MM総研調査|OpenAI「Sora 2」と著作権保護方針に日本の大学生4割が反対

[更新]2025年12月4日

MM総研調査|OpenAI「Sora 2」と著作権保護方針に日本の大学生4割が反対 - innovaTopia - (イノベトピア)

生成AIは「便利だから使う」だけの段階を過ぎて、その裏側のルールやモラルまで問われるフェーズに入りつつあります。
OpenAI「Sora2」をめぐる著作権方針に、日本の大学生がどんな“違和感”と期待を抱いているのか──その温度感を、一緒にたどってみたいと思います。

MM総研は、日本の大学に通う大学生・大学院生・博士課程在籍者2463人を対象に、生成AI活用状況と利活用意識を2025年11月にインターネット調査し、12月2日に発表した。

その結果、OpenAIのコンテンツ著作権保護方針(動画・画像生成AI「Sora 2」に関する方針)について、著作権保護方針に反対と回答した大学生が37%、賛成が27%となった。生成AIの利用率は78%で、そのうち93%が便利と感じており、パソコン利用はBYOD中心で、大学のルール整備は59%、大学公認AIなど学内AI整備は11%にとどまる。

授業や課題提出、就職活動、スキルアップなどにおける生成AI活用意向はいずれも大学がAI活用ルールを定めている場合に高く、大学のAI活用ルールと学生の利用意向・利用率との関係が示された。

From: 文献リンクOpenAIの著作権保護方針、日本の大学生は反対派が約4割に ~脱BYOAIへ向け、大学の教育情報基盤のルール更新が急務~

 - innovaTopia - (イノベトピア)
OpenAI社の画像生成AI・コンテンツ著作権保護方針に対する大学生の意識(n=2012)
(株)MM総研公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

日本の大学生は、OpenAIが動画・画像生成AI「Sora 2」で採用した著作権のオプトアウト方針について、技術の面白さと権利やモラルのバランスをかなりシビアに見ているように感じます。海外メディアでも、Sora 2が著作権コンテンツを「権利者からの申請がない限り利用しうる」設計であることが指摘され、日本や米国のスタジオ、コンテンツ企業から強い懸念が示されています。日本の大学生の約4割が反対を示したという結果は、「日本だけが慎重」というより、世界的な警戒感の一部として捉えたほうが現実に近いと受け止めています。

同時に、この調査からは「使うか・使わないか」の二択ではなく、「どう付き合うか」を学生自身が模索している姿も見えてきます。海外の研究では、生成AIに前向きな学生ほど、そのまま課題に流用することには慎重で、学習支援ツールとして位置づけようとする傾向が報告されています。日本の大学でも、全面禁止ではなくガイドライン付きで生成AIを認める方針が増えつつあり、「リテラシー教育」と「利用ルール」のセットが必要だという認識は、国境を越えて共有されつつあるように感じます。

今回のMM総研のデータで特に重要だと感じるのは、利用率そのものよりも「大学にルールがあるかどうか」で使い方が大きく変わっている点です。海外ではBYOAI(Bring Your Own AI)が放置されると、学外サービスへのデータ流出や成績評価の公正さへの不信感が高まると警告されており、日本の大学も同じ課題に直面しつつあります。「学生が野良AIを勝手に使っている」という問題設定にとどめず、「大学側がどのAIを教育インフラとして公式に位置づけるのか」を問うタイミングが来ていると考えています。

OpenAIのSora 2は、テキストから高精細な動画やアニメ調の映像まで生成できるモデルとして評価されていますが、その表現力が大きいからこそ、既存IPとの共存方法が厳しく問われています。権利者が「オプトアウト申請をしない限り」AIの学習・生成に巻き込まれる構造は、法制度の動きと合わせても、教育現場で公式導入を判断する際のハードルになりやすいと感じます。一方で学生の多くはすでに日常的に生成AIを使い、レポート作成や情報収集の効率を高めているため、「技術を止める」方向ではなく、「どんな思想や契約条件を持つAIを教育基盤として選ぶのか」が、今後の焦点になっていきます。

長い目で見ると、日本の大学でのAI環境整備は、キャンパス内の利便性向上だけの話ではありません。大学がどのAIベンダーの方針を受け入れるかは、そのまま「どんな著作権観や倫理観を次世代に共有するか」という選択にもつながります。BYOAI頼みの状態から、大学が責任を持って選別したAIサービスを「安全な学習インフラ」として提供できるかどうかは、日本発の研究やクリエイティブ産業への信頼、そして学生一人ひとりが安心してAIスキルを磨ける土台づくりにも直結していくはずです。

【用語解説】

BYOD(Bring Your Own Device)
学生や教職員が自分のPCやスマートフォンなどの端末を持ち込み、学内ネットワークやシステムに接続して利用する運用形態のこと。

BYOAI(Bring Your Own AI)
大学や企業が公式に提供したAIではなく、個人が契約したChatGPTや画像生成AIなど外部のAIサービスを、自前で持ち込んで利用する状況を指す言葉。

【参考リンク】

OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTやSoraなど大規模生成AIモデルを開発・提供する米国発のAI企業の公式サイトである。

OpenAI Sora紹介ページ(外部)
テキストから高品質な動画を生成するAIモデル「Sora」の概要とデモ動画、利用方針が掲載されている。

MM総研公式サイト(外部)
ICT分野の市場調査レポートやコンサルティングサービスを提供する株式会社MM総研のコーポレートサイトである。

【参考記事】

OpenAI launches new AI video app spun from copyrighted content(外部)
OpenAIが動画生成アプリSoraを発表し、著作権コンテンツを巡るオプトアウト方式と権利者の懸念を報じる記事である。

OpenAI’s Sora bet: copyright first, permission later(外部)
OpenAIのオプトアウト方針が著作権者に与える負担や、クリエイター経済への影響を批判的に分析した解説記事である。

OpenAI’s Sora 2 Will Not Recreate Your Copyrighted Character(外部)
Sora 2が著作権キャラクター類似の生成抑制をうたう一方で、オプトアウト前提の仕組みが完全な保護ではない点を指摘している。

OpenAIのオプトアウト方針とそれが世界の著作権に突きつける挑戦(外部)
OpenAIのオプトアウト方式が各国の著作権制度やコンテンツ産業に与えるインパクトを整理した日本語の解説記事である。

【編集部後記】

日々触れているAIがどんなルールや思想の上に成り立っているのか、そして大学や職場がそれをどう位置づけるのか――その前提を、いま改めて見直すタイミングなのかもしれません。

もしよければ、「自分の大学にどんなAIルールがあったら安心できるのか」を、一度まわりの人と話してみませんか。その小さな対話の積み重ねが、これからの学び方や働き方、そしてAIとの付き合い方を、現場から少しずつ形づくるのではないかと考えます。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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