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そらいいな、処方薬のドローン配送商用化を実現 五島市の高齢者施設向けに全国初

過疎地の高齢者施設で、急に必要になった処方薬をどう届けるか――この切実な課題に、ドローンが実用的な解決策を示した。長崎県五島市で始まった日本初の商用処方薬配送サービスは、実証実験ではなく、事業として成立する持続可能なモデル。テクノロジーが医療インフラを再構築する時代が、静かに始まっている。


そらいいな株式会社は2026年2月3日、長崎県五島市福江島において処方薬のドローン配送の商用化を実現したと発表した。2025年11月より、玉之浦地区の特別養護老人ホーム「たまんなゆうゆう」向けに、患者から配送料を徴収する形でサービスを開始している。

米国Zipline社製の固定翼ドローンを使用し、陸路では60分かかる距離を25分で飛行可能。施設スタッフの移動時間を往復約2時間から約20分へ短縮する。オンライン服薬指導と組み合わせた運用フローを確立し、そらいいなが施設や薬局から連絡を受けた後、最短約60分で処方薬の受け取りが可能になった。

同社は2022年5月からドローン配送事業を開始しており、これまでに3,400回、310,000km超の飛行実績を持つ。今後は福江島内の高齢者施設や各地域、二次離島住民への展開を検討している。

From: 文献リンク「処方薬」のドローン配送商用化を実現

【編集部解説】

今回の取り組みは、ドローン配送が実証実験の段階を超え、本格的な商用サービスとして社会実装されたという点で画期的です。これまで日本各地で行われてきたドローン配送の多くは、実証実験や補助金を活用した試験的な取り組みでしたが、そらいいなは患者から配送料を徴収する持続可能なビジネスモデルを構築しました。

そらいいなが活用しているのは、米国Zipline社の固定翼ドローン技術です。Zipline社は2016年にルワンダで医療用医薬品の配送を開始し、現在では世界9カ国で事業を展開しています。2024年4月時点で100万回以上の商用配送実績を持ち、7,000万マイル以上の自律飛行を達成している世界最大のドローン配送企業です。

同社のドローンは翼長約3.3メートルの固定翼型で、最大1.75キログラムの荷物を搭載可能。電気カタパルトで射出され、時速約100キロメートル以上で飛行し、目的地上空で荷物をパラシュートで投下します。帰還時は航空母艦の着艦のように、尾部のフックでアレスティングギアをキャッチして着陸するという独特の方式を採用しています。

五島市での取り組みは、離島や過疎地が直面する深刻な医療アクセスの課題に対する実践的な解決策です。高齢化により医療機関の統廃合が進み、移動手段も減少する中、医療・介護現場の負担は増大しています。特に急を要する処方薬の配送では、施設スタッフが片道1時間かけて薬局まで車で往復する必要があり、業務への支障は無視できないものでした。

ドローン配送の導入により、この課題が劇的に改善されます。陸路では往復2時間かかる移動が約20分に短縮され、施設スタッフは本来の業務に集中できるようになります。患者にとっても、必要な薬を迅速に受け取れることで治療の質が向上します。

技術的な観点からは、現在の運用はレベル3飛行(無人地帯での目視外飛行)で行われています。今後、レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)への移行が進めば、施設の軒先や患者宅への直接配送も可能になります。実際、2025年2月には五島市玉之浦地区でレベル4飛行による処方薬配送の実証実験が行われ、技術的な実現可能性が確認されています。

今回の商用化は、日本のドローン物流が新たな段階に入ったことを示す重要なマイルストーンです。2022年12月のレベル4飛行解禁を受け、規制環境も整いつつあります。五島市での成功モデルが、全国の離島や過疎地に横展開されれば、医療格差の解消に大きく貢献する可能性があります。

【用語解説】

レベル3飛行
無人地帯における目視外飛行。ドローンを操縦者の視界外で飛行させるが、飛行経路は人がいない場所に限定される。

レベル4飛行
有人地帯における目視外飛行。人がいる場所の上空でもドローンを目視外で飛行させることができ、住宅街や市街地での配送が可能になる。2022年12月に日本で解禁された。

固定翼ドローン
飛行機のように翼で揚力を得て飛行するドローン。マルチコプター型に比べて長距離飛行や高速飛行が可能で、エネルギー効率に優れる。

オンライン服薬指導
薬剤師がビデオ通話などのオンライン手段を通じて患者に服薬指導を行うこと。2020年9月から恒久化された制度。

【参考リンク】

そらいいな株式会社(外部)
長崎県五島市を拠点にドローン物流サービスを展開する豊田通商の子会社。2021年4月設立。

Zipline(外部)
米国の自律型ドローン配送企業。2016年からルワンダで医療用医薬品の配送を開始し、世界9カ国で事業を展開。

社会福祉法人明和会 たまんなゆうゆう(外部)
長崎県五島市玉之浦町に所在する特別養護老人ホーム。1998年設立。

【参考記事】

九州初、ドローンのレベル4飛行による処方薬の配送実証を実施(外部)
豊田通商とそらいいなが2025年2月10日に五島市玉之浦地区で実施したレベル4飛行実証実験について報告

長崎県五島列島で医療用医薬品のドローン配送事業を開始(外部)
2022年4月21日、そらいいなの発着拠点が五島市福江島に完成し竣工式を実施。Zipline社の技術を自社以外の企業に提供する初のケース

豊田通商によってジップラインのドローンが本格参入(外部)
Zipline社の固定翼ドローンの詳細仕様。翼長約3.3メートル、ペイロード1.75キログラム、往復飛行距離約160キロメートル

日本初!ドローンのレベル4飛行とオンライン診療を組み合わせた離島遠隔医療(外部)
長崎大学による2025年2月10日の実証試験報告。内閣府の「先端的サービスの開発・構築及び規制・制度改革に関する調査事業」の一環

Zipline makes 1,000,000 commercial autonomous drone deliveries(外部)
2024年4月22日時点でZipline社が世界初の100万回配送達成を発表。電気ドローンで75万ガロン以上のガソリン削減に相当

五島列島で広域ドローン物流網の実証、事業化のため「そらいいな」と連携協定(外部)
2022年7月21日、長崎大学が豊田通商とそらいいなと連携協定を締結。オンライン診療・服薬指導と組み合わせた離島・へき地医療支援を推進

【編集部後記】

過疎地や離島における医療アクセスの課題は、日本全体が直面する深刻な問題です。今回の商用化は、技術が社会課題の解決に実際に貢献できることを示す好例といえるでしょう。ドローン配送が実験段階を脱し、持続可能なビジネスモデルとして成立することが証明されたことは、同様の課題を抱える他の地域にとっても大きな希望となります。今後、この取り組みがどのように全国に広がっていくのか、そして私たちの生活にどのような変化をもたらすのか、注目していきたいですね。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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