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ENIAQ、三井不動産で全社導入の対話型スライド生成AIを提供──1資料44分短縮、レイアウト崩れを防ぐ独自技術

ENIAQ、三井不動産で全社導入の対話型スライド生成AIを提供──1資料44分短縮、レイアウト崩れを防ぐ独自技術

ChatGPTでスライドを作ったものの、出力されたファイルを開いたら崩れていた──そんな経験をした人は少なくないだろう。東京大学発スタートアップENIAQが三井不動産と共同開発した「対話型スライド生成AI」は、この課題を独自技術で解決し、1資料44分の時短と全社導入という成果を生み出した。企業が本当に使えるAIの条件とは何か。


東京大学発スタートアップの株式会社ENIAQ(代表取締役:江口大志)は2026年2月5日、三井不動産株式会社と共同開発した「対話型スライド生成AI」を発表した。テキスト入力やPDF資料からPowerPoint形式の資料を自動生成し、スライドごとのレイアウト変更や文言修正を自然言語で指示できる。

文字の重なりやレイアウト崩れを抑制する独自の生成方式を研究開発し、プレビューどおりのレイアウトで.pptxファイルとして出力する。三井不動産社内ユーザーを対象とした利用後アンケートでは、実際の業務利用において1資料あたり平均44分の作成時間短縮が確認された。

本技術は三井不動産で全社展開に至っており、企業ごとの業務環境や運用要件に応じた柔軟なカスタマイズが可能である。閉域ネットワークやローカルLLMを前提とした環境にも対応する。

From: 文献リンク株式会社ENIAQ、三井不動産で全社導入のスライド生成AIを研究開発・提供、1資料あたり平均44分短縮

アイキャッチは株式会社 ENIAQ PRTIMESより引用

株式会社 ENIAQ PRTIMESより引用

【編集部解説】

生成AIによる資料作成支援ツールは数多く存在しますが、ENIAQの「対話型スライド生成AI」が三井不動産で全社導入に至った背景には、企業の実運用に耐えうる技術的突破があります。

最大の特徴は、生成AIで頻発する「レイアウト崩れ」「文字の重なり」といった実用上の問題を独自技術で解決した点です。ChatGPTなどの汎用AIでもスライド生成は可能ですが、出力されたファイルを開くとレイアウトが崩れている、といった経験をお持ちの方も多いでしょう。ENIAQは「プレビューどおりのレイアウト」で.pptxファイルを出力できる独自方式を開発し、この課題をクリアしました。

業務効率化の観点では、1資料あたり平均44分の短縮という数値が注目されます。プロのデザイナーによるスライド作成は1枚あたり30分〜3時間、平均60分程度を要するとされており、10枚程度のプレゼン資料なら10時間前後が一般的です。44分の短縮は一見控えめに見えますが、これは「試してみただけ」の利用を除外し、「実際の業務に利用する」目的での測定値である点が重要です。

企業のAI導入においてセキュリティは最大の障壁となっています。2025年の調査では、69%の組織がAIによるデータ漏洩を最大の懸念事項として挙げている一方、47%がAI固有のセキュリティ対策を持っていないという実態があります。ENIAQのシステムが閉域ネットワークやローカルLLMに対応し、企業ごとのテンプレートやシステム連携要件にも柔軟に対応できる点は、この課題への明確な回答と言えるでしょう。

三井不動産は2024年8月に「DX VISION 2030」を発表し、2030年までに社員の25%をDXビジネス人材に育成する方針を打ち出しています。生成AI活用もその重点施策の一つであり、今回の全社導入はこの戦略の具体的な成果と位置づけられます。

一方で、AI生成スライドの品質管理や、AIへの依存度が高まることによる人材のスキル低下といった懸念も存在します。三井不動産のユーザーからは「格段によくできたパワポ」という評価がある反面、最終的な品質担保は人間の目による確認が不可欠です。

東京大学発スタートアップとして2025年5月にはMicrosoft for Startups Founders Hubにも採択されているENIAQは、今後この技術を幅広い業務領域へ展開していく方針を示しています。エンタープライズAI市場において、日本発の技術がどこまで存在感を示せるか、注視すべき動きと言えるでしょう。

【用語解説】

対話型スライド生成AI
テキストやPDF資料を入力すると自動的にプレゼンテーション資料を生成し、さらに自然言語での指示によってスライドの修正や調整を対話形式で行えるAIシステムである。「4枚目のスライド、各KPIがもっと目立つようにして」といった口語的な指示で、レイアウトや内容を変更できる点が特徴だ。

閉域ネットワーク
インターネットから物理的・論理的に隔離された、企業や組織内部だけで利用できる専用ネットワークのことである。外部からのアクセスが遮断されているため、機密情報や重要データを扱う企業で採用されている。生成AIを導入する際、クラウドサービスへのデータ送信を避けたい企業にとって重要な要件となる。

ローカルLLM
Large Language Model(大規模言語モデル)を、クラウドではなく企業の自社サーバーや端末内で動作させる形態を指す。データが外部に送信されないため、情報漏洩リスクを最小限に抑えられる。処理速度やコストの面では課題があるが、セキュリティ要件が厳格な業界で注目されている。

.pptx
Microsoft PowerPointで作成されるプレゼンテーション資料の標準ファイル形式である。2007年以降のPowerPointで採用されており、スライド、画像、アニメーション、レイアウト情報などを含むXMLベースの圧縮ファイルだ。生成AIでスライドを作成する際、この形式で正確に出力できるかが実用性の鍵となる。

Microsoft for Startups Founders Hub
Microsoftが運営するスタートアップ支援プログラムである。Azureクレジット、技術サポート、ビジネスリソースなどを無償で提供し、革新的なスタートアップの成長を支援する。ENIAQは2025年5月に同プログラムに採択されている。

【参考リンク】

株式会社ENIAQ 公式サイト(外部)
東京大学発AIスタートアップ。職人技と多領域技術を統合し企業向けAIプロダクトを開発提供する。

三井不動産株式会社 ニュースリリース(外部)
ENIAQとの対話型スライド生成AI共同開発について2025年12月23日公開のプレスリリース。

三井不動産 DX VISION 2030(外部)
2024年8月発表のグループDX方針。2030年までに社員の25%をDXビジネス人材に育成する戦略。

【参考記事】

三井不動産が「対話型スライド生成AI」を全社的に導入(外部)
日本の企業向けITメディアによる報道。三井不動産の全社導入について詳細に伝えている。

Average Production Rates for Creating PowerPoint(外部)
プロのデザイナーによるPowerPointスライド作成時間は1枚あたり平均30分〜3時間と紹介。

How Long Does It Take To Make a Presentation?(外部)
プレゼンテーション制作には平均10時間程度必要とされ、企画・デザイン・修正の時間配分を解説。

Enterprise AI: Incapacitated Security(外部)
69%の組織がAIデータ漏洩を懸念、47%がAI固有のセキュリティ対策を持たないという2025年調査。

AI Security in Enterprise environments Part IV/VI(外部)
エンタープライズ環境におけるAIセキュリティ連載。閉域ネットワークでのAI運用の重要性を解説。

三井不動産がグループDX方針「DX VISION 2030」を発表(外部)
2024年8月5日発表の三井不動産DX戦略。2030年までの社員育成目標や生成AI活用の方向性を報道。

株式会社ENIAQがMicrosoft for Startups Founders Hubに採択(外部)
2025年5月20日の報道。ENIAQがMicrosoftスタートアップ支援プログラムに採択された背景を紹介。

【編集部後記】

プレゼン資料の作成に何時間も費やした経験は、誰もがお持ちではないでしょうか。ENIAQの事例は、生成AIが「使える道具」になるための条件を示しているように感じます。レイアウト崩れを防ぐ技術、閉域ネットワークへの対応、そして実際に44分の時短という具体的な成果。

みなさんの職場では、AIツールを導入する際にどんな障壁がありますか?セキュリティと利便性、品質と効率のバランスをどう取るか。この事例から見えてくる「企業でAIを使いこなす条件」について、ぜひ一緒に考えていきたいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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