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Google Gmail、ついにメールアドレス変更機能を実装──エイリアス機能で旧アドレスも継続利用、インドから段階展開

[更新]2025年12月30日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Googleは、@gmail.comで終わるメールアドレスをデータを失わずに変更できる新機能を段階的に展開している。

この機能は現在、Googleアカウントヘルプページのヒンディー語版にのみ記載されており、インドまたはヒンディー語圏から展開が開始される可能性がある。

従来、Gmailユーザーは新しいアドレスを取得するために新規アカウントを作成し、データを手動で移行する必要があった。

新機能では、アドレス変更後も写真、メッセージ、メールなどの既存データはすべて保持され、古いアドレスはエイリアスとして機能し続ける。

ユーザーは新旧両方のアドレスでメールを受信でき、どちらのアドレスでもGoogleサービスにサインインできる。

ただし、アドレス変更後12ヶ月間は新しいGmailアドレスを作成できず、変更した新アドレスの削除もできない。

また、1つのアカウントで最大3回まで変更可能で、合計4つのアドレスを持つことができる。

From: 文献リンクGoogle is rolling out a new feature allowing users to change their Gmail address

【編集部解説】

2004年4月1日、エイプリルフールの日にGoogleがGmailを発表したとき、多くの人々はそれをジョークだと思いました。当時の競合サービスが数メガバイトしか提供していなかった中、1ギガバイトという途方もないストレージ容量を無料で提供するという発表は、あまりにも信じがたいものだったのです。しかし、それは現実でした。そして今、Gmailは20年以上の歴史を経て、約18億人が利用する世界最大のメールサービスへと成長しています。

その長い歴史の中で、ユーザーから最も多く寄せられてきた要望の一つが、まさにこの「メールアドレスの変更」でした。10代の頃に作成した「[email protected]」や「[email protected]」といった恥ずかしいアドレスが、就職活動やビジネスの場面で付きまとう。多くのユーザーがこの問題に直面してきました。

これまで、Gmailアドレスを変更する唯一の方法は、新しいアカウントを作成し、すべてのデータを手動で移行することでした。しかしこのプロセスは複雑で、Google Drive、Google Photos、YouTube、そして数え切れないほどのサードパーティサービスとの連携を一つ一つやり直す必要があり、多くのユーザーにとって事実上不可能に近いものでした。その結果、ユーザーは望まないアドレスに「デジタルの終身刑」として縛られ続けてきたのです。

今回発表された新機能は、この20年来の課題を根本から解決するものです。最も重要なのは、アドレス変更後も古いアドレスがエイリアスとして機能し続ける点です。新旧両方のアドレスでメールを受信でき、どちらのアドレスでもGoogleサービスにサインインできます。写真、メッセージ、メール、Driveのファイルなど、すべてのデータは完全に保持されます。

しかし、この機能には慎重に設計された制限があります。アドレスの変更は12ヶ月に1回のみ、生涯で最大3回まで(合計4つのアドレス)という制限が設けられています。これは、無制限の変更がメールアドレスの信頼性を損なうことを防ぐための措置です。また、変更後12ヶ月間は新しいGmailアドレスを作成できず、新しく選択したアドレスを削除することもできません。

興味深いのは、この機能が現在ヒンディー語のサポートページにのみ記載されている点です。これはGoogleがインドまたはヒンディー語圏で先行展開し、グローバル展開前に機能をテストしている可能性を示唆しています。インドは人口14億人を超える巨大市場であり、デジタルサービスの実験場として注目されています。

この変更は、単なる機能追加以上の意味を持ちます。それは、デジタルアイデンティティに対する考え方の根本的な転換です。20年前、Gmailがローンチされた当時は、メールアドレスが永続的であることは当然と考えられていました。しかし、デジタルとフィジカルの生活が深く融合した現代において、その永続性は制約となっています。

人々のキャリア、アイデンティティ、人生そのものが変化する中で、デジタルアイデンティティもまた進化する必要があります。メールアドレスは単なる連絡手段ではなく、オンラインバンキング、ソーシャルメディア、ストリーミングサービス、仕事のプラットフォームなど、私たちのデジタル存在を支える「デジタルパスポート」となっています。Googleが今回この機能を導入することは、デジタルアイデンティティが固定されたものではなく、ユーザーとともに進化すべきものであるという認識の表れと言えるでしょう。

【用語解説】

エイリアス(Alias)
メールアドレスにおけるエイリアスとは、同一のメールボックスに紐付けられた別名アドレスのことである。エイリアスに送信されたメールは本来のアドレスと同じ受信箱に届く。今回のGmail機能では、古いアドレスがエイリアスとして機能し続けるため、両方のアドレスでメールを受信できる。

段階的ロールアウト(Gradual Rollout)
新機能を一度にすべてのユーザーに提供するのではなく、特定の地域やユーザー層から段階的に展開していく手法である。問題が発生した場合の影響を最小限に抑え、フィードバックを収集しながら改善を重ねることができる。

デジタルアイデンティティ(Digital Identity)
オンライン上で個人を識別・認証するための情報の総体を指す。メールアドレス、ユーザーネーム、パスワード、SNSアカウントなどが含まれる。現代では、デジタルアイデンティティが個人の社会的・経済的活動において重要な役割を果たしている。

【参考リンク】

Gmail(外部)
Googleが提供する無料のウェブメールサービス。2004年開始、現在約18億ユーザーを持つ世界最大のメールプラットフォーム。

Googleアカウント(外部)
Googleサービス全体へのアクセスを管理する中央アカウント。メールアドレス変更機能もここから利用可能になる予定。

Googleアカウント ヘルプ(外部)
Googleアカウントに関する公式サポートページ。アカウント設定、セキュリティ、プライバシーなどの情報を提供。

【参考記事】

Google is rolling out a new feature allowing users to change their Gmail address(外部)
CNBCによる報道。Gmailアドレス変更機能の詳細と、ヒンディー語サポートページでの先行公開について解説。

Google says it is ‘gradually rolling out’ option to change your @gmail.com address(外部)
9to5Googleの詳細な分析記事。最大3回の変更制限や、古いカレンダーイベントでの表示継続など技術的詳細を報告。

Gmail might finally let you switch to a new address without starting over(外部)
Android Centralによる包括的な解説。機能の仕組み、制限事項、ユーザーへの影響について詳述。

Google May Finally Let Users Change Embarrassing Old Gmail Addresses(外部)
Gizmodoの報道。ユーザーの長年の要望が実現される背景と、複数言語のサポートページ更新について報告。

Google will finally allow you to change your @gmail.com address(外部)
BleepingComputerによる技術面の詳細解説。エイリアス機能の仕組みとセキュリティ上の考慮事項について言及。

How Gmail Happened: The Inside Story of Its Launch 10 Years Ago Today(外部)
TIMEによるGmail誕生の内部ストーリー。Paul Buchheitの開発秘話とAJAXを先駆的に採用した技術革新を解説。

20 years of Gmail: How it went from April Fool’s to dominating email(外部)
Android Policeによる20年史。エイプリルフールのローンチから現在の18億ユーザーに至るまでの変遷を詳述。

【編集部後記】

20年以上変えられなかったメールアドレスを、ついに変更できる日が来るかもしれません。この機能がグローバル展開されたとき、みなさんはアドレスを変更しますか?それとも、長年使ってきたアドレスに愛着があるでしょうか?デジタルアイデンティティは私たちとともに進化すべきなのか、それとも一貫性を保つべきなのか。この小さな機能追加が投げかける問いは、意外と深いものかもしれません。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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