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3Dプリント太陽電池が実現する透明で色調整可能な発電窓|ヘブライ大学が開発

[更新]2026年1月10日

3Dプリント太陽電池が実現する透明で色調整可能な発電窓|ヘブライ大学が開発 - innovaTopia - (イノベトピア)

ヘブライ大学の化学研究所およびナノサイエンス・ナノテクノロジーセンターのShlomo Magdassi教授とLioz Etgar教授らのチームは、半透明で色調整可能なペロブスカイト太陽電池を開発した。3Dプリントされた微細なポリマー柱のパターンを用いることで、太陽電池材料自体を変更せずに光の透過量と色の調整を可能にした。

この方法は高温や有毒溶媒を使用しないため、柔軟な表面への適用と環境配慮型の製造が可能である。透明電極層の厚さを調整することで、発電を続けながら異なる色を表現できる。実験室テストでは電力変換効率は最大9.2%、平均可視光透過率は約35%を達成し、繰り返しの曲げや長期動作でも安定した性能を維持した。研究成果は学術誌EES Solarに掲載された。

From: 文献リンク3D-printed solar panel offers color tuning and transparency for flexible surfaces

【編集部解説】

今回の研究が注目される理由は、建物一体型太陽光発電(BIPV)という分野に新しいアプローチを提示したことにあります。従来の透明太陽電池は、太陽電池材料そのものを改変して透明性を確保していましたが、この方法では発電効率と透明性がトレードオフの関係にありました。

ヘブライ大学のチームは、3Dプリントで作成したポリマー柱を「光学的な穴」として配置することで、太陽電池材料自体には手を加えず透明性をコントロールする手法を開発しました。これにより、発電性能を維持しながら視認性を確保できるようになったのです。

発電効率9.2%という数値は、シリコン系太陽電池の20%超と比較すると控えめに見えるかもしれません。しかし、透明性と柔軟性を両立させた太陽電池としては実用的な水準です。特に注目すべきは、500回の曲げ試験後も初期性能の90%を維持した耐久性です。

ペロブスカイト太陽電池は高効率と低コスト製造の可能性から次世代技術として期待されていますが、湿度や酸素、熱に弱いという課題を抱えています。今回の研究では溶媒フリーの無毒材料を使用し、低温プロセスで製造できる点が環境配慮と量産適性の両面で評価されます。

BIPV市場は2026年に283億ドル規模と予測され、2034年には859億ドルへと成長する見込みです。既存建物への後付け(レトロフィット)需要が高まる中、窓ガラスを交換するだけで発電機能を追加できる技術は大きな価値を持ちます。

ただし商業化には課題も残ります。研究チームも認めているように、長期耐久性の向上には保護カプセル化とバリア層の開発が不可欠です。ペロブスカイト材料の安定性向上と大規模製造プロセスの確立が、実用化への鍵となるでしょう。

色調整機能は、建築デザインの自由度を高める重要な要素です。透明電極の厚みを変えるだけで発電を続けながら様々な色を表現できるため、建物の美観を損なわずにエネルギー自給率を高められます。

都市部では屋上スペースが限られているため、窓やファサードを発電面として活用する技術革新が求められています。この研究は、建築物のあらゆる表面を潜在的なエネルギー源に変える未来への一歩と言えるでしょう。

【用語解説】

ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト構造を持つ結晶材料を光吸収層に使用した太陽電池である。従来のシリコン系と比べて製造コストが低く、軽量で柔軟性があり、低温プロセスで製造できる利点を持つ。一方で湿度や酸素、熱に対する耐久性が課題とされている。

BIPV(Building Integrated Photovoltaics / 建物一体型太陽光発電)
建物の外壁、窓ガラス、屋根材などの建材に太陽光発電機能を組み込む技術である。従来の後付け型パネルとは異なり、建築物の構造材や意匠材として機能しながら発電を行う。都市部での省スペース発電手段として注目されている。

電力変換効率
太陽電池が受け取った太陽光エネルギーのうち、どれだけを電気エネルギーに変換できるかを示す割合である。数値が高いほど同じ面積でより多くの発電が可能となる。市販のシリコン系太陽電池は20%超の効率を達成している。

可視光透過率
材料を通過する可視光の割合を示す指標である。透明太陽電池においては、発電性能と視認性を両立させるための重要なパラメータとなる。本研究では平均約35%の透過率を達成している。

3Dプリント(積層造形)
デジタルデータをもとに、材料を層状に積み重ねて立体物を造形する技術である。複雑な微細構造を精密に作成できるため、従来の製造方法では困難だった形状の実現が可能となる。

【参考リンク】

ヘブライ大学(The Hebrew University of Jerusalem)(外部)
イスラエルの総合大学。ナノサイエンス・ナノテクノロジーセンターを擁し、本研究のMagdassi教授とEtgar教授が所属する。

Royal Society of Chemistry – EES Solar(外部)
英国王立化学会が発行する太陽エネルギー研究に特化した学術誌。ペロブスカイト太陽電池などの最新研究成果を掲載。

【参考記事】

Semitransparent color tunable perovskite solar cells with 3D pillar structure(外部)
学術誌EES Solarの原著論文。発電効率9.2%、透過率35%、500回曲げ試験後も性能90%維持のデータを掲載。

A new 3D-printed solar cell that’s transparent and color-tunable(外部)
EurekAlert!のプレスリリース。溶媒フリーの無毒材料を使用した環境配慮型製造プロセスと建築物応用を解説。

Building Integrated Photovoltaic Market Size, Share Report(外部)
Fortune Business Insightsの市場調査。BIPV市場が2026年に283億ドル、2034年に859億ドル規模との予測。

Researchers develop inkjet-printed flexible semitransparent solar cells(外部)
ペロブスカイト専門サイト。インクジェット印刷と3Dプリント技術、500回曲げ試験後の耐久性を詳述。

What Are the Main Challenges to the Commercialization of Perovskite Solar Cells(外部)
ペロブスカイト太陽電池の商業化課題を解説。湿度・酸素・熱への脆弱性、長期安定性の欠如を指摘。

Building Integrated Photovoltaics (BIPV) Market – Global Forecast(外部)
Research and Marketsの世界市場予測。既存建物への後付け需要が市場成長を牽引すると分析。

【編集部後記】

オフィスビルや自宅の窓ガラスが発電装置になる未来を、皆さんはどう捉えますか。今回の研究で興味深いのは、発電性能だけでなく「色」や「透明度」まで選べる点です。建築デザインと再生可能エネルギーが対立するのではなく、融合していく可能性を感じます。

都市部では屋上スペースが限られ、従来型の太陽光パネル設置は困難でした。しかし窓やファサードが発電面になれば、エネルギー自給の選択肢は大きく広がるはずです。皆さんの街では、こうした技術をどう活用できそうでしょうか。一緒に考えてみませんか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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