WordPress.comは2026年2月5日、Anthropic社のAIアシスタントClaude向けの公式コネクターをリリースした。WordPressホストとして初の公式コネクターとなる。同社は数ヶ月前にMCPアクセスを導入し、AIエージェントが実際のWordPress.comサイトのコンテキストで動作できるようにした。
その後OAuth 2.1サポートを追加し、統合の安全性と認証の簡便性を向上させた。今回のコネクターはClaudeのコネクターディレクトリに登録され、WordPress.comユーザーは数回のクリックでClaudeをサイトに接続できる。利用は有料のWordPress.comプランのみで、Claudeには読み取り専用アクセスが付与される。ユーザーは過去30日間のトラフィック表示、コメント要約、更新されていない投稿の特定、トラフィックとエンゲージメントの分析などが可能になる。
From:
WordPress.com has a Claude Connector

【編集部解説】
今回のWordPress.comとClaudeの公式連携は、CMS(コンテンツマネジメントシステム)とAIの統合における重要な一歩です。背景にあるのは、Anthropicが2024年11月に発表したModel Context Protocol(MCP)という、AIモデルが外部ツールやデータソースと統合する方法を標準化するオープンスタンダードです。
MCPは、AIアシスタントが単なる対話型ツールから、実際のシステムと連携して動作する「コンテキストを持ったエージェント」へと進化するための基盤となる技術と言えるでしょう。従来、AIツールは毎回ユーザーが状況を説明し直す必要がありましたが、MCPによってAIは実際のデータソースに直接アクセスし、文脈を保持したまま作業を進められるようになります。
注目すべきは、今回のコネクターが「読み取り専用」に限定されている点です。これはセキュリティとデータ保護の観点から極めて重要な設計判断と言えます。AIによるコンテンツの自動作成や編集は魅力的に聞こえますが、誤った情報の公開や意図しない変更のリスクも伴います。WordPress.comは段階的なアプローチを採用し、まずは分析やインサイト抽出といった安全な用途から始めています。
ただし、TechCrunchの報道によれば、WordPress.comは将来的に「書き込みアクセス」をMCP統合に提供する計画を昨年表明しています。これが実現すれば、ユーザーは接続したチャットボットから直接編集作業を行えるようになるでしょう。しかし、その実装には慎重な権限管理とガバナンス設計が不可欠です。
今回の統合で特に興味深いのは、OAuth 2.1による認証とClaudeのコネクターディレクトリへの正式登録です。2025年7月に開始されたこのディレクトリは、NotionやCanva、Stripeなどの主要ツールとの統合を一元化し、ユーザーがワンクリックで接続できる仕組みを提供しています。WordPress.comがこのエコシステムに加わったことで、WordPress.comでホストされている多数のサイトがAIエージェントと連携可能になりました。
実用面では、サイト運営者は日常的な分析作業を大幅に効率化できます。例えば「エンゲージメントが低下している記事はどれか」「どのカテゴリーが最も読まれているか」といった質問に、Claudeが実際のサイトデータを基に即座に回答します。これまでダッシュボードを開いて手動で確認していた作業が、自然言語の対話で完結するのです。
ただし、利用には有料のWordPress.comプランが必要という点は留意すべきでしょう。これはMCP機能へのアクセス制限であり、無料ユーザーには提供されません。また、接続したアプリからのアクセスはいつでも取り消し可能で、ユーザーが完全にコントロールできる設計になっています。
長期的な視点では、この動きはWebサイト運営の在り方そのものを変える可能性を秘めています。AIエージェントが分析だけでなく、将来的にはコンテンツ作成、SEO最適化、パフォーマンス改善までを支援する時代が近づいているのです。ただし、その実現には技術的な進化だけでなく、倫理的配慮やセキュリティ基準の確立も並行して進める必要があります。
WordPress.comの今回の取り組みは、CMS業界全体に影響を与える先駆的な事例となるでしょう。他のホスティングサービスやCMSプロバイダーも、同様の統合を検討する契機になると予想されます。
【用語解説】
MCP(Model Context Protocol)
Anthropicが2024年11月に発表したオープンスタンダード。AIモデルが外部のツールやデータソースと統合するための標準プロトコルである。これによりAIアシスタントは実際のシステムに接続し、コンテキストを保持したまま作業できるようになる。
OAuth 2.1
認証とアクセス許可のための業界標準プロトコル。ユーザーがパスワードを共有することなく、第三者アプリケーションに自分のリソースへの安全なアクセスを許可できる仕組みである。
読み取り専用アクセス
データの閲覧は可能だが、作成、削除、更新などの変更操作はできない権限設定。セキュリティリスクを最小限に抑えながら、データ分析やインサイト抽出を可能にする。
AIエージェント
ユーザーの指示に基づいて自律的にタスクを実行するAIシステム。単なる対話だけでなく、外部ツールと連携して実際の作業を遂行できる。
コネクターディレクトリ
Claudeが提供する、信頼できる外部ツールとの統合を一元管理するプラットフォーム。2025年7月に開始され、明確に定義された権限を持つツールが登録されている。
【参考リンク】
WordPress.com公式サイト(外部)
世界最大級のCMSであるWordPressのホスティングサービス。今回Claude向けの公式コネクターを初めて提供したWordPressホストである。
Anthropic公式サイト(外部)
AIアシスタントClaudeを開発し、Model Context Protocol(MCP)を提唱しているAI研究企業のウェブサイト。
Claude Connectors Directory(外部)
Claudeと外部ツールを接続するための公式ディレクトリ。WordPress.comを含む信頼できるアプリケーションとワンクリックで統合可能。
WordPress.com MCP設定ページ(外部)
WordPress.comユーザーがMCP機能を有効化し、AIエージェントとの接続を管理するための設定ページ。有料プラン限定。
Model Context Protocol公式ドキュメント(外部)
AnthropicによるMCPの公式発表ページ。プロトコルの仕組み、技術仕様、利用例などが詳しく説明されている。
【参考動画】
【参考記事】
It just got easier for Claude to check in on your WordPress site(外部)
TechCrunchによる報道。WordPress.comとClaudeの統合について報じ、将来的な書き込みアクセスの提供計画にも言及している。
Introducing the Model Context Protocol(外部)
Anthropicが2024年11月に発表したMCPの公式紹介記事。AIモデルが外部ツールやデータソースと統合する標準プロトコルの概要を説明。
Model Context Protocol – Wikipedia(外部)
MCPの概要をまとめたWikipediaページ。プロトコルの歴史、技術仕様、業界での採用状況などが中立的な視点で記載されている。
【編集部後記】
WordPress.comの今回の取り組みは、私たちのコンテンツ制作やサイト運営の風景を大きく変える可能性を秘めています。読み取り専用から始まり、いずれ書き込みアクセスへと進化するこの流れは、AIがどこまでクリエイティブな領域に踏み込むべきか、という根本的な問いを投げかけているようにも感じます。
みなさんは、AIアシスタントに自分のサイトをどこまで任せたいと思いますか?効率化への期待と、人間の創造性を守りたいという思い。その間でどうバランスを取るべきか、一緒に考えていきたいテーマです。






がもたらす「アンテザード・ソサエティ」の衝撃-300x200.png)






























