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Meta、Unity向けInteraction SDK大幅強化──コントローラー不要のVR移動・クライミング機能を実装

[更新]2025年12月20日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

MetaのUnity向けInteraction SDKがv83アップデートで大幅に機能強化された。ハンドトラッキング用の新しい移動システムとして、テレポーテーションとスムーズ移動を組み合わせた”Telepath”、仮想の杖で床を押して移動する”Walking Stick”、そしてコントローラー不要のクライミング機能が追加された。

また投擲システムも改善され、ダーツやボウリング、フリスビーなど多様な投げ方に対応可能になった。Interaction SDKは開発者が共通インタラクションを容易に実装できるフレームワークで、オブジェクトの掴み取り、UI操作、ジェスチャー検出などを提供する。1年以上前からMeta以外のヘッドセットもサポートしており、他プラットフォームの開発者も利用可能である。

From: 文献リンクMeta Interaction SDK Gets Hand Tracking Climbing, ‘Telepath’ & ‘Walking Stick’ Locomotion – UploadVR

【編集部解説】

今回のアップデートが重要な理由は、VR体験におけるコントローラー依存からの脱却を加速させる点にあります。ハンドトラッキング技術は以前から存在していましたが、移動方法の選択肢が限られていたため、実用性に課題がありました。v83アップデートと同時期にリリースされたHand Tracking 2.4では、高速な動作の検出精度が向上し、手の再認識速度の改善やモーションアップサンプリングの最適化が実現しています。これにより、パンチやスイングといった素早い動きにも対応できるようになりました。

“Telepath”移動は、VR酔いの軽減という観点で注目に値します。従来のテレポーテーションは視界の急激な変化により一部のユーザーに不快感を与える一方、完全なスムーズ移動も酔いやすさの原因となっていました。両者のハイブリッドアプローチは、この問題への実用的な解決策となる可能性があります。

Interaction SDKがクロスプラットフォーム対応している点も開発者にとって重要です。Meta以外のヘッドセットでも利用できるため、開発コストを抑えながら複数のVRプラットフォームに対応したアプリケーションを制作できます。これはVR市場全体のエコシステム成長を促進する要因となるでしょう。

一方で、ハンドトラッキングには精度の課題が残ります。コントローラーと比較すると、細かい操作や確実な入力が求められる場面では依然として不利です。また、長時間の使用では腕の疲労が問題となる可能性もあります。開発者はこれらの制約を理解した上で、適切なユースケースを選択する必要があります。

【用語解説】

Interaction SDK
Metaが提供する、UnityやUnreal Engine向けのVR開発フレームワーク。オブジェクトの掴み取り、UI操作、ジェスチャー検出などの共通インタラクション機能を実装済みで提供する。

ハンドトラッキング
カメラでユーザーの手の動きを認識し、コントローラーなしでVR空間内のオブジェクトを操作できる技術。指の曲げ伸ばしやジェスチャーを検出し、自然な操作を実現する。

Telepath移動
テレポーテーションとスムーズ移動を組み合わせた新しいVR移動方式。指定した場所へ瞬間移動ではなくスムーズにスライドし、障害物は自動的に飛び越える仕組み。

Walking Stick移動
仮想の杖を使って床を押し下げることで前進する移動方式。立位姿勢でのハンドトラッキングに最適化されており、物理的な歩行動作を模倣する。

マイクロジェスチャー
親指を人差し指の側面にタップするなど、小さく素早い指の動きで入力を行う操作方法。ハンドトラッキングにおける直感的なコマンド入力手段として用いられる。

【参考リンク】

Meta Quest Store(外部)
Meta Questデバイス向けのアプリストア。ハンドトラッキング対応のVRアプリケーションやゲームを検索できる。

Unity Asset Store – Meta XR SDKs(外部)
UnityでMeta製VRヘッドセット向けアプリを開発するための公式SDKパッケージが配布されている。

【参考動画】

【参考記事】

Meta Interaction SDK Gets Hand Tracking Climbing, ‘Telepath’ & ‘Walking Stick’ Locomotion – UploadVR(外部)
v83アップデートの詳細を報じた記事。3つの新しい移動方式と改善された投擲システムについて解説している。

In the new Meta XR SDK (v83), we’ve made huge hand tracking improvements – Reddit(外部)
Meta開発者による公式発表のReddit投稿。コミュニティからのフィードバックや技術的な詳細が議論されている。

Quest’s Hand Tracking 2.4 Significantly Improves Fast Motion Detection – UploadVR(外部)
SDK v83と同時期にリリースされたHand Tracking 2.4の改善内容。高速モーション検出精度向上について解説。

Meta Interaction SDK Gets Hand Tracking Teleport & Demo – UploadVR(外部)
約3年前に実装されたハンドトラッキング用テレポーテーション機能についての記事。今回の新機能との比較に有用。

Locomotion with Hand Gestures for Virtual Reality Games – SCITEPRESS(外部)
VRゲームにおけるハンドジェスチャーを用いた移動方式に関する学術論文。様々な移動手法の比較研究を掲載。

【編集部後記】

ハンドトラッキングによるVR体験は、コントローラーという物理的な制約から解放される可能性を秘めています。Walking Stickのような移動方式は身体的な動作を伴うため、運動不足の解消にも繋がるかもしれません。一方で長時間プレイでは腕の疲労が懸念されますし、精密操作が必要なジャンルではコントローラーが優位でしょう。VR酔いを軽減するTelepath移動の実際の使用感も気になるところです。ハンドトラッキング専用コンテンツが増えれば、VRの裾野は一気に広がるかもしれませんね。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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