Bitcoin DeFiの最大の課題である「流動性断片化」に、エコシステム誕生の瞬間から対処する——。CitreaがMoonPay、M0と組んで発表した「ctUSD」は、従来のブリッジ依存型ステーブルコインとは一線を画す「Day Zero」戦略を採用しています。米国債裏付け、GENIUS Act準拠、そして49州での利用可能性を備えたこのステーブルコインは、Bitcoin金融エコシステムの新たな標準となるのでしょうか。
CitreaはMoonPay、M0と提携し、Bitcoinエコシステム向けのステーブルコイン「Citrea USD(ctUSD)」を発表した。ctUSDは1:1の米ドル建てステーブルコインであり、短期米国債と現金によって完全に裏付けられる。
M0のプラットフォームを基盤とし、MoonPayが発行する。GENIUS Actガイドラインに沿って設計され、米国(ニューヨーク州を除く)および160カ国以上(カナダとEEAを除く)で利用可能である。MoonPayは米国49州でマネートランスミッターライセンスを保有し、欧州ではMiCA認可、英国ではFCA登録を受けている。
ctUSDはIronによるバーチャルアカウントに対応し、ACHやWireによる法定通貨の自動変換が可能である。CitreaはFounders Fund、Galaxy、Maven 11、Delphi Digital、エリック・ヴーリーズ、バラジ・スリニヴァサンらの投資家から支援を受けている。
From:
Introducing Citrea USD (ctUSD): The Native Stablecoin for Bitcoin

【編集部解説】
今回のctUSD発表は、Bitcoinエコシステムにおける構造的な課題に対する先手となる取り組みです。特に注目すべきは「Day Zero」という表現に込められた戦略性にあります。
Bitcoinのレイヤー2は現在急速に増加しており、Signal21 Analyticsのデータによれば21のプロジェクトが進行中です。しかし、各L2が異なるステーブルコインのブリッジ版を使用すると、流動性が分散し、DEXでの取引スリッページが拡大し、レンディング市場の資本効率が低下します。さらに重要なのは、単一のブリッジハッキングが特定のステーブルコインのデペッグを引き起こし、相互接続されたDeFiエコシステム全体に連鎖的な清算をもたらすリスクです。
CitreaはBitcoin初のzkEVMレイヤー2として、Ethereum Virtual Machineと互換性を持ちながらゼロ知識証明技術を活用します。複数のトランザクションをバッチ処理してzkEVMで検証し、その証明をBitcoinメインチェーンに提出することで、セキュリティを維持しながらスケーラビリティを実現します。この技術基盤の上に、エコシステムローンチと同時にネイティブステーブルコインを導入することで、流動性の断片化を未然に防ぐ設計となっています。
規制面での先進性も見逃せません。MoonPayは2025年11月にニューヨーク州の信託憲章を取得し、BitLicenseと合わせて保有することで、Coinbase、Ripple Labsと同等の規制フットプリントを確立しました。ctUSDは2025年に成立したGENIUS Act(米国初の主要ステーブルコイン規制法)のガイドラインに沿って設計されています。同法は、ステーブルコイン発行者に対して1:1の準備金保有、短期米国債または同等の流動資産による裏付け、月次の準備金開示を義務付けており、ctUSDはこれらの要件を満たす構造となっています。
M0のプラットフォームは、発行、アプリケーションロジック、流動性を単一のプログラム可能なシステムに統合する「ユニバーサルステーブルコインプラットフォーム」として機能します。これにより、ctUSDは将来的に他のチェーンへの拡張や、追加の統合を柔軟に行える設計となっています。
Iron(MoonPay傘下)によるvIBANサポートは、従来の銀行システムとの橋渡しとして重要です。ACHやWire送金で送られた法定通貨が自動的にctUSDに変換されてCitrea上で決済される仕組みは、機関投資家や企業ユーザーにとって参入障壁を大きく下げる要素となります。
一方で、潜在的なリスクも存在します。準備金がMoonPayによって管理される集中型の構造であること、ニューヨーク州やカナダ、EEA諸国では利用できないこと、そして新しいL2プラットフォームとしてのセキュリティ実績がまだ蓄積されていない点には注意が必要です。
Citreaの投資家陣にはFounders Fund、Galaxy、Maven 11、Delphi Digital、そしてBitcoin支持者として知られるエリック・ヴーリーズやバラジ・スリニヴァサンが名を連ねており、Bitcoin金融エコシステムの拡大に向けた業界の期待値の高さが伺えます。
【用語解説】
ステーブルコイン
価格の安定性を目的とした暗号資産で、多くは米ドルなどの法定通貨に1:1でペッグされる。準備金として米国債や現金を保有することで価値を担保する仕組みが一般的である。
zkEVM
ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)技術を活用したEthereum Virtual Machine互換のレイヤー2ソリューション。複数のトランザクションをバッチ処理し、その正当性をゼロ知識証明で検証することで、プライバシーを保ちながらスケーラビリティを実現する。
レイヤー2(L2)
ブロックチェーンのメインチェーン(レイヤー1)上で動作するセカンダリーなプロトコルやネットワーク。トランザクションをオフチェーンで処理し、最終的な結果のみをメインチェーンに記録することで、スケーラビリティとコスト効率を向上させる。
DeFi(分散型金融)
Decentralized Financeの略。ブロックチェーン上でスマートコントラクトを用いて構築される金融サービスの総称。仲介者なしで貸借、取引、資産運用などが可能となる。
デペッグ
ステーブルコインが本来ペッグされているはずの法定通貨との価格連動を失い、価値が乖離する現象。準備金不足、流動性危機、市場の信頼喪失などが原因となる。
マネートランスミッターライセンス(MTL)
米国において送金業務を行う企業に対して州ごとに要求される免許。資金洗浄防止、消費者保護、準備金要件などの規制遵守が求められる。
MiCA
Markets in Crypto-Assets Regulationの略で、EU域内における暗号資産市場の包括的な規制枠組み。ステーブルコイン発行者やサービスプロバイダーに対して透明性とライセンス取得を義務付ける。
vIBAN(バーチャルIBAN)
仮想的な国際銀行口座番号。ユーザーごとに専用のIBANを発行することで、銀行送金と暗号資産の橋渡しを実現する。ACH(米国自動決済機関)やWire送金に対応する。
ゼロ知識証明
ある情報が真実であることを、その情報自体を明かすことなく証明する暗号技術。プライバシーを保ちながらトランザクションの正当性を検証できるため、スケーラビリティソリューションで活用される。
【参考リンク】
Citrea公式サイト(外部)
Bitcoin初のzkEVMレイヤー2プラットフォーム。BitcoinにEVM互換性とスマートコントラクト機能をもたらす。
MoonPay公式サイト(外部)
2019年設立の暗号資産決済プラットフォーム。180カ国で3000万人以上のユーザーを抱える。
M0公式サイト(外部)
ユニバーサルステーブルコインプラットフォーム。アプリケーション固有のデジタルドル発行を支援する。
Iron by MoonPay(外部)
MoonPay傘下のフィンテック企業。vIBAN発行サービスで銀行送金と暗号資産を橋渡しする。
GENIUS Act(米国議会)(外部)
2025年成立の米国初の主要ステーブルコイン規制法。発行者に1:1準備金保有と月次開示を義務付ける。
【参考記事】
The GENIUS Act of 2025 Stablecoin Legislation Adopted in the US(外部)
GENIUS Actの詳細な法的分析。ステーブルコイン発行者に対する準備金保有と月次開示義務を解説。
MoonPay Secures NY Trust Charter, Expands Regulated Services(外部)
MoonPayの2025年11月ニューヨーク州信託憲章取得ニュース。Coinbase等と同等の規制体制を確立。
Liquidity fragmentation on Bitcoin is a necessary issue to reach scalability(外部)
Bitcoinレイヤー2における流動性断片化の課題を詳述。21のL2プロジェクトが進行中と報告。
What is Citrea? Understanding Bitcoin’s First ZK-Rollup(外部)
CitreaのzkEVM技術の詳細解説。トランザクションのバッチ処理と証明提出の仕組みを説明。
【編集部後記】
Bitcoinのレイヤー2が次々と立ち上がる今、流動性の断片化という問題は避けられないのでしょうか。今回のctUSDは「Day Zero」戦略、つまりエコシステムの初日から統一されたステーブルコインを導入するアプローチです。一方で、準備金管理の中央集権性や利用できない地域があることも事実です。
皆さんはどう考えますか?規制準拠と分散性、どちらを優先すべきでしょうか。それともその両立こそが次世代の金融インフラに求められる姿なのでしょうか。Bitcoin DeFiの未来について、ぜひ一緒に考えてみませんか。




発表|MoonPay発行のBitcoin向けステーブルコイン、GENIUS-Act準拠で160カ国展.jpg)






























