活版印刷が知識を民主化し、蒸気機関が労働を変革したように、生成AIは人類の日常を根底から塗り替えようとしている。
株式会社oneが2025年12月に発表した調査結果は、その転換点を示す重要なデータとなった。全国の既婚女性1,000人を対象とした調査で、77.0%が「AIで生活がラクになった」と回答。
AIは検索ツールを超え、献立相談、悩みの聞き役、子育てのアドバイザーとして機能している。この変化は、労働ではなく「家庭」という最も私的な領域でAIが人間と共生し始めたことを意味する。
株式会社oneは2025年12月3日から5日にかけて、全国の18歳以上の既婚女性1,000人を対象に「主婦のAI活用に関する調査」を実施した。
普段の生活でAIを活用している主婦の77.0%が「生活がラクになった」と回答した。
AI利用頻度は1日1回以上が13.7%で、最も利用されるサービスはChatGPTが55.6%、Google Geminiが19.6%だった。 利用デバイスはスマホが87.5%を占め、入力方法は文字入力が70.6%、音声入力が18.6%だった。
主な利用シーンは健康・美容に関する相談が32.2%、献立づくり・レシピ相談が25.0%、雑談・話し相手が24.4%となった。ラクになったと感じる場面では、調べものに費やす時間が減ったが61.9%、悩みを聞いてもらうことで気持ちがラクになったが27.5%だった。
一方で、誤った情報に気づけないのではないかという不安が40.2%、自分の頭で考える力が衰えないかが35.1%と、情報の正確性や依存への懸念も示された。
子どものAI利用率は小学生で63.1%、高校生で72.8%に達している。
From:
【主婦のAI活用に関する調査】77.0%が「AIで生活がラクになった」と実感!
【編集部解説】
2025年を「AIエージェント元年」と位置づける今回の調査結果は、生成AIが日本の家庭生活に確実に浸透している現実を示しています。特に注目すべきは、AIが単なる検索ツールの域を超え、主婦の「メンタルヘルスパートナー」として機能し始めている点です。
調査では77.0%が「生活がラクになった」と回答していますが、その内訳を見ると興味深い傾向が浮かび上がります。時間短縮だけでなく、「悩みを聞いてもらうことで気持ちがラクになった」が27.5%、「家族への不満をこっそり聞いてもらってガス抜き」といった自由回答も見られました。これは、家庭という密室空間で孤独になりがちな主婦にとって、AIが誰にも言えない本音を吐き出せる「第三者的存在」として価値を持ち始めていることを意味します。
デバイス面では、スマホが87.5%と圧倒的です。音声入力を活用する層も18.6%おり、調理中や育児中など「手が離せない状況」での利用が想定されます。これはAIが家庭生活の「隙間時間」に浸透している証左と言えるでしょう。
ChatGPTが55.6%と他のサービスを大きく引き離している一方、13.6%が「どれを使っているかよくわからない」と回答している点も示唆に富んでいます。AIが検索エンジンやアプリの機能として透明化し、意識されずに利用される「インフラ」になりつつある状況を表しています。
しかし、利便性の裏側には深刻な懸念も存在します。「誤った情報に気づけないのではないか」という不安が40.2%、「自分の頭で考える力が衰えないか」が35.1%と、利用者自身がAIの限界とリスクを認識しています。実際に「質問の仕方で回答が変わる」「情報が古い」といった経験も報告されており、主婦たちは試行錯誤の中でAIとの適切な距離感を模索している段階と言えます。
子どものAI利用についても重要なデータが示されました。高校生の72.8%、小学生の63.1%がAIを利用していますが、親たちは「答えではなくヒントを聞く」「まず自分で調べる」といったルールを設定しています。これは、AI時代における教育の本質的な問いを投げかけています。つまり、情報へのアクセスが容易になった時代に、子どもたちに何を教え、どんな力を育むべきなのか、という問題です。
今回の調査が照らし出すのは、AIが人間の生活に深く入り込む「第二段階」への移行です。初期の実験的利用から、日常的かつ感情的な依存関係へ。この変化は、労働だけでなく家庭という私的領域におけるAIの役割を根本的に問い直すものとなるでしょう。
【用語解説】
AIエージェント元年
2025年を指す表現で、生成AI技術が単なる実験段階を超えて社会全体に本格的に実装され始めた年とされる。AIが人間の指示を受けて自律的にタスクを遂行する「エージェント」としての機能を持つようになった転換点を意味する。
メンタルケアツール
精神的な健康を維持・向上させるために使用される道具やサービス。本調査では、AIが悩みの相談相手や感情のはけ口として機能し、主婦の心理的負担を軽減する役割を果たしていることが示された。
【参考リンク】
株式会社one(外部)
マーケティング支援事業を展開する本調査の実施企業。リサーチやPR業務を一気通貫で提供している。
ChatGPT – OpenAI(外部)
OpenAIが提供する対話型AI。本調査で最も利用率が高かったAIサービスの公式サイト。
Google Gemini(外部)
Googleが提供する生成AIサービス。本調査で2番目に利用率が高かったAIサービスの公式サイト。
【参考記事】
AIに関する調査(2025年) – クロス・マーケティング(外部)
全国20歳~69歳の男女を対象にAIの身近さや利用状況を調査。2年前と比べて47.4%が「AIが身近になった」と回答している。
生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較 – PwC(外部)
日本企業と米国・英国・ドイツ・中国企業における生成AIの認知度、活用状況、課題を比較。日本は効果創出の水準が低くとどまっている。
生成AIで「業務効率向上」7割 活用体制の整備は業種で差も – 日本経済新聞(外部)
日経リサーチと共同で実施した調査で、生成AIを仕事で使う人は65%と1年前の44%から大きく増加。7割が業務効率向上を実感。
【2025年】AIエージェントとは?生成AIとの違いをわかりやすく解説! – Rabiloo(外部)
2025年が「AIエージェント元年」と呼ばれる理由を解説。従来の生成AIとAIエージェントの違いや具体的な活用例を紹介。
2025年AIエージェント元年:ビジネスと社会の大転換点 – Zenn(外部)
Microsoft、Google、NVIDIAなど主要テック企業が相次いでAIエージェント関連製品を発表。実用段階に入った背景を詳説。
【編集部後記】
みなさんの日常にも、いつの間にかAIが入り込んでいるのではないでしょうか。冷蔵庫の中身から献立を考えたり、ちょっとした不安を打ち明けたり。調査結果を見ていると、AIが「便利な道具」から「そばにいる存在」へと変わりつつあることを感じます。
同時に、情報の正確性や依存への不安を抱えながらも、上手に付き合おうとする姿勢が印象的でした。完全に信じるわけでもなく、完全に拒絶するわけでもなく、距離感を探りながら生活に取り入れていく。そんな試行錯誤の最中にいるのかもしれません。
みなさんは、どんな場面でAIを活用していますか?それとも、まだ使ったことがないという方もいらっしゃるでしょうか。このテクノロジーが私たちの暮らしをどう変えていくのか、一緒に見つめていけたらと思います。































