Cyberhaven Labsは2026年2月5日、2026 AI Adoption & Risk Reportを発表した。レポートはGenerative AI SaaSアプリケーション、エンドポイントAIアプリケーション、AIエージェントに関する数十億のデータ移動を分析した。早期導入者組織の上位1%は300以上のGenAIツールを使用する一方、慎重な企業は15未満のツールを採用している。
最も使用されている上位100のGenAI SaaSアプリケーションの82%が「中」「高」または「重大」リスクに分類される。ChatGPT使用の32.3%、Gemini使用の24.9%が個人アカウントを通じて発生し、AIツールへのデータ移動の39.7%に機密データが含まれる。
AI導入をリードする企業では開発者の約90%がコーディングアシスタントを使用するが、典型的な組織では50%、保守的な組織では6%にとどまる。フロンティア企業の開発者は11.5倍高い使用率を示し、2025年後半にはコーディングアシスタント使用者の30%が少なくとも2つのツールを使用した。
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As Enterprise AI Use Deepens, New Research Highlights the Urgent Need for Data Governance
【編集部解説】
このレポートが浮き彫りにするのは、企業のAI導入における「二極化」という深刻な現実です。222社のデータに基づく分析は、早期導入者の上位1%が300以上のGenAIツールを活用する一方、慎重な企業は15未満に留まるという極端な格差を示しています。
特に注目すべきは「シャドウAI」の蔓延です。ChatGPT使用の32.3%、Gemini使用の24.9%が個人アカウントを通じて行われているという数字は、企業のガバナンスが実態に追いついていない証左といえます。従業員が業務データを個人アカウントのAIツールに入力すれば、そのデータは企業の管理外に置かれ、場合によっては訓練データとして公開モデルに組み込まれるリスクすらあります。
さらに深刻なのは、AIツールへのデータ移動の39.7%に機密データが含まれているという事実です。従業員は平均して3日に1回、機密データをAIツールに入力しています。これは単なる利便性追求の結果ではなく、AIが業務の中核に組み込まれつつある証拠でもあります。
コーディングアシスタントの普及状況も興味深い示唆を与えます。先進企業では開発者の約90%が使用する一方、保守的な組織では6%に過ぎません。この11.5倍という差は、単なる採用率の違いを超え、組織の技術的な進化速度そのものを表しています。Stack OverflowやJetBrainsの調査でも、2025年には全世界の開発者の84%がAIツールを使用または使用を計画しているとされており、この波に乗れない組織は競争力を急速に失う可能性があります。
一方で、スタンフォード大学の研究が示すように、22-25歳のソフトウェア開発者の雇用が2022年から2025年にかけて約20%減少したという事実は、AI導入の社会的影響を物語っています。技術の進化が雇用市場に与える影響は、もはや理論ではなく現実となっています。
このレポートが提起する本質的な問いは「どうやってAIを制御するか」ではなく「どうやってAIの価値を損なわずにリスクを管理するか」です。Microsoftの2026 Data Security Indexが示すように、GenAIは既に32%のデータセキュリティインシデントに関与しています。しかし、だからといってAI利用を制限すれば、競争力を失うジレンマに陥ります。
EU AI Actの一般適用やアメリカ各州の規制が本格化する2026年は、企業のAIガバナンス能力が試される年になるでしょう。別の調査では、100%の組織がエージェンティックAIを導入計画に含めているものの、63%がそれを適切に制御できないと回答しています。このギャップこそが、Cyberhavenのようなデータセキュリティ企業が注目される理由です。
この状況は技術の民主化がもたらす必然的な混乱期といえます。重要なのは、この混乱を乗り越えた先に、人間とAIが協調する新しい働き方のモデルが生まれることです。そのためには、可視性・コンテキスト・制御という三つの要素を統合したアプローチが不可欠だと、レポートは示唆しています。
【用語解説】
GenAI(Generative AI / 生成AI)
テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを生成できる人工知能の総称。ChatGPT、Gemini、Claude、Midjourney、DALL-Eなどが代表例。大規模言語モデル(LLM)や拡散モデルなどの技術を基盤とする。
シャドウAI
企業のIT部門やセキュリティ部門の承認・管理を受けずに、従業員が個人的に使用するAIツールやサービスのこと。個人アカウントでChatGPTやGeminiを業務に使用するケースなどが該当する。企業はデータの流れを把握できず、機密情報漏洩のリスクが高まる。
DSPM(Data Security Posture Management / データセキュリティ態勢管理)
組織内のあらゆる場所に存在する機密データを発見、分類、監視し、そのリスクを評価・管理するためのセキュリティソリューション。クラウド、エンドポイント、SaaS、オンプレミス環境全体でデータの可視性を提供する。
AIエージェント / エージェンティックAI
人間の介入を最小限に抑えて、自律的にタスクを実行できるAIシステム。目標を与えられると、自ら計画を立て、ツールを使い、フィードバックから学習しながら複雑なワークフローを完遂する。次世代のAI活用形態として注目されている。
データ系譜(Data Lineage)
データがどこから来て、どこを経由し、どのように変換され、最終的にどこに保存されるかを追跡する仕組み。データのライフサイクル全体を可視化することで、データガバナンス、コンプライアンス、セキュリティ管理を強化できる。
【参考リンク】
2026 AI Adoption & Risk Report – Cyberhaven(外部)
Cyberhavenが発表した完全版レポート。222社の詳細な分析データとAI導入の実態が閲覧できる。
Cyberhaven – AI & Data Security Platform(外部)
Cyberhavenの統合AIデータセキュリティプラットフォームの詳細情報。DSPM、DLP、IRM、AIセキュリティを統合。
Microsoft Security Blog – AI Security Priorities 2026(外部)
Microsoftが提示する2026年のAIセキュリティ優先事項。アイデンティティとアクセス管理の重要性を解説。
【参考記事】
PRNewswire – Enterprise AI Use and Data Governance(外部)
Cyberhavenのプレスリリース完全版。Harvard Business Reviewとのウェビナー情報も掲載。
MIT Technology Review – AI Coding and Developer Impact(外部)
AIコーディングツールが開発者に与える影響を詳細に分析。生産性向上と課題の両面を考察。
Stack Overflow Developer Survey 2025 – AI Section(外部)
全世界の開発者を対象としたAI利用状況調査。信頼性や採用率の最新データを提供。
Microsoft Data Security Index 2026(外部)
MicrosoftによるAI導入とデータセキュリティの関係を分析した調査レポート。
2026 Data Security Forecast – Kiteworks(外部)
225社の調査に基づく2026年のAIガバナンス予測。エージェンティックAI制御の課題を指摘。
【編集部後記】
みなさんの職場では、AIツールをどのように使っていますか?ChatGPTやGeminiに業務の相談をする際、個人アカウントと企業アカウント、どちらを使っているでしょうか。このレポートが示す「3日に1回機密データを入力している」という数字は、もしかすると私たち自身の姿かもしれません。
便利さを追求するあまり、気づかないうちにリスクを生んでいる可能性があります。一方で、AIを避けていては競争力を失う時代でもあります。みなさんは、この「便利さ」と「安全性」のバランスを、どう取っていますか?ぜひ、ご自身の経験や考えを聞かせてください。






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