2026年2月3日、アソビシステム株式会社と株式会社ミダスキャピタルは、推し活市場に特化したプラットフォーム事業を展開する株式会社アソビダスの設立を発表した。約1,384万人が参加し、市場規模3.5兆円に達する推し活市場において、AI技術でファンの「熱量」を「価値」に変えるという挑戦が始まる。
チケット、グッズEC、ファンクラブなど分断されたサービスをAIで統合し、ファン一人ひとりの行動データから最適な体験を提供する――日本発のプラットフォームは、MAU約1,200万人を誇る韓国Weverseの牙城に、「現場力」で挑む。
アソビシステム株式会社(代表取締役:中川悠介)と株式会社ミダスキャピタル(代表取締役:吉村英毅)は、推し活市場におけるプラットフォーム事業を展開する株式会社アソビダス(代表取締役:田村光紀、本社:東京都渋谷区)を共同で設立した。株式会社GENDA(代表取締役社長CEO:片岡尚)も出資に参加している。
アソビダスは2025年7月に設立され、資本金は1.5億円である。同社は事業者の収益最大化とAX(AI Transformation)を支援し、ファンクラブやECなどのファンビジネスコンテンツを展開する。導入事例として、大相撲・伊勢ヶ濱部屋やアソビシステム所属アーティストへの支援を開始している。今後はアイドル、アーティスト、2.5次元舞台・ミュージカル、VTuber、スポーツチーム、地域創生などの領域へ展開を加速させる。
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アソビシステムとミダスキャピタル、 「熱量」を「価値」に変える推し活AXカンパニー「株式会社アソビダス」を設立



【編集部解説】
推し活市場は、もはや若者の趣味の枠を超えた巨大産業です。2025年の調査によれば、日本国内の推し活人口は約1,384万人、市場規模は約3.5兆円に達しています。この市場で注目すべきは、30代を中心とした大人層の参入が加速している点です。年間平均支出額は約25万円にのぼり、単なる消費ではなく「推しへの投資」として、生活の重要な一部になっています。
アソビダスの設立は、この巨大市場における「見えない機会損失」を解消する試みとして理解できます。現在のファンビジネスでは、チケット販売、グッズEC、ファンクラブ、イベント運営などが個別のサービスとして分断されており、ファンの行動データが統合されていません。この分断が、ファンの熱量を収益に変換する機会を逃しているのです。
アソビダスが掲げる「AX(AI Transformation)」は、単なるデジタル化(DX)を超えた概念です。ファンの購入履歴、イベント参加状況、コミュニティでの行動などを統合し、AIで解析することで、転売目的のアカウントを排除したり、抽選に外れたファンに別の特典を提供したりと、きめ細かなパーソナライゼーションを実現します。
BRIDGEの報道によれば、アソビダスは初年度で売上高40〜50億円を見込み、積極的なM&A戦略により2030年に売上高300億円、そして最短でのIPOを目指しています。ミダスキャピタルは過去にGENDAやBuySell Technologiesを上場に導いた実績を持ち、今回GENDAも出資者として参加していることは、エンターテインメント業界全体でのシナジー創出を意図していると考えられます。
興味深いのは、大相撲の伊勢ヶ濱部屋への導入です。相撲という伝統文化とデジタル技術の融合は、推し活の概念がポップカルチャーを超えて、あらゆる「応援文化」に適用可能であることを示しています。後援会のデジタル化や、データを活用した新規ファン層へのリーチは、地域創生やスポーツチームの運営にも応用できる可能性があります。
一方で、この市場には既に強力な競合が存在します。韓国HYBEが運営するWeverseは、MAU約1,200万人、累計ダウンロード数1.5億回を誇るグローバルプラットフォームです。BTSやSEVENTEENといった人気アーティストを抱え、YOASOBIなど日本のアーティストも多数参加しています。Weverseはコミュニティ、コンテンツ、コマースを統合した「スーパーアプリ」として、アソビダスが目指す方向性を既に実現しています。
アソビダスが日本市場で成功するには、Weverseとの差別化が不可欠です。その鍵となるのが「現場力」でしょう。アソビシステムが培ってきたエンターテインメント現場での実践知と、日本独自の推し活文化への深い理解が、グローバルプラットフォームにはない価値を生み出す可能性があります。
潜在的なリスクとしては、プラットフォームへのロックイン効果による、アーティストや事務所の選択肢減少が挙げられます。また、AIによる行動分析は、ファンのプライバシーやデータ管理の観点から、適切なガバナンスが求められます。
推し活プラットフォームの競争は、単なる技術の優劣ではなく、ファンとアーティストの関係性をいかに深化させるかという思想の戦いです。アソビダスが「熱量を価値に変える」というビジョンを実現できるか、今後の展開が注目されます。
【用語解説】
推し活
自分が特に応援したいアイドル、アーティスト、キャラクター、スポーツ選手などを熱心に支持し、グッズ購入やイベント参加など様々な形で応援する活動を指す。2021年に新語・流行語大賞にノミネートされ、広く認知されるようになった。
AX(AI Transformation)
AI技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革し、新たな価値を創出する取り組み。単なるデジタル化(DX)を超えて、AIによるデータ解析やパーソナライゼーションを通じて、顧客体験の質的な向上を目指す概念。
DX(Digital Transformation)
デジタル技術を活用して業務プロセスを効率化し、ビジネスモデルを変革する取り組み。紙ベースの作業をデジタル化するなど、既存業務の改善が主な目的となる。
LTV(Lifetime Value/生涯顧客価値)
一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額。顧客との長期的な関係構築による収益最大化を測る指標として、サブスクリプションビジネスやファンビジネスで重視される。
IPO(Initial Public Offering/新規株式公開)
未上場企業が株式を証券取引所に上場し、一般投資家が株式を購入できるようにすること。企業は資金調達の手段として、投資家は投資機会としてIPOを活用する。
MAU(Monthly Active Users/月間アクティブユーザー数)
1ヶ月間にサービスやアプリを利用したユニークユーザーの数。プラットフォームビジネスの成長性や活性度を測る重要な指標。
M&A(Mergers and Acquisitions/企業の合併・買収)
企業が他社を買収したり、複数の企業が合併したりすること。事業拡大や新技術獲得の手段として活用される。
【参考リンク】
株式会社アソビダス(外部)
推し活プラットフォーム事業を展開。AI活用によるファンビジネスの収益最大化を支援する。
アソビシステム株式会社(外部)
東京・原宿を拠点にエンターテイメント事業を展開。きゃりーぱみゅぱみゅなどが所属。
株式会社ミダスキャピタル(外部)
テクノロジーとファイナンスを強みとする投資会社。GENDAなどを上場に導いた実績を持つ。
株式会社GENDA(外部)
アミューズメント施設運営などを手掛ける。アソビダス設立に際して出資者として参加。
Weverse(外部)
韓国HYBE運営のファンプラットフォーム。MAU約1,200万人を誇る推し活アプリ。
推し活総研(外部)
推し活市場の調査・研究機関。推し活人口や市場規模のデータを公開している。
【参考記事】
2030年に売上300億円、IPOを目指す——ミダスキャピタル×アソビシステムの新会社が仕掛ける「推し活AX」(外部)
アソビダスの成長戦略を詳報。初年度売上40〜50億円、2030年に300億円とIPO目指す。
【推し活人口1400万人・市場規模3兆5千億円】大規模アンケートで分かった!拡がり続ける推し活市場(外部)
推し活総研の2025年調査結果。推し活人口1,384万人、市場規模3.5兆円を報告。
推し活の市場規模は1兆円以上? 物価高に負けない消費の詳細は(外部)
野村證券による推し活市場分析。推し活人口の年齢層構成や消費行動の特徴を解説。
1000万人が愛用するファンダムプラットフォーム、HYBEが展開する「Weverse」はどう進化するか?(外部)
Weverse GMのムン・ジス氏インタビュー。運営思想やデータ活用戦略を紹介。
K-POP人気の基盤 韓国巨大ファンコミュニティーアプリが抱く野望(外部)
日経クロストレンドによるWeverse代表インタビュー。累計DL数1億突破の成長戦略。
【編集部後記】
推し活プラットフォームの競争は、テクノロジーと人間の感情が交差する興味深いフィールドです。AIがファンの行動を分析し、パーソナライズされた体験を提供する一方で、果たしてそれは「推し」への純粋な熱量を増幅させるのでしょうか。それとも、計算された体験は応援の本質を変えてしまうのでしょうか。
みなさんは、自分の推し活データがAIで解析され、最適化された体験が提供されることについて、どう感じますか。便利さと引き換えに、何か大切なものを失う可能性はないでしょうか。アソビダスとWeverseの競争を通じて見えてくる、テクノロジーと人間の関係性の未来を、ぜひ一緒に考えてみたいと思います。






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