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Caterpillar、エッジAI搭載「Cat AI Assistant」をCES 2026で発表

Caterpillar、エッジAI搭載「Cat AI Assistant」をCES 2026で発表 - innovaTopia - (イノベトピア)

経験豊富な技術者が次々と退職する建設業界で、新人オペレーターが即戦力になる日が来ようとしています。Caterpillarは2026年1月6日、150万台の機械から集めた知見をエッジAIに凝縮し、キャビン内で完結する「デジタルコーチ」を世界に示しました。


Caterpillar Inc.(NYSE: CAT)は2026年1月6日、ラスベガスで開催されたCES 2026においてCat AI Assistantを発表した。このAIベースのソリューションは、Caterpillarの機器とデジタルアプリケーションポートフォリオを統合し、フリートマネージャー、技術者、機械オペレーター向けに異なる機能を提供する。16ペタバイト以上のデータを管理するHeliosデータプラットフォームを基盤とし、Caterpillar全体の知識ベースに対して動作する。

チーフデジタルオフィサーのオギ・レドジック氏は、企業本社でも遠隔地の作業現場でも顧客の成功を支援すると述べた。機械オペレーター向けにはNVIDIA Jetson Thorプラットフォームを活用し、音声認識と高度なAIモデルを実行する。オフボード版は2026年第1四半期に稼働予定で、キャビン内アプリケーションは検証の最終段階にある。Caterpillarの2024年の売上高と収益は648億ドルである。

From: 文献リンクCaterpillar Introduces Cat AI Assistant

【編集部解説】

今回Caterpillarが発表したCat AI Assistantは、単なる対話型AIチャットボットではありません。複数のAIエージェントが連携して動作し、フリートマネージャー、技術者、機械オペレーターという3つの異なる役割に対して、それぞれ最適化された機能を提供する点が特徴です。

このシステムの背骨となっているのが、約150万台の接続資産から収集された16ペタバイト以上のデータを管理するHeliosプラットフォームです。毎秒数千のメッセージを送受信し、毎日数百万のデータパイプラインを実行することで、単なる過去データの参照ではなく、リアルタイムの状況判断と予測的な行動を可能にしています。

特に注目すべきは、NVIDIA Jetson Thorプラットフォームの採用です。このエッジAIコンピューティングシステムは、NVIDIA Blackwell GPUと128GBのメモリを搭載し、130ワットの消費電力で2,070 FP4テラフロップスのAI演算能力を発揮します。クラウドに依存せず、機械の「エッジ」で音声認識や高度なAIモデルを実行できるため、インターネット接続が不安定な遠隔地の建設現場や鉱山でも、低レイテンシーで確実に動作します。

この技術が解決しようとしている課題は明確です。建設業界は今後数年で数十万人規模の人材不足に直面する可能性があると指摘されており、人材確保は喫緊の課題となっています。経験豊富な労働者の大量退職と移民政策による労働供給の制限が、この危機を加速させています。Cat AI Assistantは、経験の浅いオペレーターの生産性を向上させ、熟練技術者の知識を体系化して共有することで、この人材ギャップを埋める役割を果たします。

Caterpillarの自律走行技術の実績も、このAI戦略の信頼性を裏付けています。同社のMineStar Command for haulingは、数十億トン規模の資材を自律走行で運搬してきた実績を有しています。ある顧客の5年間の調査では、燃料使用量を11%削減し、年間約4,300トンのCO2排出削減を実現しました。

AI Assistantは音声、テキスト、画像、動画を理解するマルチモーダル対応で、単に質問に答えるだけでなく、ユーザーに代わって行動します。重要な機器の健全性アラートへの対応、管理タスクの実行、燃料残量の警告など、オペレーターのニーズを先回りして提案する能力を持ちます。

一方で、産業用AIの展開には慎重な検証が必要です。Caterpillarがキャビン内アプリケーションを「検証の最終段階」としているのは、安全性とセキュリティが最優先されていることを示しています。機械の指示支援や架空送電線回避などの安全機能は、誤作動が重大な事故につながる可能性があるため、段階的な展開が不可欠です。

【用語解説】

エッジAIコンピューティング
クラウドサーバーにデータを送信せず、現場の機器(エッジ)で直接AI処理を実行する技術。通信遅延が最小化され、インターネット接続が不安定な環境でも安定動作する。データプライバシーの向上や、リアルタイム性が求められる産業用途に適している。

ペタバイト
デジタルデータの容量単位で、1ペタバイトは1,000テラバイト、または100万ギガバイトに相当する。16ペタバイトは、約40億曲のMP3音楽ファイル、または約32億枚の高解像度写真を保存できる規模である。

マルチモーダルAI
テキスト、音声、画像、動画など、複数の異なる種類のデータ形式を同時に理解・処理できるAIシステム。単一の入力形式に限定されず、より自然で柔軟な人間とのインタラクションが可能になる。

フリートマネージャー
複数の車両や重機を一括管理する責任者。建設・鉱業業界では、機械の稼働状況、メンテナンススケジュール、燃料消費、オペレーターの配置などを統括し、効率的な運用を実現する役割を担う。

【参考リンク】

Caterpillar Inc. 公式サイト(外部)
2024年売上高648億ドル。建設・鉱業機械の世界最大手メーカーで100年の歴史を持つ。

NVIDIA Jetson プラットフォーム(外部)
産業用ロボティクスと自律システム向けエッジAIコンピューティングプラットフォーム。

CES 2026 公式サイト(外部)
世界最大級のコンシューマーエレクトロニクス展示会。2026年1月6-9日ラスベガスで開催。

【参考動画】

CES 2026 Keynote with Caterpillar’s Joe Creed
Caterpillar CEOによるCES 2026キーノートスピーチ。Cat AI Assistantの実演デモやHeliosプラットフォームの説明が含まれる。

【参考記事】

Caterpillar CES 2026 Keynote Unveils Cat AI Assistant(外部)
約150万台の接続資産、16ペタバイトのデータ処理、毎秒数千メッセージ送受信など技術仕様を詳述。

Top Challenges Facing the Construction Industry in 2026(外部)
2026年の建設業界が直面する約50万人の労働者不足、熟練労働者の大量退職などを分析。

Caterpillar, Hexagon, John Deere adopt NVIDIA’s Jetson Thor(外部)
2,070 FP4テラフロップス、128GBメモリ、130W消費電力などの詳細仕様を提供。

Transforming the Way We Help Our Customers Tackle Challenges(外部)
複数のAIエージェント構成、マルチモーダル対応、ユーザー代行機能について公式が詳述。

【編集部後記】

建設現場という過酷な環境で、クラウドに頼らずエッジで完結するAIが動き始めています。人材不足が深刻化する中、AIは「人の代替」ではなく「経験の浅い人を即戦力化するパートナー」として機能しようとしています。

みなさんの業界でも、同様の課題はありませんか?熟練者の知識をどう次世代に継承するか、この問いは業種を超えた共通テーマかもしれません。Caterpillarのアプローチから、自社のDX戦略のヒントが見つかるかもしれません。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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