NTT・Mujin資本提携「フィジカルAI」MujinOS×IOWNが工場・倉庫DXを再定義する

[更新]2025年12月4日

NTT・Mujin資本提携「フィジカルAI」MujinOS×IOWNが工場・倉庫DXを再定義する - innovaTopia - (イノベトピア)

フィジカルAIとロボットOSが、日本発の「自律するインフラ」として本格的に動き出しました。

NTT×Mujinの提携は、単なる出資ではなく、工場と倉庫の“OS”を書き換える一手になりそうです。


NTT株式会社とNTTドコモビジネス株式会社は、フィジカルAIとデジタルツイン技術を強みに持つ株式会社Mujinと2025年12月1日に資本業務提携を締結した。同日、MujinはシリーズDラウンドとして総額364億円(エクイティ・デット合計)の資金調達完了も発表しており、今回の提携はその中核をなす動きとなる。

NTTグループのAI時代に最適化されたICTプラットフォームやNaaS(Network as a Service)、そして次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」と、Mujinの統合型オートメーションプラットフォーム「MujinOS」が連携し、製造・物流現場の工程自動化・IoT化・フィジカルAI化を推進していく。

両社は、顧客基盤とチャネル、技術アセットを共有しながら、新たなロボット自動化ソリューション、DXソリューション、デジタルBPOサービスの提供や、生成AIやHRI技術を活用した新たな事業領域の探索に取り組むとしている。

From: 文献リンクNTT・NTTドコモビジネスとMujinの資本業務提携について

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株式会社Mujin 公式プレスリリースより
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株式会社Mujin 公式プレスリリースより
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株式会社Mujin 公式プレスリリースより

【編集部解説】

今回の提携は、「ネットワーク側のAIインフラ」と「現場側のロボットOS」を日本発で一本のレイヤーとして束ねていく動きとして見ることができます。MujinOSは単体ロボットのコントローラではなく、工場や倉庫全体をデジタルツインとして扱う共通OSであり、そこにNTTのNaaSやIOWNなどの大規模ネットワーク基盤が接続されることで、ロボットを“局所の自動機”から“ネットワーク化された知能”へと引き上げるポジションを取りにいっていると感じます。

一方で、フィジカルAIの成立には、現場のロボットやセンサーから常時収集される膨大なデータが前提になります。これは、サイバー攻撃リスクや、現場ノウハウがクラウド側に集中することによるガバナンスの課題も抱え込みます。NTTドコモビジネスがNaaSやセキュリティ統合サービスを正面に据えているのは、このリスクをインフラレイヤーで吸収しながらスケールさせる設計思想の現れとして捉えられるのではないでしょうか。

この提携が示しているのは、製造・物流の自動化が「個別案件のSI」から、「共通OS+ネットワークでつながるエコシステム」へと移行しつつある流れです。MujinOSの上に生成AIやワールドモデル、HRI技術が重なっていくと、ロボットはあらかじめ定義されたフローをなぞる存在から、環境や需要の変化を見ながら自律的にタスク構成を変えていくエージェントに近づいていきます。そのときに問われるのは、どこまで権限を機械に委ねるのか、どのレイヤーで人間が介在し続けるのかという、技術だけでは決められない境界設計だと感じます。

ポジティブな側面としては、人手不足や多品種少量生産への対応だけでなく、「現場オペレーションそのもの」をソフトウェアとして扱い、リモートからの改善や実験を回せるようになることが挙げられます。反面、特定のOSやクラウドに産業インフラがロックインされるリスクや、事故発生時の責任分界、国際的な安全規制・標準化との整合など、これから本格的に議論しなければならない論点も多いはずです。日本発のフィジカルAI基盤として世界展開を狙うのであれば、技術だけでなく「ルールづくり」にどう関わるかも、このニュースが投げかけている重要なテーマだと考えています。

【用語解説】

AI-Centric ICTプラットフォーム
AI活用を前提に設計された次世代ICT基盤の構想で、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどを統合的に提供することを目指したプラットフォームである。

NaaS(Network as a Service)
ネットワークと関連セキュリティ機能をクラウドサービスのように提供し、ユーザーがサブスクリプション型で利用できるサービス形態である。

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)
光技術を中核に据え、高速・大容量通信や低消費電力な情報処理を実現することを目指す、NTTグループの次世代ネットワーク構想である。

HRI(human-robot interaction)
人とロボットの対話や協働、行動支援を実現するために、外部認識や意思決定などを含むロボット側の仕組みを設計する技術分野である。

デジタルBPO(Digital BPO)
ビジネス・プロセス・アウトソーシングと各種デジタル技術を組み合わせ、業務プロセスの変革や高度化を支援するサービス群の総称である。

【参考リンク】

MujinOS|統合型オートメーションプラットフォーム(外部)
多様なロボットや機器を接続し、倉庫・工場全体の自動化とデジタルツインを実現する産業向けロボットOSの公式紹介ページ。

株式会社Mujin(外部)
フィジカルAIとMujinOSを軸に、製造・物流現場向けロボット自動化ソリューションを展開するロボティクス企業のコーポレートサイト。

NTTグループ公式サイト(外部)
IOWN構想をはじめ、通信インフラやAI・ロボティクス関連の研究開発などNTTグループ全体の情報を発信しているポータルサイト。

docomo business RINK|法人向けネットワーク(外部)
WANやクラウド接続などを統合的に提供し、NaaS型で柔軟なネットワークとセキュリティ機能を組み合わせて利用できる法人向けサービス。

docomo business RINK WANセキュリティ(外部)
ネットワーク組み込み型で脅威検知や遮断を行い、拠点全体のトラフィックを可視化しながら不正通信対策を提供するマネージドセキュリティサービス。

【参考記事】

シリーズDラウンド初回クローズで総額364億円の大型資金調達を実施(外部)
MujinがシリーズDラウンドで364億円を調達し、MujinOSを中核としたフィジカルAIプラットフォームのグローバル展開やデジタルツイン需要の高まりを背景としていることを解説している。

フィジカルAIのMujinにNTTらが364億円 世界初のネイティブAI OS(外部)
MujinOSをAIネイティブなロボットOSとして紹介し、カメラやLiDARを組み合わせた自律ロボットの構成と、NTTグループからの出資・提携の背景をレポートしている。

NTT、ロボット制御のMujinと資本業務提携 「フィジカルAI」を後押し(外部)
NTTグループとMujinの提携内容を整理し、製造・物流分野の自動化やHRI応用、MujinOSとネットワーク・クラウド連携の狙いをわかりやすくまとめている。

NTT and Mujin enter into a capital and business partnership(外部)
英語でNTTとMujinの提携内容を紹介し、MujinOSとNTTのAIプラットフォーム連携により製造・物流DXとフィジカルAI実装を進める狙いを海外読者向けに解説している。

【編集部後記】

フィジカルAIやMujinOSのような仕組みが広がると、「AIが現場で何をしているのか」を、自分の仕事や暮らしと地続きのものとして考える機会が増えていきます。

みなさんはこれから、どんな場面にロボットやフィジカルAIが入ってきてほしいと感じるでしょうか。逆に「ここだけは人のままであってほしい」と感じる領域はどこでしょうか。もしよければ、一緒に考えてみませんか。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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