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Tether、国連薬物犯罪事務所と提携──アフリカ6カ国で人身売買被害者支援とブロックチェーン教育を展開

Tether、国連薬物犯罪事務所と提携──アフリカ6カ国で人身売買被害者支援とブロックチェーン教育を展開 - innovaTopia - (イノベトピア)

Tetherは2026年1月9日、国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)との共同イニシアチブを発表した。アフリカは第3位の成長速度を誇る暗号資産地域として台頭しているが、デジタル資産詐欺や不正行為に対して脆弱になっている。最近のインターポール作戦では、アフリカ全域で2億6,000万ドルの不正な暗号資産および法定通貨が発見された。

この協力を通じて、TetherはUNODCのアフリカ2030年戦略ビジョンを支援する。具体的なプロジェクトとして、セネガルでは若者向け公共サイバーセキュリティ教育プログラムを実施し、Tetherとルガーノ市の協力によるプランB財団が関与する。アフリカプロジェクトでは、セネガル、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、マラウイ、エチオピア、ウガンダで人身売買被害者を支援する市民社会組織に資金提供を行う。

パプアニューギニアでは、パプアニューギニア大学とソロモン諸島大学と協力し、金融包摂とデジタル資産詐欺防止に関する学生コンペティションを実施する。

From: 文献リンクTether and the United Nations Join Forces to Safeguard Africa’s Digital Economy – Tether.io

【編集部解説】

ステーブルコイン最大手のTetherが国連機関と手を組んだというニュースは、一見すると意外な組み合わせに映るかもしれません。Tetherは過去に準備金の透明性をめぐって米国の規制当局から厳しい監視を受けてきた企業です。そうした背景を持つ企業が、国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)という国際機関と協力関係を結ぶことには、ブロックチェーン技術が持つポテンシャルと、アフリカのデジタル経済が直面する課題の深刻さが表れています。

アフリカは暗号資産市場において第3位の成長速度を誇る地域ですが、同時にサイバー犯罪の脆弱性も高まっています。2025年7月から9月にかけて実施されたインターポールの「カタリスト作戦」では、アフリカ全域で2億6,000万ドルの不正資金が発見され、83人が逮捕されました。テロ資金供与、詐欺、マネーロンダリング、暗号資産の不正使用など、犯罪の手口は複雑化しています。サブサハラアフリカでは人口の66%が銀行口座を持たない「アンバンクド」の状態にあり、この金融包摂の欠如が逆に暗号資産詐欺の温床となっているのです。

今回の協力で注目すべきは、セネガルの「新技術協定(New Deal Technologique)」との連携です。セネガルのFaye大統領は2025年2月にこの10年計画を発表し、2034年までにアフリカのデジタルサービス輸出国トップ3入りを目指しています。デジタル主権の確保、政府サービスの90%以上のデジタル化、GDPに占めるデジタル経済の割合を10%に引き上げるという野心的な目標を掲げています。Tetherとの協力は、この国家戦略の一環として位置づけられており、民間企業の技術力と国際機関の信頼性、そして国家の政策ビジョンが三位一体となった取り組みといえるでしょう。

興味深いのは、Plan B財団の関与です。この財団はTetherとスイスのルガーノ市が設立したもので、ビットコインとステーブルコインを日常生活に統合する実験的プロジェクトを推進してきました。ルガーノでは既に2,500以上の店舗でビットコインやTetherが使用可能になっており、この実践的なノウハウがアフリカの若者向けブートキャンププログラムに活かされます。単なる啓発活動にとどまらず、マイクログラント(少額助成金)やメンターシップを通じて参加者のプロジェクトを実際に育てていく仕組みは、持続可能な人材育成モデルとして評価できます。

一方で、懸念材料もあります。Tetherは欧州のMiCA規制への準拠を拒否するなど、規制対応において議論を呼んできました。透明性の欠如は依然として課題であり、今回のような公的機関との協力が「reputation washing(評判洗浄)」にならないか、慎重に見守る必要があります。また、人身売買被害者支援という人道的な目的は称賛に値しますが、ブロックチェーン技術がどのように具体的に被害者保護に寄与するのか、その実効性については今後の検証が求められます。

アフリカの暗号資産取引額は2025年に52%増加し2,050億ドルに達しました。この成長の背景には、インフレ対策や国境を超えた送金ニーズ、金融包摂の必要性があります。暗号資産は、銀行インフラが脆弱な地域における実用的な金融ツールとして機能する可能性を秘めています。しかし同時に、その匿名性や規制の不完全さが犯罪に悪用されるリスクも抱えているのです。今回のTetherとUNODCの協力は、この「両刃の剣」をいかに適切に扱うかという、デジタル時代の金融包摂における根本的な課題に取り組む試みといえるでしょう。

【用語解説】

ステーブルコイン
価格の安定性を目指して設計された暗号資産で、米ドルなどの法定通貨や金などの資産に価値が連動するよう設計されている。価格変動の激しいビットコインなどと異なり、決済や送金手段として実用性が高い。

UNODC(国際連合薬物犯罪事務所)
薬物犯罪、国際組織犯罪、テロリズム、汚職との闘いを主導する国連機関。サイバー犯罪対策も担当し、最近では国連サイバー犯罪条約の採択を支援した。

アンバンクド
銀行口座を持たない、または銀行サービスにアクセスできない人々を指す。サブサハラアフリカでは人口の66%がこの状態にあり、金融包摂が重要な課題となっている。

金融包摂
すべての人々が適切で手頃な金融サービスにアクセスできる状態を目指す概念。暗号資産は銀行インフラが脆弱な地域において金融包摂を実現する手段として期待されている。

MiCA規制
欧州連合が2023年に採択した暗号資産市場規制(Markets in Crypto-Assets Regulation)。ステーブルコイン発行企業に準備金の透明性や規制遵守を求めるが、Tetherは準拠を拒否している。

新技術協定(New Deal Technologique)
セネガルのFaye大統領が2025年2月に発表した10年計画。2034年までにアフリカのデジタルサービス輸出国トップ3入りを目指し、デジタル主権の確保や政府サービスの90%以上のデジタル化を掲げている。

【参考リンク】

Tether公式サイト(外部)
世界最大のステーブルコイン発行企業。USDT(米ドル連動型ステーブルコイン)の時価総額は1,400億ドルを超える。

Plan B Foundation(Plan ₿)(外部)
Tetherとスイスのルガーノ市が設立。ルガーノでは2,500以上の店舗で暗号資産決済が可能。

UNODC(国際連合薬物犯罪事務所)(外部)
薬物犯罪、国際組織犯罪、サイバー犯罪との闘いを主導する国連機関。世界各地に現地事務所を持つ。

【参考記事】

Sub-Saharan Africa Crypto Transactions Up 52% to $205B(外部)
サブサハラアフリカの暗号資産取引額は2025年に52%増加し2,050億ドルに達した。

Tether and UNODC Enhance Cybersecurity in Africa(外部)
TetherとUNODCの協力により、アフリカ6カ国でサイバーセキュリティ教育と被害者支援を展開。

Tether’s USDT Faces SEC Scrutiny Over Regulatory Compliance(外部)
Tetherは準備金の透明性をめぐって米国SECから厳しい監視を受け、規制対応で議論を呼んでいる。

【編集部後記】

過去に規制当局と対峙してきたTetherが国連機関と手を組むという展開は、ブロックチェーン技術が持つ複雑な側面を改めて浮き彫りにします。金融包摂を実現する可能性と、犯罪に悪用されるリスク。この両面をどうバランスさせていくのか、私たちも注視していきたいと思います。

アフリカで進む暗号資産の急速な普及は、日本にいる私たちが想像する以上に実用的なニーズに根ざしたものかもしれません。皆さんは、この取り組みがアフリカのデジタル経済にどのような変化をもたらすと思いますか?

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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