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高市総理「信頼できるAIで日本再起」—10万人のガバメントAI活用と200人AISI体制へ

[更新]2025年12月20日

高市総理「信頼できるAIで日本再起」——10万人のガバメントAI活用と200人AISI体制へ - innovaTopia - (イノベトピア)

「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」へ——。世界14位に甘んじてきた日本が、フィジカルAI・国産基盤モデル・AI for Scienceの3分野に集中投資し、歴史的な巻き返しに挑む。


内閣府は2025年12月19日午前10時20分から午前10時30分まで、総理大臣官邸4階大会議室において人工知能戦略本部の第3回会合を開催した。

議題はAI法に基づく基本計画案及び指針案についてである。会合では人工知能基本計画案の概要と本文、人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針案の概要と本文、経済対策におけるAI施策についての計5つの資料が配布された。

人工知能基本計画案は522KBと366KBのPDF形式、適正性確保指針案は700KBと655KBのPDF形式、経済対策資料は695KBのPDF形式で提供されている。

From: 文献リンク人工知能戦略本部(第3回)- 科学技術・イノベーション – 内閣府

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【編集部解説】

2025年12月19日に開催された第3回人工知能戦略本部は、日本のAI戦略において極めて重要な転換点となる会合でした。その内容は日本のAI産業と社会の未来を大きく左右する意思決定が行われています。

今回決定された「人工知能基本計画案」は、2025年9月に全面施行されたAI法に基づく初の国家戦略です。高市早苗総理は会合で「信頼できるAIによる日本再起」を掲げ、具体的に7つの重点施策を指示しました。

まず注目すべきは政府による「ガバメントAI源内」の徹底活用です。ガバメントAI源内は政府専用の生成AIシステムで、2026年5月から10万人以上の政府職員が利用できる体制を整備します。政府自らが率先してAIを使いこなす姿勢を示すことで、国民に対して「信頼できるAI」の実用性を証明する狙いがあります。

第二の柱となるのがAIセーフティ・インスティテュートの抜本的強化です。現状から2倍、英国並みの200人体制を目指し、全省庁と産学から人材を結集させます。AIの安全性に対する国民の不安が高まる中、セキュリティ確保は最優先課題として位置づけられました。

技術開発面では、フィジカルAI(AIロボット)に不可欠な信頼できる国産汎用基盤モデルの開発が明記されています。これは日本が長年培ってきた製造業の強みと質の高い産業データを組み合わせた「日本の勝ち筋」戦略です。

財政面では、経済対策として4,380億円のAI関連施策が盛り込まれました。これは令和6年度補正予算の1,653億円から大幅に増額されており、政府の本気度が数字に表れています。さらに高市総理は「当面1兆円超をAI関連施策の推進に投資する」と明言し、大胆な投資促進税制の創設と研究開発税制の深堀りを約束しました。

国際的な取り組みとしては「AIサミット」の日本開催が打ち出されました。日本が主導してきた「広島AIプロセス」の流れを継承し、信頼できるAIを世界とともに創りあげる姿勢を鮮明にしています。

この基本計画の背景には、日本のAI分野における深刻な遅れがあります。AI民間投資額は世界14位のわずか9億ドルで、米国の約120分の1という現実です。個人利用率は26.7%(中国81.2%、米国68.8%)、企業利用率は55.2%(中国95.8%、米国90.6%)と、主要国に大きく水をあけられています。

しかし逆説的に、この「出遅れ」が日本独自の戦略を生み出す土壌となっています。すべての分野で競争するのではなく、フィジカルAI、AI for Science、創薬AIという3分野に集中投資し、「反転攻勢」を狙う戦略です。

注目すべきは、基本計画が「当面毎年変更する」アジャイルな運用方針を採用している点です。AI技術の進化速度を考慮し、来年夏には投資目標、制度改革、人材育成、データ戦略を含む官民投資ロードマップを盛り込んだ形で計画を充実させる予定です。

リスク対応とイノベーション促進の両立という難題に対し、日本は欧州の厳格な規制でも米国の自由放任でもない「第三の道」を模索しています。AI法第13条に基づく指針では、リスクベースのアプローチを採用し、事業者の自主的取り組みを促す仕組みを構築しました。

今後の課題は、計画を実行に移せるかどうかです。週明けに閣議決定される見通しですが、1兆円超の投資を実現し、200人規模のAISI体制を整備し、10万人の政府職員がAIを使いこなせる環境を本当に構築できるのか。その成否が、日本が「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」になれるかどうかを決定づけます。

【用語解説】

AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)
2025年6月4日に公布され、9月1日に全面施行された日本初のAI推進法。イノベーション促進とリスク対応の両立を目指し、内閣にAI戦略本部を設置し、AI基本計画の策定を義務付けている。

人工知能戦略本部
AI法に基づき内閣に設置された組織。内閣総理大臣が本部長を務め、全閣僚が構成員となる。AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進する役割を担う。

ガバメントAI源内
政府専用の生成AIシステム。2026年5月から10万人以上の政府職員が業務に活用できるよう整備される。政府自らが率先してAI利活用を進め、国民に「信頼できるAI」の意義を示すことを目的としている。

フィジカルAI
AIとロボット技術を組み合わせ、現実世界で物理的なタスクを実行できる技術。自動運転、工場やインフラの管理、人との協働を実現する自律型ロボットなどが含まれる。人手不足への対応策として期待されている。

AI for Science
科学研究にAIを活用する取り組み。ライフサイエンス、マテリアル分野などにおける基盤モデルの開発・利活用、実験の自動化、研究データの創出・利活用の効率化などを含む。

広島AIプロセス
2023年5月のG7広島サミットで立ち上げられた、AI開発・利用に関する国際的な枠組み。高度なAIシステムの開発・利用に関する包括的政策枠組みをとりまとめ、国際行動規範の遵守状況を報告する仕組みを構築している。

リスクベースアプローチ
AIがもたらすリスクを特定・評価し、利用分野や目的を踏まえた影響度合いに応じて適切な対策を講じる手法。一律の規制ではなく、リスクの大きさに応じた柔軟な対応を可能にする。

アジャイルな対応
AI技術の進歩の速さや予見可能性が十分でないことを踏まえ、PDCAサイクルを回しながら柔軟・迅速に対応する方式。当面は毎年計画を見直すことで、変動するリスクに適切に対処する。

基盤モデル
AIを作る基礎となる大規模な機械学習モデル。様々なタスクに応用可能な汎用性を持ち、特定の用途に特化させる前の土台となる。国産化が日本の競争力強化の鍵とされている。

【参考リンク】

内閣府 AI戦略(外部)
AI法、人工知能基本計画、戦略本部の資料など政府のAI戦略公式情報を集約。

首相官邸 人工知能戦略本部(第3回)(外部)
第3回人工知能戦略本部の公式記録。高市総理の発言全文と会議写真を掲載。

AIセーフティ・インスティテュート(AISI)(外部)
AIの安全性評価を行う日本の専門機関。200人体制を目指す組織の情報提供。

広島AIプロセス・フレンズグループ(外部)
広島AIプロセスに賛同する60の国・地域による自発的枠組みの公式情報。

【参考記事】

令和7年12月19日 人工知能戦略本部 | 総理の一日 | 首相官邸(外部)
高市総理の発言全文。ガバメントAI源内10万人活用、AISI200人体制、1兆円超投資など7つの指示を掲載。

政府、AIに1兆円投資へ 基盤モデル国産化やフィジカルAI実装めざす(外部)
日本経済新聞による報道。基本計画の策定経緯とフィジカルAI、基盤モデル国産化などの施策を解説。

高市政権「AI基本計画」案とりまとめ、AI開発に「1兆円超投資」方針(外部)
AI基本計画案のとりまとめを報道。官民連携による大規模投資と人材育成を柱とする戦略を紹介。

【編集部後記】 

日本が「AI後進国」から「反転攻勢」へと舵を切る歴史的な瞬間を、私たちは目撃しています。1兆円超の投資、10万人の政府職員によるAI活用、200人体制のセーフティ機関——これらの施策が、本当に日本社会を変えられるのでしょうか。

みなさんの職場や日常生活で、AIはどのように使われ始めていますか?あるいは、まだ「様子見」の状態でしょうか。政府が本気で動き出した今、企業や個人はどう応えるべきなのか。一緒に考えていきたいと思います。

【編集者追記】

NotebookLMを使って今回の記事をスライドにしました。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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