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jig.jp、CES 2026で次世代ARグラスを展示―鯖江の技術とプラスチックウェイブガイドが融合

[更新]2025年12月31日

jig.jp、CES 2026で次世代ARグラスを展示―鯖江の技術とプラスチックウェイブガイドが融合 - innovaTopia - (イノベトピア)

通勤中の翻訳、会議中のメモ確認――そんな日常がARグラスで当たり前になる未来が、もうすぐそこまで来ています。東証グロース上場のjig.jpが鯖江の技術とプラスチック製ウェイブガイドを融合させ、2026年1月のCES 2026で世界に挑みます。


株式会社jig.jpは、2026年1月6日から9日まで米国ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」において、Cellid株式会社の出展ブース内で次世代ARグラスを展示する。

展示内容は、同社が開発を進めるARグラスのプロトタイプ、情報表示及びUXデモ、AR×ソフトウェアによる利用シーンの紹介となる。ARグラスは軽量設計、視界を妨げない情報提示、通知機能・輝度調整機能・文字起こし機能・翻訳機能などを備える。

展示場所はLas Vegas Convention CenterのNorth Hall Smart Cities / IoT area、ブース#8200Aである。

同社は2025年12月9日、自社サイトにて日本初のプラスチックウェイブガイド光学技術を搭載し、鯖江の技術から生まれる一般向け商用ARグラスを提供する新事業を開始したと公表していた。

From: 文献リンクjig.jp、CES 2026にて次世代ARグラスを展示

 - innovaTopia - (イノベトピア)
株式会社jig.jp PRTIMESより引用

【編集部解説】

日本のソフトウェア企業jig.jpがARグラス市場へ本格参入する背景には、グローバル市場の急速な拡大があります。Omdiaの調査によれば、AI搭載グラス市場は2025年に510万台、2026年には1000万台を超え、2030年には3500万台に達する見込みです。この成長率は年平均47%に及び、GoogleやXiaomiといった大手プレイヤーの参入が市場を加速させています。

今回の展示で注目すべきは、Cellidが開発したプラスチック製フルカラーウェイブガイド技術との組み合わせです。ウェイブガイドとは、光を特定方向に伝搬させる光学構造で、マイクロプロジェクターからの光をレンズ内で全反射させながらユーザーの瞳へ導きます。Cellidのプラスチック製「R30-FL」シリーズは、対角視野角30度を実現しながら重量わずか3.6g、厚さ1.3mmという驚異的な薄型軽量化を達成しました。従来のガラス製に比べて圧倒的な軽さを誇り、通常の眼鏡と変わらない装着感を可能にしています。

鯖江という地名も重要な意味を持ちます。福井県鯖江市は日本国内の眼鏡フレーム需要の約95%、世界需要の約4分の1を供給する眼鏡生産の中心地です。100年以上の歴史を持つ職人技術と品質管理は、Thom BrowneやDITAといったラグジュアリーブランドからも信頼を獲得しています。jig.jpはこの地域特性を活かし、「日本初のプラスチックウェイブガイド光学技術を搭載した一般向け商用ARグラス」という独自ポジションを打ち出しました。

技術的な実用性も見逃せません。通知機能、文字起こし、翻訳、輝度調整といった日常機能を搭載し、ソフトウェアアップデートによる機能拡張も可能な設計となっています。これはMetaのRay-Ban StoriesやGoogle Glassが直面した「日常使いの壁」を意識した設計思想と言えるでしょう。ARを「特別な体験」ではなく「日常の延長」として位置づける同社のビジョンは、市場が成熟期に入る2026年のタイミングと合致しています。

一方で、プライバシーやセキュリティへの配慮は今後の課題となります。常時装着型デバイスは、カメラやマイク機能が搭載される場合、周囲の人々への影響や個人情報保護の観点から慎重な設計が求められます。また、CES 2026での展示はプロトタイプ段階であり、商用化時期や価格帯は未公表です。実際の市場投入に向けては、量産体制の確立、コスト最適化、規制対応など、多くのハードルが待ち構えています。

CES 2026という舞台選択も戦略的です。世界最大級のテクノロジー見本市で海外パートナーや開発者との連携機会を創出し、グローバル市場での認知度を高める狙いがあります。日本企業がハードウェアとソフトウェアを統合したAR体験を提案することで、Apple Vision ProやMeta Quest 3といった欧米勢とは異なる「日本発の価値」を示せるかが注目されます。

【用語解説】

ウェイブガイド(導波路)
光を特定の方向に伝搬させる光学構造で、ARグラスの表示技術として使用される。マイクロプロジェクターから発せられた光をレンズ内部で全反射させながら伝え、最終的にユーザーの瞳へ導く仕組みである。薄型軽量化と視野角確保の両立が技術課題となっている。

プラスチックウェイブガイド
従来のガラス製ではなくプラスチック素材で製造されたウェイブガイド光学部品である。軽量化と薄型化に優れ、装着感の向上に貢献する。Cellidが開発したR30-FLシリーズは重量3.2g、厚さ1.24mmを実現している。

CES(Consumer Electronics Show)
米国ネバダ州ラスベガスで毎年1月に開催される世界最大級のテクノロジー見本市である。Consumer Technology Association(CTA)が主催し、世界中から企業、メディア、投資家が集まる。新製品発表やイノベーション展示の場として業界で高い注目を集める。

UX(ユーザーエクスペリエンス)
製品やサービスを利用する際にユーザーが得る体験全体を指す概念である。操作性、視認性、快適性、満足度など、機能面だけでなく感情的側面も含む総合的な使用体験を意味する。

鯖江
福井県鯖江市は日本の眼鏡フレーム生産の約95%、世界需要の約4分の1を占める眼鏡産地である。100年以上の歴史を持ち、職人技術と品質管理により国際的な評価を獲得している。ラグジュアリーブランドからも信頼される製造技術を有する。

【参考リンク】

株式会社jig.jp 公式サイト(外部)
福井県鯖江市に本社を置く東証グロース上場のソフトウェア開発企業。2025年12月にARグラス事業への参入を発表した。

Cellid株式会社 公式サイト(外部)
プラスチック製フルカラーウェイブガイド技術を開発するAR光学部品メーカー。重量3.2g、厚さ1.24mmの超薄型軽量ウェイブガイドを提供。

CES 2026 公式サイト(外部)
2026年1月6日から9日までラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市。AI、XR技術などの最新イノベーションを展示。

鯖江市眼鏡産業情報(Sabaeframe)(外部)
福井県鯖江市の眼鏡産業を紹介する公式情報サイト。100年以上の歴史を持つ眼鏡製造の伝統、職人技術を発信。

【参考記事】

AI Glasses Market Poised to Hit 10 Million Units in 2026, Omdia Forecasts(外部)
Omdiaの市場調査。AI搭載グラス市場は2025年に510万台、2026年に1000万台超、2030年に3500万台に達する見込み。年平均成長率47%。

jig.jp to Exhibit Next-Generation AR Glasses at CES 2026(外部)
jig.jpの英語版プレスリリース。Cellidのウェイブガイド技術と自社のUX技術を組み合わせたARグラスをCES 2026で展示。

Cellid、ARグラス用ディスプレイ開発強化に向けて20億円を資金調達(外部)
Cellidが2025年2月に20億円を資金調達。R30-FLシリーズは対角視野角30度、重量3.2g、厚さ1.24mmを実現し量産体制構築中。

Waveguide design holds transformative potential for AR displays(外部)
ウェイブガイド技術の仕組みと可能性を解説。光を全反射させる導波路構造により薄型軽量なARディスプレイを実現。視野角と透過率がバランス課題。

Discover Sabae: Japan’s Hub of Luxury Handmade Eyewear Craftsmanship(外部)
鯖江市は100年以上の歴史を持つ眼鏡生産地。日本国内需要の95%、世界需要の約4分の1を供給。Thom BrowneやDITAからも信頼される。

Global Smart Augmented Reality (AR) Glasses Market to Reach 8.8 Million Units by the Year 2026(外部)
Global Industry Analystsの調査。スマートARグラス市場は2022年の64万台から2026年に880万台へ急成長。リモートワーク需要が後押し。

Debut of AR glasses demo with plastic full-colour waveguide(外部)
CellidがCES 2024でプラスチック製フルカラーウェイブガイドのデモを初公開。従来のガラス製より軽量で量産性に優れる。

【編集部後記】

ARグラスが「日常の延長」になる未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。鯖江の職人技術とプラスチックウェイブガイドの融合が生み出す軽さと快適性は、これまでのウェアラブルデバイスが抱えていた「装着の違和感」という壁を乗り越える可能性を秘めています。

通勤中の翻訳表示、会議中のメモ確認、街中でのナビゲーション――みなさんなら、どんな場面でARグラスを使ってみたいですか?プライバシーや依存性といった課題も含めて、一緒に考えていきたいテーマです。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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