様
Samsung Electronics(外部)
韓国の総合電子機器メーカー。スマートフォン、テレビ、半導体など幅広い製品を展開している
Huawei Mate XT Ultimate Design(外部)
ファーウェイが2024年9月に発表した世界初の三つ折りスマートフォンの公式製品ページ
Counterpoint Research(外部)
テクノロジー市場調査およびコンサルティングを提供する国際企業。モバイル市場の詳細な分析で知られる
Qualcomm Snapdragon(外部)
スマートフォン向けプロセッサSnapdragonシリーズを製造する米国の半導体企業クアルコムの公式サイト
【参考記事】
Introducing Galaxy Z TriFold: The Shape of What’s Next in Mobile Innovation(外部)
サムスン電子の公式発表。Galaxy Z TriFoldの技術仕様、デザイン哲学の詳細
Samsung Galaxy Z TriFold is official and will be on sale next week(外部)
Galaxy Z TriFoldの詳細スペック、価格、発売日に関する包括的な技術情報
Samsung Galaxy Z TriFold vs Huawei Mate XTs: Specs comparison(外部)
サムスンGalaxy Z TriFoldとファーウェイMate XTsの詳細な仕様比較分析
Accelerated Brand Expansion Reshapes Foldable Phone Market(外部)
折りたたみ式スマートフォン市場の2025-2026年予測とAppleの参入予測
Foldable smartphones are moving into a pivotal 2026(外部)
折りたたみ式スマートフォン市場の現状と2026年が転換点となる理由を詳述
iPhone Fold: Launch, Pricing, and What to Expect From Apple’s Foldable(外部)
Appleの折りたたみ式iPhone「iPhone Fold」の2026年発売予測と技術仕様
Official Galaxy Z TriFold price and release details are finally here(外部)
Galaxy Z TriFoldの公式価格と発売詳細。地域別展開計画を含む
【編集部後記】
スマートフォンが「折りたためる」という発想は、もはや未来の話ではなく現実のものとなりました。しかし、三つ折りという形態は、本当に私たちの生活を変えるのでしょうか。それとも、技術者の情熱が生み出した一時的な実験に過ぎないのでしょうか。
2026年のApple参入により、この市場は大きく動き出すと予想されています。価格が下がり、耐久性が向上し、より多くの選択肢が生まれるでしょう。その時、あなたはポケットに入るタブレットを選びますか、それとも従来のスマートフォンで十分だと感じますか。
折りたたみ式スマートフォンの進化を一緒に見守りながら、「本当に必要な技術革新とは何か」を考えてみたいと思います。






























