Google Geminiを搭載したChromeのAndroid版に、ウェブページをポッドキャスト形式の要約に変換する新機能が追加された。この機能は2025年12月16日にFox Newsで報じられた。2人の仮想ホストがコンテンツについて会話する形式で、通勤中やマルタスク時の情報取得を支援する。
この機能はChromeの従来の読み上げツールを基盤としているが、より自然で生き生きとした音声配信を実現している。すべてのウェブサイトで動作するわけではなく、一部のページでは従来の一語一語の読み上げが使用される。
利用にはChromeバージョン140.0.7339.124以降が必要で、Play Storeから更新できる。使用方法は、Chrome右上の3つの縦ドットをタップし、「このページを聞く」を選択するだけだ。AI音声はウェブページを離れても継続し、標準再生への切り替えも可能だ。
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Chrome rolls out AI podcast feature on Android
【編集部解説】NotebookLMからブラウザへ──AI音声技術の民主化
ChromeのAndroid版に追加されたこの機能は、実はGoogleが2024年9月にNotebookLMで公開した「Audio Overview」という技術の延長線上にあります。NotebookLMは、ドキュメントをアップロードすると2人のAIホストがそれについて会話形式で解説してくれるツールとして大きな注目を集めました。その技術が今回、日常的に使うウェブブラウザに統合されたことで、より多くの人が気軽にアクセスできるようになったわけです。
この機能の背後にあるのは、GoogleのGemini 1.5 Proという大規模言語モデルです。単なるテキスト読み上げではなく、ウェブページの内容を理解し、要点を抽出して、自然な会話形式のスクリプトを生成します。2人のAIホストが掛け合いをしながら内容を解説するため、単調な機械音声の読み上げよりもはるかに聞きやすく、理解しやすい体験を提供します。
技術的な仕組みとしては、高度な自然言語処理とテキスト音声合成モデルを組み合わせています。ウェブページのコンテンツを解析し、キーポイントを抽出し、会話形式のナレーションスクリプトを生成するという一連の処理が、数秒で完了します。
この機能がもたらす最大の価値は、情報へのアクセシビリティの向上です。通勤中、運動中、家事をしながらなど、手が塞がっている状況でも、ウェブ上の情報を効率的に吸収できます。視覚障害のある方にとっても、従来の機械的な読み上げよりも理解しやすい形式となります。
一方で、いくつか留意すべき点もあります。まず、すべてのウェブサイトで動作するわけではありません。サイトの構造やコンテンツの種類によっては、従来の一語一語の読み上げに戻ります。また、AIが生成する要約は、必ずしも完全に正確であるとは限りません。重要な情報を確認する際は、やはり原文にあたる必要があります。
プライバシーの観点からも考察が必要です。ウェブページの内容がGoogleのサーバーで処理されることになるため、機密性の高い情報を含むページでこの機能を使用する際は注意が求められます。
長期的には、この技術は情報消費のあり方を大きく変える可能性を秘めています。記事を「読む」から「聴く」へとシフトすることで、より多くの情報を効率的に処理できるようになるでしょう。教育分野では、学習コンテンツをより身近なものにし、学習方法の多様化を促進するかもしれません。
ただし、要約された情報だけに頼ることのリスクも意識する必要があります。原文の持つニュアンスや詳細が失われる可能性があり、批判的思考の機会が減少する懸念もあります。この技術は、情報へのアクセスを容易にするツールとして活用しつつ、重要な判断には原文の確認を怠らないというバランス感覚が求められます。
【用語解説】
Google Gemini(グーグル・ジェミニ)
Googleが開発した大規模言語モデル。テキスト、画像、音声など複数の形式のデータを理解・生成できるマルチモーダルAIで、Gemini 1.5 Proは特に長文の理解と高精度な処理能力を持つ。NotebookLMやChromeの新機能など、Googleの多くのAIサービスの基盤技術となっている。
Audio Overview(オーディオ・オーバービュー)
Googleが開発したAI技術で、ドキュメントやウェブページを2人のAIホストによる会話形式の音声コンテンツに変換する機能。単なるテキスト読み上げではなく、内容を要約し、議論形式で解説するため、より理解しやすく、ポッドキャストのような聴きやすさを実現している。
RAG(Retrieval-Augmented Generation / 検索拡張生成)
AIが回答を生成する際に、事前に学習したデータだけでなく、外部の情報源から関連情報を検索して参照する技術。NotebookLMはこの手法を採用しており、ユーザーがアップロードした資料に基づいて回答を生成するため、より正確で文脈に沿った情報提供が可能になる。
テキスト音声合成(Text-to-Speech / TTS)
文字情報を音声に変換する技術。GoogleのText-to-Speech APIは、50以上の言語で380以上の音声を提供し、自然で人間らしいイントネーションを実現している。この技術により、AIホストの会話が機械的でなく、生き生きとした印象を与える。
【参考リンク】
NotebookLM(外部)
GoogleのAI搭載ノート・リサーチアシスタント。ドキュメント、PDF、YouTubeビデオなどをアップロードし、質問応答や要約作成が可能。
Google Chrome(外部)
Googleが開発・提供する無料のウェブブラウザ。Android版にはAIポッドキャスト機能が搭載され、バージョン140.0.7339.124以降で利用可能。
Google Cloud Text-to-Speech API(外部)
Googleのテキスト音声合成サービス。50以上の言語、380以上の音声を提供し、カスタム音声の作成も可能。
Google Gemini(外部)
Googleの対話型AIサービス。Gemini 1.5 Proを活用し、テキスト生成、画像理解、コード作成など多様なタスクに対応。
【参考記事】
NotebookLM now lets you listen to a conversation about your sources(外部)
Google公式ブログによるAudio Overview機能の発表記事。2人のAIホストが資料を要約し、トピック間のつながりを解説する仕組みを紹介。
NotebookLM’s new ‘Audio Overview’ turns your notes into a mini podcast(外部)
9to5Googleによる詳細レポート。Audio Overview機能が2024年5月のGoogle I/Oでプレビューされ、正式にロールアウトされた経緯を解説。
NotebookLM’s automatically generated podcasts are surprisingly effective(外部)
技術ジャーナリストSimon WillisonによるNotebookLMの技術的仕組みやプロンプトエンジニアリングの詳細な分析記事。
Chrome for Android can now turn webpages into podcasts with AI-powered Audio Overviews(外部)
Chrome UnboxedによるChrome Android版の新機能レポート。NotebookLMの技術がブラウザに統合された経緯と実装について詳述。
Learn how to build a podcast with Gemini 1.5 Pro(外部)
Google Cloud公式ブログ。Gemini 1.5 ProとText-to-Speech APIを使ったポッドキャスト生成の技術的手法を解説。
【編集部後記】
通勤中や家事をしながら、気になる記事を「聴く」体験を試されたことはありますか?この機能は、情報との付き合い方を変える一つの選択肢かもしれません。ただ、AIが要約した内容だけで判断してしまうリスクや、原文のニュアンスが失われる可能性についても、一緒に考えていきたいと思います。
便利さと引き換えに失うものは何か。みなさんは、記事を「読む」体験と「聴く」体験、どちらを選びますか?あるいは、状況に応じて使い分けていくのが現実的でしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。































