advertisements

文部科学省、高校数学Iに「AI・データサイエンス」必修化を提案―2032年度導入へ

[更新]2025年12月24日

文部科学省、高校数学Iに「AI・データサイエンス」必修化を提案―2032年度導入へ - innovaTopia - (イノベトピア)

数学嫌いを量産してきた日本の教育が、ついに変わる。文部科学省が示した高校数学改革案は、公式暗記から脱却し、AI・データサイエンス時代に必須の思考力を全生徒に授ける野心的な挑戦だ。

※本記事で紹介している内容は、中央教育審議会での検討段階の資料に基づくものであり、学習指導要領への正式な反映や導入時期が決定したものではありません。


文部科学省は令和7年12月22日18時00分から20時00分まで、教育課程部会算数・数学ワーキンググループの第4回会議を開催した。会議はWEB会議と対面による会議を組み合わせた方式で実施された。配付資料はPDF形式で提供されている。

From: 文献リンク教育課程部会 算数・数学ワーキンググループ(第4回) 配付資料

【編集部解説】

文部科学省が示した高校数学教育の改革案は、単なるカリキュラムの見直しにとどまらず、AI時代に対応できる人材育成への国家的な方向転換を意味しています。

この改革の核心は、全ての高校生が「データサイエンスの基礎的素養」に触れることを想定した学習内容の在り方が検討されている点にあります。新設が検討されている「社会を読み解く数学(仮称)」では、数理モデル、数列と漸化式、ベクトル、確率と期待値という4つの単元を扱います。これらは、機械学習アルゴリズムの理解やデータ分析の基盤となる概念であり、文理を問わず現代社会で求められる思考の道具です。

注目すべきは「数学ガイダンス(仮称)」の新設です。高校数学の全体像を俯瞰し、微分・積分の考え方にも触れながら、数学が社会でどのように活用されているかを学びます。これは従来の「公式を覚えて問題を解く」という学習から、「数学的思考で現実の課題を解決する」へのパラダイムシフトを示しています。

一方で、学習内容の増加への懸念も示されており、既存カリキュラムの精選が並行して進められる予定です。また、カリキュラム全体の見直しにより、生徒が進路に応じて柔軟に学習できる仕組みへの移行も検討されています。

次期学習指導要領の導入時期(2030年代前半と見込まれる)を視野に入れた時間軸は、現在の中学生が対象となることを意味します。AI技術の急速な発展を考えれば、今この時点で教育の方向性を定めることは、7年後の社会で活躍する人材を育てるための重要な布石と言えるでしょう。

【用語解説】

教育課程部会
中央教育審議会の下部組織であり、小中高等学校における教育課程(カリキュラム)の基準を審議する。学習指導要領の改訂に向けた議論を行う重要な役割を担っている。

数理モデル
現実世界の現象や問題を数式や図表などの数学的な形式で表現したもの。経済予測、感染症のシミュレーション、交通流の分析など、複雑な事象を理解・予測するために用いられる。

漸化式
数列における項と項の関係を表す式。前の項から次の項を計算する規則を示し、フィボナッチ数列などが代表例。プログラミングやアルゴリズムの基礎概念として重要である。

ベクトル
大きさと向きを持つ量を表す数学的概念。物理学での力や速度の表現、コンピュータグラフィックス、機械学習における特徴量の表現など、科学技術分野で幅広く活用される。

学習指導要領
文部科学省が定める教育課程の基準。全国の学校で教育の質を保つため、各教科の目標や内容を定めている。おおむね10年に一度改訂される。

【参考リンク】

文部科学省 教育課程部会 算数・数学ワーキンググループ(外部)
算数・数学の教育課程に関する議論を行うワーキンググループの公式ページ。会議資料や議事録を公開している。

文部科学省(外部)
日本の教育、科学技術、スポーツ、文化に関する政策を担当する省庁。学習指導要領の策定や教育制度改革を主導。

【参考記事】

高校「数学I」AI・データサイエンス関連の単元検討…文科省(外部)
2025年12月22日開催の第4回会議内容を報告。数学Iに「社会を読み解く数学(仮称)」新設を検討。

算数・数学WG 数学Ⅰの再編を提案(外部)
数学Iの再編案を詳報。「数学ガイダンス(仮称)」など2つの新科目案が議論され、高校数学全体の構造改革を検討。

算数・数学WG 小中高で7領域に統一を提案 慎重論相次ぐ(外部)
算数・数学の領域区分を小中高で統一する提案に対し、現場から慎重な意見が相次いでいることを報告。

【編集部後記】

次期学習指導要領を見据えた高校数学の改革は、私たち自身がどんな社会を迎えるのかを映し出しているようにも感じます。AIやデータサイエンスが当たり前になる時代に、数学教育はどうあるべきでしょうか。

「数学が苦手だった」という方も多いかもしれません。しかし今回の改革では、公式暗記よりも「社会の課題を数学的に読み解く力」に焦点が当てられています。これは教育だけでなく、私たちの働き方や学び直しのあり方にも関わるテーマです。

みなさんは、どんな数学教育が次の世代に必要だと思いますか。ぜひSNSで教えてください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。