2025年12月24日、キヤノンITソリューションズはローコード開発プラットフォーム「WebPerformer」の新バージョン2.8を提供開始した。
新バージョンでは、生成AIが業務に必要な内容をデータに基づき判断し、業務遂行を支援するインテリジェントアプリケーション開発に対応する。開発されたWebアプリケーションは、Amazon BedrockやAzure OpenAIといったAIサービスと標準関数やカスタム関数を通じて連携し、社内データを基に生成AIが分析して業務効率化を支援する。
また、シングルページアプリケーション開発の設計書自動出力およびテスト工程の自動化機能を搭載した。価格はサブスクリプションライセンスが150万円から、ユーザライセンスが360万円からとなる。WebPerformerは販売開始から20年間、顧客の業務効率化と競争力向上に貢献してきた。
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ローコード開発プラットフォーム「WebPerformer」がバージョンアップ 生成AIが判断し結果を業務に反映させるWebアプリケーション開発を実現|キヤノンITソリューションズ

【編集部解説】
今回発表されたWebPerformer Ver. 2.8は、ローコード開発の領域において重要な転換点を示しています。生成AIを単なる補助ツールとしてではなく、業務アプリケーションの核心部分に組み込む「インテリジェントアプリケーション」という概念は、これからの企業システム開発の方向性を示唆しているからです。
従来、生成AIの業務活用はドキュメント作成や情報検索といった周辺業務からの適用が進んできましたが、本製品ではAmazon BedrockやAzure OpenAIといった主要なAIサービスと直接連携し、社内データを基にした判断や分析を業務フローに組み込めます。つまり、AIが“助言する”にとどまらず、判断結果を業務フローに組み込み、処理結果を業務データへ反映できる段階へ進んだのです。
この変化は、システム開発における民主化を後押しする可能性があります。これまでプログラミングスキルの壁に阻まれていたビジネス部門の担当者が、AIの支援を受けながら高度なアプリケーション開発に関与しやすくなります。開発者の役割も変わります。コードを書くことよりも、業務ロジックの設計やAIとの最適な連携方法を考えることに重点が移るでしょう。
シングルページアプリケーション開発の自動化機能も見逃せません。設計書の自動生成やテスト工程の自動化は、開発工程の中でも工数の大きい作業を圧縮できる可能性があります。これにより、開発者は要件定義やユーザー体験の設計といった、より創造的な領域に時間を使えます。
一方で、課題も存在します。生成AIの判断をどこまで信頼し、どのように検証するかという問題です。特に基幹業務システムでは、AIの誤判断が企業活動に直接影響を及ぼす可能性があります。また、社内データを入力・参照する際のプライバシーやセキュリティの懸念も慎重に扱う必要があります。
WebPerformerは20年の歴史を持つ製品ですが、この新バージョンは単なる機能追加ではありません。「AIと人間が協働して業務システムを構築し、運用する」という新しいパラダイムへの挑戦です。日本企業の生産性向上が喫緊の課題となる中、このアプローチが今後のスタンダードとなる可能性は高いでしょう。
【用語解説】
ローコード開発プラットフォーム
プログラミングのコード記述を最小限に抑え、視覚的な操作(GUI)でアプリケーションを開発できるツール。従来の開発に比べて短期間・少人数での開発が可能となる。
インテリジェントアプリケーション
生成AIを組み込み、データに基づいて判断や分析を行いながら業務を支援するアプリケーション。単なる情報処理ではなく、状況に応じた柔軟な対応が可能。
シングルページアプリケーション(SPA)
Webページ全体を再読み込みせず、必要な部分だけを動的に更新する方式のWebアプリケーション。ユーザー体験が向上し、デスクトップアプリケーションのような滑らかな操作感を実現する。
RAG(検索拡張生成)
Retrieval-Augmented Generationの略。生成AIが回答する際に、外部のデータベースや文書から関連情報を検索・参照することで、より正確で最新の情報に基づいた回答を生成する技術。
【参考リンク】
キヤノンITソリューションズ株式会社(外部)
キヤノングループのIT企業。製造業、金融業、流通業など幅広い業界向けにシステム開発やITサービスを提供。
WebPerformer 製品サイト(外部)
ローコード開発プラットフォーム。2005年販売開始から20年の実績を持ち、1000社以上への導入実績。
WebPerformer-NX(クラウド版)(外部)
WebPerformerのクラウド版として2023年より提供。フリープランも用意され、無料でアカウント作成が可能。
Amazon Bedrock(外部)
AWSが提供する生成AI向けマネージドサービス。複数の基盤モデルを選択利用でき、安全な環境でAIアプリ構築が可能。
Azure OpenAI Service(外部)
MicrosoftのAzureクラウド上でOpenAIのGPTモデルなどを利用できるエンタープライズ向けサービス。
【参考記事】
キヤノンITソリューションズ株式会社様:ローコード開発プラットフォームのコード生成機能を3ヶ月で構築(外部)
WebPerformer-NXにAmazon Bedrockを活用した事例。開発工数を最大50%削減できることを報告。
「WebPerformer-NX」生成AIを用いた新機能(外部)
2025年3月発表のWebPerformer-NXの生成AI機能。AIコード提案機能とAIマニュアル検索機能を搭載。
生成AIを用いた新機能:WebPerformer-NX(外部)
AWS Bedrock、Azure OpenAI、GCP Vertex AIとの連携やRAG技術活用について詳細に解説。
【編集部後記】
生成AIが「アドバイスする」段階から「実際に業務を遂行する」段階へと進化する中で、私たちの働き方はどのように変わっていくのでしょうか。今回のWebPerformerの事例は、AIと人間の新しい協働の形を示しています。みなさんの職場では、どのような業務プロセスにAIを組み込むことで、より創造的な仕事に集中できるようになるでしょうか。
ローコード開発とAIの融合は、技術部門だけでなく、ビジネス部門にも新たな可能性を開いています。この変化の波を、みなさんはどのように捉え、活用していきたいとお考えですか。ぜひご意見をお聞かせください。































