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2月4日【今日は何の日?】ワールドキャンサーデー|がんを「病名」ではなく「経験」として捉える日

「人中心」の視点

毎年2月4日は、国際対がん連合(UICC)が主導するワールドキャンサーデーです。がんへの意識向上や予防、支援を社会に広げる枠組みとして位置づけられてきました。
2025年から2027年のキャンペーンテーマは「United by Unique」です。がんを一つの病名として扱うのではなく、経験の固有性を中心に据えるという意図が示されています。

治療の前後にある「時間」が、医療の輪郭を決める

がん医療の話題は、新しい薬や治療法に焦点が当たりがちです。ただ、現場の手触りを形づくるのは、治療そのものと同じくらい「前後の時間」でもあります。検査結果を待つ期間、追加検査が重なる期間、説明を受けて選択を固めるまでの期間。そこでは、仕事も家事も人間関係も続いていて、医療は生活の上に載っています。

「人中心のがん治療」という言葉を現実に引き寄せるなら、問われるのは治療成績だけではありません。診断までの待ち時間が短くなるか、治療の見通しが言葉として共有されるか、選択肢が増えたときに意思決定が成立するか、そして治療期間中に生活がどれだけ保たれるか。医療の質は、病変の制御と同時に、人生の運用をどう支えるかにも表れます。

テクノロジーの現在地は「見つける」「確かめる」「組み立てる」

ここ数年、がん領域のテクノロジーは、治療を強くすることだけでなく、医療のプロセス全体を組み替える方向で存在感を増しています。現在地は大きく三つの動きとして整理できます。

まず「見つける」です。象徴的なのが検診の領域で、スウェーデンで10万人規模を対象にしたランダム化比較試験では、AIを組み込んだ乳がん検診が、後になって見つかる診断の割合を下げたと報告されています。読影の負担軽減も含め、AIを「置き換え」ではなく「支援」として組み込む設計が、現実的な導入像として語られ始めました。

同じ「見つける」でも、臓器や状況によって課題は異なります。英国では、肺がんを疑う患者でAI解析とロボット支援の生検を組み合わせ、短い時間でより確かな診断に近づけることを狙うパイロットが始まっています。小さな結節を拾い、侵襲を抑えながら組織を取りに行くという発想は、早期発見が進むほど重要になっていきます。

次に「確かめる」です。がん治療では病理診断が要になりますが、ここで進んでいるのがデジタル病理です。米国では、病理標本を高解像度でスキャンして診断に用いる仕組みが、FDAのクリアランスを得ながら広がってきました。例えばRocheのデジタル病理システムは追加の510(k)クリアランスが公表されており、ワークフローを「ガラス標本中心」から「画像中心」へ移す基盤が整備されつつあります。

デジタル化は、AIの導入以前に「遠隔での共同読影」「症例の共有」「記録と再現性」といった人中心の要請にも直結します。診断の速度と均てん化は、患者にとって待つ時間の短縮として現れ得ます。

そして「組み立てる」です。ここには治療選択の個別化が入ります。ゲノム情報やバイオマーカーだけでなく、血液中の腫瘍由来DNA(ctDNA)を用いたリキッドバイオプシーが、再発リスクの評価や治療後のモニタリングの文脈で議論を深めています。固形がんにおける微小残存病変(MRD)検出は、画像で見える前の段階を扱う可能性がある一方で、感度や臨床運用の設計が課題として整理されています。

「組み立てる」は、最適化の言い換えでもありますが、医療の現場では、選択肢が増えるほど説明は難しくなり、納得の形成に時間がかかる局面も増えます。技術はその複雑さを増幅することも、整理することもあります。

進歩の陰に残るのは、説明とアクセスの問題

技術が進むほど、別の問いが濃くなります。第一に説明です。精度が上がっても、判断の根拠が共有されにくいと、意思決定は成立しにくくなります。第二にアクセスです。先端の検査や治療は、地域や施設、費用、情報の届き方によって到達可能性が変わります。「個別化」が、社会の段差をそのまま反映してしまうリスクもあります。

ワールドキャンサーデーの「United by Unique」は、医療が高度化する時代に、中心に置くものを見失わないための言葉として読めます。テクノロジーの価値は、性能の高さだけで決まりません。診断までの時間、選択の成立、生活の連続性という形で現れてはじめて、「人中心」の医療に接続していきます。

Information

【用語解説】

均てん化(均霑化)
地域や病院による差を小さくして、医療などをできるだけ同じ水準で受けられるようにすること。

【参考リンク】

ワールドキャンサーデー2026 UNITED BY UNIQUE|UICC日本委員会(外部)
ワールドキャンサーデーの日本公式サイト。ライトアップ(Light Up the World)や関連イベント、キャンペーン情報などをまとめた特設サイト。

UNITED BY UNIQUE ワールドキャンサーデー2026|国立がん研究センター(外部)
国立がん研究センターによるワールドキャンサーデー2026のページ。理事長・病院長などのメッセージやテーマ解説を掲載。

公益財団法人がん研究会|がん研究会(外部)
がん研究会(JFCR)の公式サイト。がん研有明病院や研究部門の情報、ニュースリリース、患者さん向け案内などをまとめている。

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りょうとく
趣味でデジタルイラスト、Live2Dモデル、3Dモデル、動画編集などの経験があります。最近は文章生成AIからインスピレーションを得るために毎日のようにネタを投げかけたり、画像生成AIをお絵描きに都合よく利用できないかを模索中。AIがどれだけ人の生活を豊かにするかに期待しながら、その未来のために人が守らなけらばならない法律や倫理、AI時代の創作の在り方に注目しています。

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