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ヴィタリック・ブテリン、CloudflareとAWS障害受けDAppsによる分散化インフラを提唱

ヴィタリック・ブテリン、CloudflareとAWS障害受けDAppsによる分散化インフラを提唱 - innovaTopia - (イノベトピア)

イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリンは、1月1日木曜日のX投稿で、分散型アプリケーション(DApps)がインターネットインフラの障害を軽減できると述べた。Cloudflareは11月に大規模障害を経験し、プラットフォームのウェブサイトの約20%がダウンした。

同社の事後検証報告書によると、ボット管理システムが使用する機能ファイルが通常の制限を超えて肥大化したことが原因だった。Amazon Web Servicesも10月に障害を起こし、Coinbase、Blockchain.com、BitMEX、Ledgerなどのウェブサイトがオフラインになった。ブテリンとイーサリアム財団の研究者ヨアヴ・ワイス、マリッサ・ポスナーは11月11日にマニフェストを発表し、分散化は利便性によって侵食されると述べた。12月初旬、ブテリンは暗号通貨市場がトラストレスのオンチェーンガス先物市場を必要としていると主張した。

From: 文献リンクEthereum co-founder pitches DApps as solution to 2025 Cloudflare outage

【編集部解説】

2025年11月と10月に立て続けに発生したCloudflareとAmazon Web Servicesの障害は、Web3業界に深刻な問いを投げかけました。「分散化」を掲げる暗号通貨やブロックチェーンのエコシステムが、実は中央集権的なインフラに依存しているという皮肉な現実が露呈したのです。

Cloudflare障害では、わずか数時間の間にX(旧Twitter)、ChatGPT、Spotifyなど、日常的に使用されている多数のサービスが利用不能になりました。Cloudflareは1秒あたり平均8100万のHTTPリクエストを処理する世界最大級のインフラ企業であり、今回の障害では同社が管理するウェブサイトの約20%が影響を受けました。その影響範囲の広さが浮き彫りになった形です。暗号通貨業界でも、Coinbase、Blockchain.com、BitMEX、Ledgerといった主要プラットフォームがオフラインになり、数時間にわたってユーザーは自身の資産にアクセスできない状態に陥りました。

より深刻だったのは、10月のAWS障害です。US-EAST-1リージョンで発生したDNS関連の不具合が15時間以上続き、CoinbaseのLayer 2ネットワークであるBase、ConsenSysのInfura、Robinhoodなどが機能停止しました。興味深いのは、ブロックチェーン自体は稼働し続けていた点です。イーサリアムやビットコインのノードは問題なくブロックを生成していましたが、ユーザーがそれらにアクセスするための「玄関口」であるRPCエンドポイントやAPIが停止したため、事実上使用不能になったのです。

この状況に対し、ヴィタリック・ブテリンは明確なビジョンを示しました。11月11日に発表された「Trustless Manifesto(トラストレス・マニフェスト)」では、「分散化は捕獲によってではなく、利便性によって侵食される」という洞察が示されています。これは、開発者が楽をするために中央集権的なサービスに依存することで、知らず知らずのうちにブロックチェーンの本質的価値が失われていく現象を指摘したものです。

技術的に見ると、現在の多くのdAppsは「見せかけの分散化」に陥っています。Ethernodes.orgのデータによれば、イーサリアムの実行ノードの半数以上がAWS、Google Cloud、Microsoftなどの中央集権的なクラウドプロバイダー上で稼働しています。つまり、ブロックチェーン層では分散化されていても、インフラ層では3社の「大家」に家賃を払っている状態なのです。

ブテリンが提唱する解決策は、真に分散化されたdAppsの構築です。彼が目指すのは「Cloudflareがダウンしても、北朝鮮にハッキングされても、ユーザーが気づかないようなアプリケーション」です。これは単なる理想論ではありません。Akash、Filecoin、Arweaveといった分散型ストレージやコンピューティングネットワークは既に実用段階にあり、ConsenSysとEigenLayerは11月にDecentralized Infrastructure Network(DIN)をローンチしました。

しかし、課題も残されています。分散型インフラは中央集権的なクラウドサービスに比べて複雑で、開発速度も遅くなりがちです。企業にとっては、コンプライアンス、スピード、稼働率の面でAWSやGoogle Cloudの方が魅力的に映ります。この「利便性の誘惑」こそが、ブテリンが警告する最大の脅威なのです。

2026年を迎えた今、Web3業界は岐路に立っています。真の分散化を追求するのか、それとも利便性のために中央集権的なインフラに依存し続けるのか。この選択は、ブロックチェーン技術の未来を左右する重要な分岐点となるでしょう。

【用語解説】

DApps(分散型アプリケーション)
Decentralized Applicationsの略。中央管理者を持たず、ブロックチェーン上で動作するアプリケーション。従来のアプリと異なり、単一の企業やサーバーに依存せず、ネットワーク全体で分散して稼働する。

RPC(Remote Procedure Call)
ブロックチェーンのデータにアクセスするための通信プロトコル。ウォレットやdAppsがブロックチェーンと通信する際の「窓口」として機能する。多くのサービスがInfuraなどの中央集権的なRPCプロバイダーに依存している。

Layer 2
イーサリアムなどのメインブロックチェーン(Layer 1)の上に構築される第二層のネットワーク。取引処理を高速化し、手数料を削減することを目的とする。Baseなどが代表例。

トラストレス・マニフェスト
2025年11月11日にヴィタリック・ブテリン、ヨアヴ・ワイス、マリッサ・ポスナーが発表した宣言文。ブロックチェーンの本質である「信頼不要(トラストレス)」の原則を再確認し、利便性のために中央集権化へ傾斜する現状に警鐘を鳴らす内容。

ノード
ブロックチェーンネットワークに参加し、取引データの検証や保存を行うコンピューター。ノードが多数存在し、地理的・組織的に分散していることで、ブロックチェーンの分散性と耐障害性が保たれる。

US-EAST-1リージョン
AWSのバージニア州北部に位置するデータセンター群。AWSの中でも最も古く、最も多くのサービスが集中している主要リージョン。このリージョンの障害は広範囲に影響を及ぼす。

【参考リンク】

Cloudflare 公式サイト(外部)
CDN、DDoS攻撃対策、セキュリティサービスを提供する世界最大級のインフラ企業。1秒あたり平均8100万のHTTPリクエストを処理。

Amazon Web Services (AWS)(外部)
アマゾンが提供する世界最大のクラウドコンピューティングプラットフォーム。グローバルクラウド市場の約30%を占める。

Coinbase(外部)
米国最大手の暗号通貨取引所。自社のLayer 2ネットワーク「Base」も運営し、イーサリアムエコシステムの主要プレイヤー。

ConsenSys(外部)
イーサリアムエコシステムの主要開発企業。MetaMaskやInfuraなどの重要なインフラサービスを提供している。

EigenLayer(外部)
イーサリアムのリステーキングプロトコル。ステーキングされたETHを活用して複数のサービス(AVS)に経済的セキュリティを提供。

Infura(外部)
ConsenSysが運営する、ブロックチェーンへのアクセスを提供するRPCサービス。多くのウォレットやdAppsが利用している。

Ethernodes.org(外部)
イーサリアムネットワークのノード分布を追跡・可視化するサイト。ホスティングプロバイダーや地理的分布などの統計データを提供。

Akash Network(外部)
分散型クラウドコンピューティングプラットフォーム。AWSやGoogle Cloudに代わる、分散化された代替手段を提供している。

Filecoin(外部)
分散型ストレージネットワーク。世界中の余剰ストレージ容量を活用し、中央集権的なクラウドストレージに代わるソリューションを提供。

Arweave(外部)
永続的なデータストレージを提供する分散型プロトコル。データを永久的に保存し、中央集権的なストレージプロバイダーへの依存を減らす。

The Trustless Manifesto(外部)
ヴィタリック・ブテリン、ヨアヴ・ワイス、マリッサ・ポスナーによる宣言文の公式サイト。オンチェーンでの署名機能を提供。

【参考記事】

Cloudflare outage on November 18, 2025(外部)
Cloudflare公式による事後検証報告。Bot Management機能のfeature fileが通常サイズの2倍に肥大化したことが原因と詳細に分析。

AWS Outage Analysis: October 20, 2025(外部)
Cisco ThousandEyesによるAWS障害の技術分析。US-EAST-1リージョンで15時間以上続いた障害の詳細をレポート。

Cloudflare says outage that hit X, ChatGPT and other sites is resolved(外部)
Cloudflare障害の影響範囲を報じる記事。同社が1秒あたり平均8100万のHTTPリクエストを処理していることを明記。

AWS Outage Shows Crypto’s Weak Spot: Centralized Dependence(外部)
10月のAWS障害が暗号通貨業界に与えた影響を分析。イーサリアムノードの約70%が中央集権的クラウドでホストされている現状を指摘。

After AWS Outage, Consensys and Eigen Launch Decentralized Solution for Web3(外部)
AWS障害を受けて、ConsenSysとEigenLayerが2025年11月にDecentralized Infrastructure Network(DIN)を正式ローンチ。

Trustless Manifesto – Decentralized Finance | IQ.wiki(外部)
Trustless Manifestoの詳細な解説。イーサリアムメインネット上に署名機能を持つスマートコントラクトが展開されている。

The Trustless Manifesto(外部)
Trustless Manifestoの原文。「AWS、GCP、Cloudflareが停止すれば、ほとんどのアプリも停止する」という現状を指摘。

【編集部後記】

私たちが日常的に使っているdAppsやウォレット、実はどこまで「分散化」されているのでしょうか。今回の障害は、便利さを追求するあまり、知らず知らずのうちに中央集権的なインフラに依存してしまっている現実を浮き彫りにしました。

ブテリンが指摘する「利便性による侵食」は、開発者だけでなく、私たちユーザーの選択にも当てはまるのかもしれません。皆さんが使っているサービスは、AWS障害が起きたときに動き続けるでしょうか。一度確認してみる価値があるかもしれませんね。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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