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ヒュンダイ、CES 2026でAIロボティクス戦略発表。ボストンダイナミクス新型Atlasが初公開

[更新]2025年12月30日

ヒュンダイ、CES 2026でAIロボティクス戦略発表。ボストンダイナミクス新型Atlasが初公開 - innovaTopia - (イノベトピア)

ヒュンダイモーターグループは2025年12月22日、CES 2026への参加を予告するティーザー画像を公開した。同グループは2026年1月5日午後1時から1時45分(太平洋標準時)、ラスベガスのマンダレイベイコンベンションセンターで開催されるヒュンダイメディアデイにて、「Partnering Human Progress」をテーマにしたグループレベルのAIロボティクス戦略を発表する。プレゼンテーションはグループのグローバルYouTubeチャンネルでライブ配信される。

同グループの一部であるボストンダイナミクスは、新型Atlasロボットを初めて公開する。同グループはグループバリューネットワークとソフトウェアデファインドファクトリー(SDF)アプローチを活用したAIロボティクスの学習、トレーニング、拡大計画を明らかにする。1月6日から9日まで、ラスベガスコンベンションセンターにて、Atlas、Spot、MobEDのデモンストレーションを含む展示を開催する。

From: 文献リンクHyundai Motor Group to Unveil AI Robotics Strategy at CES 2026

 - innovaTopia - (イノベトピア)
ヒュンダイ公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

自動車産業とロボティクスの融合が、いよいよ本格的な商業化フェーズに入ろうとしています。ヒュンダイモーターグループがCES 2026で発表するAIロボティクス戦略は、製造業の未来を大きく変える可能性を秘めた動きです。

この発表で最も注目すべきは、ボストンダイナミクスの新型Atlasロボットが初めて公の場に登場することです。Atlasは2024年4月に油圧式から全電動式へと完全に刷新され、研究用プラットフォームから商業製品への転換を遂げました。電動化により、より高い出力密度と柔軟な動作が可能になり、人間の可動域を超える動きさえ実現しています。

ヒュンダイがボストンダイナミクスを2021年に11億ドルの企業価値で買収した背景には、明確な戦略的意図があります。同社は単なる自動車メーカーから「スマートモビリティソリューションプロバイダー」への転換を目指しており、ロボティクスはその核心技術と位置付けられています。

今回の戦略発表で鍵となるのがソフトウェアデファインドファクトリー(SDF)」という概念です。これは、データとソフトウェアによって運営される次世代のスマートファクトリーで、ロボットの開発、学習、訓練、運用までの全ライフサイクルを統合管理します。つまり、工場そのものがロボットの訓練場となり、リアルタイムでデータを収集・学習しながら、継続的に進化していく仕組みです。

「Partnering Human Progress(人類の進歩とのパートナーシップ)」というテーマが示すように、ヒュンダイは人間とロボットの対立ではなく協働を重視しています。Atlasは「robotic co-workers(ロボット協働者)」として設計されており、危険な作業や反復作業を担当することで、人間はより創造的な業務に集中できる環境を目指しています。

ゴールドマンサックスの予測では、ヒューマノイドロボット市場は2035年までに$38 billionに達するとされています。Tesla、Figure AI、Agility Roboticsなど多くの競合が参入する中、ヒュンダイとボストンダイナミクスの組み合わせは、世界最高水準のロボット技術と大規模製造能力を融合させた強力な競争力を持ちます。

実際、ヒュンダイは2026年からジョージア州のメタプラントアメリカでAtlasのテスト運用を開始する予定で、韓国の主要工場にもSpotやStretchといった他のロボットを展開していく計画です。同社は今後数年間で「数万台」規模のロボット導入を予定しており、これは製造業におけるロボット活用の新たな標準を示すものとなるでしょう。

一方で、大規模な自動化は雇用への影響という課題も抱えています。ただし、ロボットの保守、管理、プログラミングといった新たな職種が生まれることも事実です。重要なのは、この技術転換をいかに社会全体で適切に管理し、人間の能力を拡張するツールとして活用していくかという視点です。

CES 2026での具体的な戦略発表は、自動車産業だけでなく、製造業全体のデジタルトランスフォーメーションにおける重要な転換点となる可能性があります。1月5日のメディアデイでどのような具体的な数値目標やロードマップが示されるのか、業界全体が注目しています。

【用語解説】

CES 2026
Consumer Electronics Showの略。毎年1月にラスベガスで開催される世界最大級の家電・技術見本市。最新のテクノロジーやイノベーションが発表される場として、グローバルテック業界の注目を集める。2026年の開催は1月6日から9日まで。

グループバリューネットワーク
ヒュンダイモーターグループが構築する企業グループ全体の価値創造ネットワーク。自動車製造、部品供給、物流など、グループ内の各企業の強みを統合し、ロボティクス技術の開発から展開までを一貫して管理する仕組み。

ソフトウェアデファインドファクトリー(SDF)
データとソフトウェアによって運営される次世代スマートファクトリーのコンセプト。生産プロセス全体をソフトウェアで制御し、柔軟性と俊敏性を最大化する。AIロボットの学習、訓練、運用を統合的に管理し、継続的な進化を可能にする製造システム。

ヒューマノイドロボット
人間の形状を模した二足歩行ロボット。人間が働く環境に適応しやすく、既存のインフラをそのまま活用できる利点がある。製造、物流、介護など幅広い分野での活用が期待されている。

【参考リンク】

Hyundai Motor Group Newsroom(外部)
ヒュンダイモーターグループの公式ニュースルーム。企業の最新発表、技術革新、製品情報を発信。

Boston Dynamics(外部)
世界最先端のモバイルロボット開発企業。Spot、Stretch、Atlasの3製品を展開。

Atlas – Boston Dynamics(外部)
全電動ヒューマノイドロボット。2024年4月に電動式に刷新され、商業化に向け開発中。

Spot – Boston Dynamics(外部)
四足歩行ロボット。産業施設の点検、予知保全などで既に1,500台以上が稼働中。

【参考動画】

All New Atlas | Boston Dynamics
ボストンダイナミクス公式チャンネル。2024年4月公開の新型電動Atlas初公開映像。

【参考記事】

Hyundai Motor Group Completes Acquisition of Boston Dynamics from SoftBank(外部)
2021年6月、ヒュンダイがボストンダイナミクスを11億ドルで買収完了。80%の株式取得。

Boston Dynamics’ Atlas humanoid robot goes electric(外部)
2024年4月、油圧式Atlasを引退させ全電動版を発表。強度と可動域が大幅向上。

Hyundai Motor Group to Unveil AI Robotics Strategy at CES 2026(外部)
CES 2026での発表は実験技術から統合産業インフラへの転換を示す。SDFモデルを強調。

【編集部後記】

ヒューマノイドロボットが工場で人と並んで働く未来が、思っていたよりも早く訪れようとしています。Atlasのような高度なロボットが実際の製造現場に入ることで、私たちの仕事や働き方はどのように変わっていくのでしょうか。

ロボットとの協働は、人間の役割を奪うものではなく、むしろ創造的な活動に集中できる機会を生み出すとヒュンダイは語ります。CES 2026でどのような具体的なビジョンが示されるのか、innovaTopia編集部も注目しています。みなさんは、この「人類の進歩とのパートナーシップ」という考え方に、どのような可能性を感じますか。

投稿者アバター
Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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