通勤中に聴いていたオーディオブックの続きを、帰宅後に紙の本でそのまま読める——そんな夢のような体験が現実になります。Spotifyが発表した「Page Match」は、スマホでページをスキャンするだけで物理書籍とオーディオブックを瞬時に同期させる、業界初の革新的技術です。
Spotifyは2026年2月5日、2つの新機能を発表した。1つ目はBookshop.orgとの提携で、2026年春後半から米国と英国のユーザーがSpotifyアプリを通じて物理的な本を購入できるようになる。Bookshop.orgは独立系書店と読者をつなぐ組織である。2つ目はPage Matchという業界初の機能で、物理書籍または電子書籍とオーディオブック版をシームレスに切り替えられる。ユーザーはカメラで本のページをスキャンすることで、オーディオブックの該当箇所を見つけることができる。
Page Matchは2月末までにiOSとAndroidで、ほとんどの英語タイトルで利用可能となる。
Spotifyのオーディオブックグローバルヘッドであるオーウェン・スミス、Bookshop.org創設者兼CEOのアンディ・ハンター、著者のハーラン・コーベンがコメントを寄せている。
【編集部解説】
Spotifyのこの発表は、単なる機能追加ではなく、読書体験そのものを再定義する試みと言えます。特に注目すべきは、OCR(光学文字認識)技術を活用したPage Match機能の実装です。スマートフォンのカメラで紙のページをスキャンするだけで、オーディオブックの該当箇所へ瞬時にジャンプできる仕組みは、業界初の取り組みとなります。
この技術革新の背景には、読書習慣の多様化があります。通勤中はオーディオブック、自宅では紙の本といった使い分けをする読者が増えており、フォーマット間の断絶が読書体験を妨げていました。Page Matchはこの課題を解決し、読者がコンテキストを失うことなくシームレスに移行できる環境を実現します。
出版業界の観点からも、この動きは重要な意味を持ちます。物理書籍は依然として出版収益の約73%を占めており、デジタルと物理の両輪で読者にアプローチできる仕組みは、業界全体の成長につながる可能性があります。実際、Spotifyはオーディオブック導入後、新規リスナーが36%増加し、リスニング時間も37%増加したと報告しています。
Bookshop.orgとの提携は、プラットフォーム化が進むデジタル経済において、地域の独立書店を支援する稀有な事例です。Amazon一強の構図に対するオルタナティブとして、Spotifyの規模とリーチ力が独立書店のエコシステムを強化する可能性があります。
技術的な側面では、Page MatchがOCRベースであるため、インターネット接続が必須となる点に留意が必要です。オフライン環境では機能しないため、通信環境が不安定な場所での利用には制約があります。また、現時点では英語タイトルのみの対応となっており、多言語展開がいつ実現するかが今後の焦点となるでしょう。
Spotifyが音楽ストリーミングから総合的な「オーディオプラットフォーム」へと進化を遂げる中で、この施策は読書という行為を「場所やフォーマットに縛られない体験」へと変容させる一歩と言えます。50万タイトルを超える英語オーディオブックライブラリを擁するSpotifyが、物理書籍販売にも参入することで、読書エコシステム全体に与える影響は計り知れません。
【用語解説】
Page Match
Spotifyが2026年2月に発表した業界初の機能。物理書籍や電子書籍のページをスマートフォンのカメラでスキャンすることで、オーディオブックの対応箇所を自動的に検出し、シームレスに切り替えられる。OCR技術を活用しており、読書とリスニングの境界を取り払う革新的な仕組みである。
OCR(光学文字認識)
Optical Character Recognitionの略。印刷された文字や手書き文字をカメラやスキャナーで読み取り、コンピュータが編集可能なデジタルテキストデータに変換する技術。Page Match機能では、紙の本のページをスキャンしてテキストを認識し、オーディオブックの該当箇所を特定するために使用されている。
独立系書店(インディー書店)
大手チェーンや企業グループに属さず、個人や小規模経営者が運営する書店。地域コミュニティに根ざした品揃えや接客が特徴で、文化的多様性を支える存在とされる。Amazonなどの巨大プラットフォームとの競争にさらされており、Bookshop.orgのような支援の仕組みが注目されている。
【参考リンク】
Spotify Audiobooks Hub(外部)
50万タイトル以上の英語オーディオブックを提供。Premiumプランでは月15時間まで無料で聴ける専用ページ。
Bookshop.org(外部)
独立系書店を支援するオンライン書店プラットフォーム。購入の一部が地域の独立書店に分配される仕組みを採用。
【参考記事】
Spotify announces ‘Page Match’ feature that syncs physical books and audiobooks(外部)
OCRの活用方法と、物理書籍が出版収益の73%を占めるという統計データを含む技術解説記事。
Spotify to let users buy physical books on app through Bookshop.org partnership(外部)
新規リスナー36%増、リスニング時間37%増という具体的数値データと、50万タイトル規模を報じるロイター記事。
Spotify is partnering with Bookshop.org to sell physical books(外部)
Spotifyのオーディオプラットフォーム戦略と独立書店支援の社会的意義を分析したThe Verge記事。
Spotify’s Page Match Lets You Swap Between a Book and the Audiobook(外部)
英語タイトルのみ対応やインターネット接続必須という技術的制限について指摘するCNET記事。
【編集部後記】
みなさんは、通勤中にオーディオブックで聴いていた物語の続きを、帰宅後に紙の本でゆっくり読みたいと思ったことはありませんか?あるいは、その逆も。私自身、場所や時間帯によって「読みたい気分」と「聴きたい気分」が変わることがよくあります。
Page Matchのような技術は、私たちの読書スタイルの選択肢を広げてくれます。同時に、独立書店を支援する仕組みとデジタルプラットフォームが手を結ぶ姿も興味深いところです。みなさんなら、この技術をどんな場面で使ってみたいですか?読書体験の未来について、一緒に考えていければと思います。






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