テスラは2025年12月13日の夜、Early Access Program(EAP)メンバー向けにFull Self-Driving v14.2.1.25をリリースした。このアップデートはホリデーアップデートと同時に配信された。
前バージョンのv14.2.1では、Speed Profilesの過剰な調整により問題が発生していた。特にHurry Modeは高速道路で制限速度より10 MPH以上の速度で走行しなくなり、交通の流れを妨げていた。また、Route 30の標識を30 MPHの速度制限標識と誤認識し、高速道路で55 MPHから30 MPHへ減速するなど、速度制限標識の誤認識も頻発していた。
v14.2.1.25では、Speed Profileの改良、車線変更の自信向上、速度制限認識の3つの点で大幅な改善が見られた。Hurry Modeは交通の流れに沿って走行するようになり、車線変更も適切なタイミングで実行されるようになった。速度制限の認識は標識への依存度が下がり、マップデータや周囲の交通により依存するようになった。
From:
Tesla refines Full Self-Driving, latest update impresses where it last came up short
【編集部解説】
テスラのFSDアップデートが注目を集める理由は、単なる機能改善にとどまらず、完全自動運転という未来へのロードマップにおける重要な進捗を示しているからです。今回のv14.2.1.25は、前バージョンで発生していた深刻な問題を素早く修正したことで評価されています。
特筆すべきは、テスラのソフトウェア開発における反復改善の速度です。v14.2.1で明確になった問題点——高速道路での不自然な速度制限、車線変更の躊躇、標識の誤認識——これらはすべてユーザーフィードバックを受けて数週間以内に改善されました。この開発サイクルの速さは、自動運転技術の実用化において重要な要素となっています。
今回の改善で最も重要なポイントは「交通の流れへの適応」です。自動運転システムが単独で安全に走行できることと、実際の交通環境で他のドライバーと調和して走行できることは別の課題です。制限速度を厳格に守りすぎて交通を妨げることは、かえって危険を生み出す可能性があります。v14.2.1.25は、周囲の交通状況やマップデータを活用することで、より人間らしい判断を実現しています。
ただし、この技術には重要な前提条件があります。FSD v14シリーズはHardware 4(HW4)搭載車両専用であり、2023年以前に製造されたHardware 3(HW3)搭載車両は対象外です。HW4は処理能力が大幅に向上しており、より高解像度なカメラと10倍大きなニューラルネットワークモデルを活用できます。HW3ユーザー向けには2026年第2四半期に「v14 Lite」がリリース予定ですが、完全な機能は期待できません。
このハードウェア分断は、自動運転技術の急速な進化がもたらす課題を浮き彫りにしています。数年前にFSDオプションを購入したユーザーは、当時8,000ドルから15,000ドルを支払いながら、最新機能にアクセスできない状況に置かれています。テスラはHW3からHW4への無償アップグレードプログラムを提供していないため、この問題は今後も議論を呼ぶでしょう。
駐車機能に関する不満が残っている点も見逃せません。高速道路での運転は大幅に改善された一方、駐車は依然として課題です。テスラは将来のアップデートで改善を約束していますが、完全自動運転の実現には、あらゆる場面での確実な動作が求められます。
規制面では、現在のFSDは「Supervised(監視付き)」として提供されており、ドライバーの常時監視が必要です。今回のような継続的な改善が積み重なることで、いずれは規制当局の承認を得た無監視運転へと進化する可能性があります。ただし、その道のりはまだ長く、技術的な完成度だけでなく、安全性の実証と社会的な受容が不可欠です。
【用語解説】
Full Self-Driving (FSD)
テスラが提供する自動運転支援システム。現在は「Supervised(監視付き)」として提供され、ドライバーの常時監視が必要。車線変更、右左折、駐車などを自動で行うが、完全な自動運転ではない。
Hardware 3 (HW3) / Hardware 4 (HW4)
テスラの自動運転コンピューターの世代。HW3は2019年から搭載、HW4は2023年から搭載開始。HW4は処理能力が大幅に向上し、より高解像度なカメラと高性能なプロセッサを搭載している。FSD v14はHW4専用で、HW3車両は対象外。
Early Access Program (EAP)
テスラの新機能を一般リリース前にテストできる招待制プログラム。参加者は最新のソフトウェアアップデートをいち早く受け取り、フィードバックを提供する。
Speed Profile
FSDの運転スタイルを調整する設定。Sloth(最も保守的)、Chill、Standard、Hurry、Mad Max(最も積極的)の5段階があり、速度や車線変更の頻度が変化する。
ニューラルネットワーク
人間の脳神経回路を模した機械学習モデル。テスラのFSDはカメラ映像を解析し、道路状況を認識するためにニューラルネットワークを使用している。v14では前バージョンの10倍のパラメータを持つモデルを採用。
Over-the-Air (OTA) アップデート
インターネット経由でソフトウェアを更新する仕組み。テスラ車両はWi-Fi接続時に自動的に最新ソフトウェアをダウンロード・インストールできる。
【参考リンク】
Tesla公式サイト(外部)
テスラの公式ウェブサイト。電気自動車の製品情報、Full Self-Drivingの詳細などを提供。
Tesla Full Self-Driving サポートページ(外部)
AutopilotおよびFSDに関する公式サポートページ。機能説明、使用方法を掲載。
【参考記事】
Tesla to Bring FSD V14 ‘Lite’ to Hardware 3 Vehicles(外部)
HW3向けV14 Liteを2026年Q2にリリースすると発表。HW4とHW3の性能差を詳述。
2025.44.25.5 (FSD 14.2.1.25) Official Tesla Release Notes(外部)
FSD v14.2.1.25の公式リリースノート。到着オプション、速度プロファイルなどを掲載。
Tesla HW4 vs. HW3: How to Identify Your Tesla’s Version(外部)
Hardware 3とHardware 4の技術的な違い、見分け方を解説。カメラ解像度の差異を詳述。
Full Self-Driving v14.2 Approaching Wide Release(外部)
FSD v14.2の広範なリリースについて、10倍のニューラルネットワークモデルなどを分析。
Tesla FSD v14.2.1 is Out and Better Than Ever(外部)
FSD v14.2.1の詳細なレビューと、HW3向けv14 Lite(2026年Q2予定)の情報。
【編集部後記】
自動運転技術の進化は、私たちの移動体験を根本から変える可能性を秘めています。今回のアップデートは、技術的な改善だけでなく、「機械が人間らしく運転する」という新たな課題への挑戦でもあります。皆さんは自動運転車に何を期待しますか?完璧な安全性、それとも人間のドライバーのような柔軟性でしょうか。また、数年前に購入した車が最新機能から取り残されることについて、どう感じられるでしょうか。
テクノロジーの急速な進化と製品の長期的な価値、このバランスについて、皆さんのご意見をぜひお聞かせください。































