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Waymo第6世代Driver始動、カメラ半減でも性能超越――ロボタクシー拡大の新章へ

[更新]2026年2月14日

Waymoは2026年2月12日、第6世代Waymo Driverによる完全自律走行運用の開始を発表した。

同システムは、10以上の主要都市で約2億マイルの完全自律走行から得た7年間の実績をもとに開発された。中核には次世代の1700万画素イメージャーを採用し、第5世代と比較してカメラ台数を半分以下に削減しながら、解像度・ダイナミックレンジ・低照度感度で上回る性能を実現した。LiDAR、イメージングレーダー、外部オーディオレシーバー(EARs)を統合したマルチモーダルセンシングスイートにより、極寒の冬季気象を含む多様な環境での走行に対応する。

処理にはWaymoのカスタムシリコンチップを使用する。OjaiおよびHyundai IONIQ 5など複数の車両プラットフォームに適用可能で、フェニックス都市圏の工場では年間数万台規模の生産能力に向けたスケールアップを開始している。

From: 文献リンクBeginning fully autonomous operations with the 6th-generation Waymo Driver

Waymo 公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

今回の発表は、Waymoが2024年8月に第6世代Waymo Driverの構想を初めて公開してから約1年半を経て、ついに完全自律走行(セーフティドライバーなし)での運用開始を宣言したものです。構想段階から実運用への移行という意味で、自律走行技術の商業化における重要な節目といえます。

Waymo公式ブログでは具体的なセンサー構成の数値が明記されていませんでしたが、複数のメディア報道と2024年8月の初回発表時の公式情報を総合すると、第6世代のセンサー構成はカメラ13台、LiDAR 4基、レーダー6基です。第5世代のJaguar I-PACE搭載システムはカメラ29台、LiDAR 5基、レーダー6基であったため、センサー総数は42%削減されたことになります。センサーを減らしながら性能を向上させるという一見矛盾した成果は、1700万画素イメージャーの採用とWaymo独自設計のカスタムシリコンチップによる処理の集約によって実現されています。

コスト面も注目に値します。Electrekの報道によれば、第6世代Driverのユニットコストは車両価格とは別に2万ドル未満が見込まれており、第5世代から50%以上の削減になるとされています。LiDARの価格が業界全体で大幅に下落したこともこれを後押ししています。Driverユニットのコストがここまで下がったことは、ロボタクシー事業の損益分岐点を大きく変える可能性があります。

事業規模の拡大ペースも加速しています。Electrekの報道では、Waymoは2025年に1500万回の乗車を提供し、2024年の4倍に達したとされています。現在は週約40万回の有料乗車を提供しており、年末までに週100万回を目標に掲げています。現在の運用都市はフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティン、アトランタ、マイアミの6都市で、2026年中にワシントン、デトロイト、ラスベガス、サンディエゴ、デンバー、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、オーランドなどへの展開が計画されています。初の国際展開先としてロンドン、続いて東京も確認されています。

技術的に興味深いのは、TeslaのカメラのみのアプローチとWaymoのマルチモーダル方式の対比が、いよいよ実運用の場で直接比較される段階に入った点です。Teslaは2025年6月にオースティンでロボタクシーサービスを開始しましたが、セーフティドライバーの同乗が必要な状況が続いています。一方Waymoは、査読済み論文によると、5670万マイルの「乗客のみ」走行データにおいて、人間のドライバーと比較して重傷事故を91〜96%削減したという結果を公表しています。センサーの冗長性が安全性の担保に寄与するのか、AIの進化がそれを不要にするのかという問いは、今後数年のロボタクシー産業の方向性を左右する根本的な議論です。

一方で、地政学的なリスクも顕在化しています。第6世代Driverを最初に搭載する車両「Ojai」は、中国・Geely傘下のZeekrが製造しています。2026年2月初旬の米上院公聴会では、共和党のバーニー・モレノ上院議員がWaymoに対し、中国製車両への依存を厳しく追及しました。Waymo側は車両本体にコネクティビティはなく、自律走行システムの搭載は米国内で行われると説明していますが、議論は今後も続くと考えられます。また、一部の遠隔オペレーターがフィリピンに拠点を置いていることも指摘されており、安全管理体制の国際的な在り方に関する論点も浮上しています。

規制の観点では、米議会が自律走行車に関する連邦統一規制の策定を検討中です。現在は州ごとに異なる規制が存在し、Waymo自身もこの「断片化された規制環境」が投資とアクセスを制限していると指摘しています。第6世代Driverの全天候型対応能力は、積雪地帯を含む北東部の都市への展開を技術的に可能にしますが、各地域での規制承認が実際の展開速度を左右することになります。

日本の読者にとって見逃せないのは、Waymoが東京を国際展開の初期ターゲットに含めている点です。日本は道路環境の複雑さ、法規制の厳格さ、そして独自の交通文化を持つ市場であり、Waymoの技術がどこまで適応できるかは、自律走行の汎用性を測る試金石となるでしょう。

【用語解説】

Waymo Driver
Waymoが開発する自律走行システムの総称。車両そのものではなく、センサー群とコンピューティングを統合した「運転するAI」を指す。車両プラットフォームに依存せず、異なる車種に搭載できる設計思想が特徴である。

LiDAR(ライダー)
Light Detection and Rangingの略。レーザー光を照射し、反射光の到達時間から周囲の物体との距離を計測し、3Dのポイントクラウド(点群)画像を生成するセンサー。夜間や悪天候でもカメラに依存せず空間を把握できる。

ポイントクラウド(点群画像)
LiDARが生成する3次元の空間データ。周囲の物体を無数の点の集合として表現し、距離・形状・大きさを正確に把握することができる。

イメージングレーダー
従来のレーダーより高密度な反射データを取得し、物体の距離・速度・サイズを同時に追跡できるセンサー。天候や照明条件に左右されにくい特性を持つ。

EARs(外部オーディオレシーバー)
Waymo Driverに搭載された外部マイク群。緊急車両のサイレンや踏切の警報音などを検知し、音源の方向を特定して適切な回避行動をとるために使用される。

ロングテール
発生確率は極めて低いが無視できない事象の総称。自律走行では、通常走行では遭遇しにくい突発的な状況(動物の飛び出し、落下物など)への対応能力を指す。

OEM
Original Equipment Manufacturerの略。本記事では、Waymo Driverを搭載するベース車両を製造するメーカー(Zeekr、Hyundaiなど)を指す。

Ojai(オーハイ)
Zeekr(Geely傘下)が製造するWaymo専用の電動ミニバン型ロボタクシー。以前は「Zeekr RT」と呼ばれていたが、CES 2026で現名称に改名された。カリフォルニア州の都市名に由来する。

【参考リンク】

Waymo公式サイト(外部)
Alphabet傘下の自律走行技術企業。ロボタクシーサービス「Waymo One」を米国6都市で商用展開中。

Waymo Safety(安全性レポート)(外部)
約2億マイルの完全自律走行実績に基づく安全性データと第三者機関による検証結果を公開している。

Zeekr公式サイト(外部)
Geely傘下の電気自動車ブランド。Waymo専用ロボタクシー「Ojai」のベース車両を中国で製造している。

Alphabet Inc.(外部)
Waymoの親会社。Googleの持株会社として自律走行を含む先端テクノロジー事業に投資している。

【参考記事】

Waymo begins fully autonomous ops with 6th-gen Driver, targets 1M weekly rides(外部)
センサー42%削減、Driverユニットコスト2万ドル未満、2025年乗車実績1500万回などの数値を詳細に報道。

Waymo begins deploying next-gen Ojai robotaxis to extend its U.S. lead(外部)
従業員向けOjai無人走行開始、ロンドン展開計画、Goldman Sachsによる市場規模推定を報道。

Waymo launching China-made van that won’t fail in rain, snow(外部)
中国Zeekr製車両の政治的論争、上院公聴会での追及、遠隔オペレーター問題を地政学的視点から報道。

Waymo got grilled on Capitol Hill over Chinese cars and overseas labor(外部)
2026年2月初旬の上院公聴会詳細。モレノ議員の中国製車両批判とマーキー議員の遠隔オペレーター批判を報道。

【編集部後記】

自律走行車が「晴れた日の都市部を走る実験」から「雪の日も含めた日常の交通手段」へと踏み出そうとしています。

センサーを減らしながら性能を上げるという判断の裏には、どのような技術的トレードオフがあるのか。そして、中国製車両の活用をめぐる議論は、自律走行の未来にどう影響するのか。みなさんはこの変化をどうご覧になりますか。ぜひご意見をお聞かせください。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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