RayNeoは2025年12月17日、ロサンゼルスでフラッグシップARグラス「RayNeo X3 Pro」のグローバル発売を発表した。RayNeo X3 ProはTIME Magazineの「Best Inventions of 2025」特別賞に選出されている。本製品は拡張現実(AR)を内蔵し、ハンズフリー撮影、リアルタイム翻訳、AIによるノートテイキング、コミュニケーション支援、視聴・ゲーミング・音楽再生に対応する。
世界最小のフルカラーMicroLED光学エンジン(最大輝度6,000ニット)と、Snapdragon AR1プラットフォームを搭載した76グラムの両眼ARグラスである。RayNeoOS 2.0とAR Application Virtual Machineにより、TikTokやYouTube、WhatsApp、InstagramなどAndroidアプリを視界内で利用できる。
発売日は2025年12月17日で、MSRPは$1,299、12月17日〜1月5日のEarly Bird価格は$1,099である。RayNeoはコンシューマーARグラスのグローバルリーダーであり、2025年第3四半期には世界市場シェア24%を獲得したとCounterpoint Researchが報告している。
From:
Award-Winning AR: RayNeo X3 Pro, selected as TIME Best Invention of 2025, launches globally Dec 17

RayNeo PRNより引用
【編集部解説】
RayNeo X3 Proのニュースは、ARグラスが「ガジェット」から「日常インフラ」に近づきつつあることを象徴していると感じます。TIME誌のBest Inventions特別賞入りは話題性のラベルですが、本質的には「どの方向のUXが次の標準になりそうか」を示すシグナルとして読むべき出来事です。
まず技術的なポイントとして、両眼フルカラーMicroLEDとSnapdragon AR1という組み合わせは、「スマホの延長としてのARグラス」をかなり現実的なラインまで引き上げています。特に6,000ニット級の輝度と76gという軽量設計は、屋外ユースと長時間装着の両立に直結するため、これまでの「試すけれど定着しない」ウェアラブルから一歩進んだ使われ方が見込めます。
今回、注目したいのは「オープンエコシステム」と「AI連携」を前面に出している点です。RayNeoOS 2.0とAR Application Virtual Machineで、TikTokやYouTube、WhatsAppといった既存のAndroidアプリをそのまま視界に持ち込める設計は、専用アプリ前提のクローズドなスマートグラスとは思想が異なります。これは開発者にとっても「既存モバイル資産をARにブリッジする」現実解であり、日本発のスタートアップやSIerにとっても参入障壁を下げる方向です。
一方で、AIプラットフォームとしてGPTなど外部AIを積極的に取り込む姿勢は、利便性と同時にプライバシーの議論を加速させる要素でもあります。視界に映る情報、会話の断片、位置情報が常時AIに送り込まれうるデバイスが一般化すると、「どこまでがパーソナルで、どこからがクラウド共有か」という線引きを改めて問い直すことになるでしょう。規制の観点でも、欧米や日本で進むAI規制・個人情報保護の議論と、現実世界を常時スキャンするARデバイスは、今後必ず交差してきます。
消費者目線では、RayNeoがQ3 2025時点でグローバル出荷シェア24%超を押さえているというデータから、ARグラス市場がすでに「実験フェーズ」から「シェア争いフェーズ」に入りつつあることが読み取れます。Metaなどのビッグテックと比べてまだ名前の知られていないプレイヤーが、オープン戦略と価格設定で主導権を取りに来ている構図は、スマートフォン初期のAndroid陣営を思わせるところがあります。
未来志向で見ると、RayNeo X3 Proのようなデバイスが普及した先には、「画面を見る」という行為そのものが変質していきます。ブラウザやアプリをウィンドウとして開くのではなく、「空間の中に情報が重ねられている状態」がデフォルトになると、Web制作・広告・解析といった領域も、視線やコンテキストを前提とした新しい設計思想を求められるようになります。その時、今のうちからARネイティブな情報設計やプライバシー配慮のUXを考えておけるかどうかが、次の10年の競争力につながっていくはずです。
【用語解説】
MicroLED
LEDチップを微細化した次世代ディスプレイ技術。有機ELと比べて高輝度・高コントラスト・長寿命が特徴で、ARグラスのような小型光学デバイスに適している。
Snapdragon AR1
Qualcommが開発したAR専用プロセッサ。AI演算やセンサー処理、映像出力を低消費電力で実行でき、ウェアラブルデバイス向けに最適化されている。
TIME Best Inventions
TIME誌が毎年選定する「その年を代表する発明品」のリスト。技術革新性、実用性、社会的影響力などを基準に、各分野から製品やサービスが選出される。本賞のほか、Special Mentions(特別賞)カテゴリーも設けられている。
Counterpoint Research
テクノロジー市場の調査・分析を専門とする国際的なリサーチ会社。スマートフォン、ウェアラブル、IoTデバイスなどの出荷台数やシェア動向を定期的にレポートしている。
【参考リンク】
RayNeo公式サイト(外部)
RayNeoのグローバル公式サイト。ARスマートグラスのXシリーズやAirシリーズの製品情報、技術仕様、購入ページなどを提供。
RayNeo X3 Pro製品ページ(外部)
RayNeo X3 Proの詳細スペック、機能紹介、価格、購入オプションが掲載されている製品専用ページ。
TIME Best Inventions 2025 – RayNeo X3 Pro(外部)
TIME誌による2025年ベスト・インベンション特別賞の紹介ページ。RayNeo X3 Proが選出された理由や製品概要を掲載。
Qualcomm Snapdragon(外部)
QualcommのSnapdragonプロセッサ製品群の公式サイト。AR/VR向けのSnapdragon AR1プラットフォームの技術情報を掲載。
【参考記事】
RayNeo solidifies its global AR market leadership in Q3 with a 24% share(外部)
Counterpoint Researchの調査に基づき、RayNeoが2025年第3四半期にグローバルARグラス市場で24%のシェアを獲得し世界トップの地位を確保したことを報告。
RayNeo X3 Pro: The Best Inventions of 2025: Special Mentions | TIME(外部)
TIME誌による2025年ベスト・インベンション特別賞の公式記事。RayNeo X3 Proが選出された理由として両眼フルカラーディスプレイ、オープンエコシステム、AI統合機能を評価。
【編集部後記】
ARグラスが「視界に情報を重ねる」世界は、もう目の前まで来ています。RayNeo X3 Proのようなデバイスが普及したとき、私たちの働き方や情報との向き合い方は、どう変わっていくでしょうか。スマートフォンが登場したときのように、「画面を見下ろす」から「視線の先に情報がある」へのシフトは、想像以上に大きな体験の変化かもしれません。
もし明日から、TikTokやYouTubeが視界の中で展開されるとしたら、あなたはどんな使い方を試してみたいですか。































