NewzDashの調査によると、Googleウェブサーチからニュースパブリッシャーへのトラフィックは過去2年間で25ポイント減少した。2023年にはGoogleの各サービスからニュースパブリッシャーへのトラフィックの51%以上を占めていたが、現在は27%にまで低下している。
一方、Google Discoverからのトラフィックは2023年の37%から現在67.5%に増加した。John ShehataがLinkedInに投稿したチャートによると、NewzDashが世界中の400以上のニュースパブリッシャーを分析した結果、Google Discoverのシェアは2023年の37.03%から67.51%に上昇し、従来のウェブサーチは51.10%から27.42%に急落したことが確認された。
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Google Search Traffic To News Publishers Drops From 51% To 27%
【編集部解説】
従来の検索トラフィックは、ユーザーが能動的にキーワードを入力し、求める情報にたどり着く「プル型」でした。一方、Google Discoverは、ユーザーの検索履歴や行動パターン、位置情報などを基に、AIがパーソナライズしたコンテンツを「プッシュ型」で配信する仕組みです。このフィードの80%はパーソナライズされており、ユーザーが明示的に検索しなくても、関心がありそうなニュースが自動的に表示されます。
注目すべきは、Google DiscoverのクリックスルーレートがWeb検索の約4倍に達している点です。2025年第1四半期のデータでは、Discoverが8%のCTRを記録したのに対し、検索は2%以下にとどまっています。表示結果が20〜30件程度に絞られており、AI Overviewsのような要約機能も表示されないため、ユーザーは実際にクリックしてコンテンツを読む傾向が強いのです。
しかし、この高いCTRには大きな代償が伴います。Discoverのトラフィックは極めて予測不可能で、激しい変動を繰り返すことが報告されています。実際、2025年12月11日に発表されたコアアップデートでは、一部のパブリッシャーが48時間以内に1日30万インプレッションあったDiscoverトラフィックを完全に失いました。従来の検索トラフィックが季節変動やニュースサイクルに基づく比較的予測可能なパターンを示していたのとは対照的です。
この変化の背景には、Googleの検索体験の根本的な転換があります。2024年5月にローンチされたAI Overviewsは、検索結果の最上部にAI生成の要約を表示し、多くのクエリでクリック不要で情報を得られるようにしました。Digital Content Nextの調査では、米国の主要パブリッシャーの検索からのリファラルトラフィックが2025年5〜6月に前年比で中央値10%減少し、ニュース以外のパブリッシャーでは14%も減少しています。
Googleは2025年4月、マドリードで開催されたSearch Central Liveイベントで、Discoverのデスクトップ展開を発表しました。現在のモバイルとデスクトップのトラフィック比率に基づけば、これによりDiscover経由のトラフィックが10〜15%増加する可能性があるとされています。ただし、発表から数ヶ月経過した12月時点でも、オーストラリアやニュージーランドなど限定的なテスト段階にとどまっており、技術的または戦略的な課題が存在することが示唆されます。
パブリッシャーにとって、この状況は収益予測と人員配置の両面で深刻な課題を生み出しています。安定したトラフィックを前提とした広告契約や予算計画が困難になり、一夜にしてトラフィックが消失するリスクと常に隣り合わせです。従来の「検索エンジン最適化」から「発見アルゴリズム最適化」へのシフトが求められていますが、その最適化手法自体がブラックボックスであり、確立された成功パターンはまだ存在しません。
【用語解説】
Google Discover
Googleが提供するパーソナライズされたコンテンツフィードで、ユーザーの検索履歴、閲覧履歴、位置情報などに基づいてAIが自動的に関心のありそうな記事やニュースを推薦する機能である。従来の検索のようにキーワードを入力する必要がなく、GoogleアプリやChromeのホーム画面に表示される。
Google Web Search(ウェブサーチ)
ユーザーがキーワードを入力して能動的に情報を検索する、Googleの従来型の検索サービスを指す。検索クエリに基づいて関連性の高いウェブページをランキング形式で表示する。
CTR(クリックスルーレート)
表示された検索結果やコンテンツに対して、実際にユーザーがクリックした割合を示す指標である。例えば100回表示されて5回クリックされた場合、CTRは5%となる。
AI Overviews
Googleが2024年5月にローンチした機能で、検索結果の最上部にAIが生成した要約を表示する。ユーザーはウェブサイトをクリックせずに質問への回答を得られるため、パブリッシャーのトラフィック減少要因の一つとされている。
パブリッシャー
ニュース記事やコンテンツを制作・発信する事業者を指す。新聞社、雑誌社、オンラインメディアなどが含まれる。
【参考リンク】
NewzDash(外部)
ニュースパブリッシャー向けアナリティクスプラットフォーム。Google DiscoverやWeb Searchからのトラフィックデータを分析・提供。
Google Discover – Google Search Central(外部)
Google公式のDiscover機能に関する開発者向けドキュメント。Discoverの仕組みやコンテンツ最適化のガイドラインを記載。
【参考記事】
News publishers lose half their Google search traffic in two years(外部)
NewzDashのデータに基づき、ニュースパブリッシャーへのGoogle検索トラフィックが2年間で半減したことを報じている。
Google’s AI search features are killing traffic to publishers(外部)
GoogleのAI Overviews機能がパブリッシャーのトラフィックに与える悪影響を分析。AI生成の要約によるクリック減少を指摘。
Facts: Google’s push to AI hurts publisher traffic(外部)
米国の主要パブリッシャーの検索トラフィックが2025年5〜6月に前年比で中央値10%減少したデータを提示。
Search slips, Discover delivers in latest Google update(外部)
2025年第1四半期のデータとして、Google DiscoverのCTRが8%に達したのに対し、検索は2%以下だったと報告。
Unlocking Google Discover Code: Analyzing 200+ Million Articles(外部)
John Shehataによる2億以上の記事を解析した結果。Discoverフィードの80%がパーソナライズされていると詳述。
【編集部後記】
みなさんは普段、情報をどのように見つけていますか? 気づけばスマホを開いて、Google Discoverのフィードをスクロールしていることが増えていませんか。検索窓にキーワードを打ち込む機会は、以前より減っているかもしれません。
今回のデータは、私たち読者側の行動変化を映し出す鏡でもあります。AIが選んだ情報だけを受け取る世界は、果たして豊かなのでしょうか。それとも、能動的に探す行為にこそ価値があるのか。みなさんはどう感じますか。































