2025年12月5日、ドローン業界に静かな革命が起きた。民間資格による飛行許可申請の優遇措置が終了し、「誰でもできる副業」から「選ばれた専門家」の時代へ。一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会が発表した2026年の年頭所感は、業界の転換点を象徴する7つのキーワードを提示している。
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会は2026年1月1日、代表理事の森本氏による年頭所感を発表した。2025年12月5日に国土交通省ホームページに掲載されていた民間資格による飛行許可申請の優遇措置が終了し、ドローン業界は新たなフェーズへ移行している。
同協会は2026年の業界展望として7つのキーワードを提示した。内容はドローンスクール変革、パイロット専門職化、職業細分化、人材の地産地消、レベル3/3.5飛行の実用化、災害対応ドローンの社会インフラ化、空飛ぶクルマビジネス始動である。同協会は2025年に能登半島地震での支援活動、一般社団法人MASCのチームメンバーとして国内初のEH216L(最大ペイロード250kg)飛行を実施した。
aotoriフランチャイズネットワークは全国130拠点超に拡大している。
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【年頭所感】2026年、ドローン業界は「プロの時代」へ──民間資格優遇終了で始まる7つの変革

【編集部解説】
2025年12月5日をもって、民間資格による飛行許可申請の優遇措置が終了しました。この日付は、2022年12月5日に国家資格制度が開始されてから丁度3年後にあたります。国土交通省は制度開始時から、3年間の移行期間を設けた上で民間資格の優遇措置を終了することを明示していました。
この変化が意味するのは、ドローン業界における「参入障壁の再設定」です。これまでドローンビジネスは、比較的短期間の民間講習を受ければ参入できる領域でした。しかし今後は、国家資格取得と実務経験の両輪が求められる、真の専門職へと移行していきます。
特に注目すべきは「2階建て構造」という考え方です。国家資格は飛行許可申請などの「手続き資格」に過ぎず、実際のビジネスには空撮、測量、点検、農薬散布といった分野ごとの「実務資格」が必要になります。これは医師が国家資格取得後に専門分野を学ぶ構造と同じで、ドローンパイロットが真の専門職として確立されることを意味しています。
レベル3/3.5飛行の実用化も重要なポイントです。2023年12月に導入されたレベル3.5飛行制度により、機上カメラを活用すれば補助者や看板の設置なしで目視外飛行が可能になりました。これにより物流、点検、測量などの分野で長距離ビジネスの可能性が大きく広がります。従来は立入管理措置のコストや手間が事業化の障壁となっていましたが、この規制緩和により実用レベルでの運用が現実的になってきました。
能登半島地震でのドローン活用実績も、この業界の転換点を象徴しています。2024年1月の地震では、被災状況の確認から物資輸送まで多様な用途でドローンが活用されました。当初は発災から5日後にようやく民間ドローンが飛行を開始するなど課題も浮き彫りになりましたが、2024年9月の豪雨災害では石川県からただちに要請が来るなど、災害対応におけるドローンの位置づけが「あったらいいな」から「なくてはならない」社会インフラへと変化したことが確認できます。
さらに興味深いのが、空飛ぶクルマへのキャリアパスです。一般社団法人MASCは日本で最も多くの空飛ぶクルマ飛行実績を持つ団体であり、同協会との連携により2025年8月には能登半島でEH216L(最大ペイロード250kg)の国内初飛行が実施されました。現在のドローン技術・経験が、将来的な空飛ぶクルマビジネスへの橋渡しになる可能性を示唆しています。
この業界再編は決してネガティブな変化ではありません。むしろ、技術と知識を持った専門家が正当に評価され、持続可能なビジネスとして確立される好機といえます。さらに注目すべきは、地域によって求められる専門性が異なる点です。農業地域では農薬散布、工業地域では設備点検、観光地では空撮といったように、地域特性に応じた「地産地消型」の人材育成が求められています。
【用語解説】
民間資格
ドローンスクールなどの民間団体が発行する操縦技能認証。2025年12月5日まで、国土交通省ホームページに掲載された民間資格保有者は、飛行許可申請時に書類の一部省略が認められる優遇措置があった。
国家資格(無人航空機操縦者技能証明)
2022年12月5日に開始されたドローンの国家資格制度。一等と二等があり、レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)には一等資格が必要。
レベル3/3.5飛行
無人地帯における目視外飛行を指す。レベル3は補助者や看板の配置が必要だったが、2023年12月に導入されたレベル3.5では機上カメラによる安全確認により、これらの立入管理措置が不要になった。
目視外飛行
操縦者が直接ドローンを目視できない範囲での飛行。モニター越しに機体カメラの映像を見ながら操縦する。
無人地帯
山、海水域、河川、森林、農用地など、第三者が存在する可能性が低い場所。人口密度の低い地域を指す。
eVTOL(イーブイトール)
Electric Vertical Take-Off and Landingの略。電動垂直離着陸機のことで、「空飛ぶクルマ」とも呼ばれる次世代エアモビリティ。
ペイロード
機体が搭載できる最大積載量。EH216Lの場合は250kgの物資を運搬可能。
2階建て構造
国家資格(手続き資格)と民間ビジネスコース(実務資格)を両方取得する必要があるという考え方。医師が国家資格取得後に専門分野を学ぶ構造に類似。
立入管理措置
第三者の立ち入りを防ぐための措置。従来のレベル3飛行では、補助者の配置、看板の設置、飛行周知などが必要だった。
機上カメラ
ドローン本体に搭載されたカメラ。レベル3.5飛行では、このカメラで飛行経路下に人がいないことを確認することで、立入管理措置が不要になる。
【参考リンク】
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会(DBA)(外部)
2016年創業。全国130拠点超のフランチャイズネットワーク「aotori」を運営し、ドローンビジネスの支援やスクール運営、空飛ぶクルマの社会実装にも取り組む業界団体。
aotori(アオトリ)(外部)
日本ドローンビジネスサポート協会が運営するフランチャイズネットワーク。全国130拠点超で空撮、測量、点検、農薬散布、空輸、スクールなど多様な分野で活動。
一般社団法人MASC(外部)
岡山県倉敷市を拠点とする航空宇宙産業クラスターを目指す団体。日本国内で最も多くの空飛ぶクルマ飛行実績を持ち、eVTOLの試験飛行や社会実装に取り組む。
国土交通省 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(外部)
ドローンの飛行許可・承認申請、機体登録、操縦者技能証明(国家資格)など、ドローンに関する制度全般を解説する国土交通省の公式ページ。
国土交通省 レベル3.5飛行の許可・承認申請について(外部)
2023年12月に導入されたレベル3.5飛行制度の詳細を解説する公式資料。申請要件、必要な書類、飛行条件などが記載されている。
【参考記事】
2025年12月5日、ドローン資格制度の転換点〜2026年以降の資格選択ガイド〜|DBA note(外部)
民間資格優遇措置終了の経緯と、2017年4月の国交省掲載制度開始から2025年12月までの資格制度の変遷を詳述。国家資格と民間資格の二層構造への再編について解説している。
レベル3.5飛行とは?ドローンの目視外飛行の規制緩和を徹底解説 | バウンダリ行政書士法人(外部)
レベル3.5飛行制度の詳細を解説。従来のレベル3飛行では必要だった立入管理措置や道路横断時の一時停止が、機体カメラ活用により大幅に緩和された点を説明。
災害時のドローン活用に向けて~能登半島地震と大分県の事例から~ | SOMPOインスティチュート・プラス(外部)
2024年1月の能登半島地震でのドローン活用状況を詳細に分析。民間ドローンの飛行開始が発災から5日後になった課題や、自治体との連携体制の必要性を指摘。
2024年9月能登半島豪雨災害でのドローンの活用~活かされた地震の経験と残された課題~ | SOMPOインスティチュート・プラス(外部)
2024年9月の豪雨災害では、1月の地震の教訓が活かされ、石川県からただちに民間ドローンへの要請が行われた事例を報告。災害対応体制の進化を示している。
ドローンの民間資格による飛行許可申請が廃止される?民間資格保有者の今後を徹底解説!(外部)
2022年12月5日から3年後の2025年12月に民間資格のエビデンスとしての活用が終了することを明記。民間資格保有者が国家資格取得時に「経験者」として講習時間が短縮される点を解説。
【能登復興支援】国内初!物資輸送用「空飛ぶ車」EH216L(最大積載250kg)の試験飛行(外部)
2025年8月に石川県珠洲市で実施されたEH216Lの国内初飛行について報告。一般社団法人MASCが飛行試験を支援し、災害復興支援と次世代モビリティの実用化を目指す取り組みを紹介。
[ドローン活用の現在値]Vol.01 能登半島震災におけるドローン救助 – DRONE(外部)
JUIDA参与の嶋本学氏の活動を詳述。輪島市災害対策本部にオブザーバーとして入り、行政担当者や自衛隊から需要を吸い上げて対応できるドローン事業者に依頼する「業務調整」を担当した経緯を報告。
【編集部後記】
ドローン業界の「プロ化」は、テクノロジー分野における専門職の在り方を考える良い機会かもしれません。「誰でもできる」から「選ばれた専門家」へという流れは、AI時代において多くの職業が直面する課題とも重なります。
みなさんの業界や専門分野でも、同じような変化が起きているでしょうか。あるいは、これから起きるでしょうか。技術の民主化と専門性の確立、この両立をどう実現するか。ドローンという具体的な事例から、私たち自身の働き方やキャリアについても、何か気づきがあれば嬉しく思います。

































