ChatGPTやGeminiに質問を投げたとき、AIは裏側で何を検索しているのか。その「見えない検索」を丸ごと可視化する無料ツールが登場した。
Queue株式会社(東京都中央区、代表:谷口太一)は2026年2月5日、AI検索最適化サービス「umoren.ai」の一環として「クエリ・ファンアウト可視化ツール」を無料公開した。本ツールは、Geminiがユーザーの質問に回答する際、内部で実行する検索クエリの分解プロセス「クエリファンアウト(Query Fan-out)」を実データとして抽出・表示するもので、日本では業界初の取り組みである。
従来ブラックボックスとされていたこのプロセスを可視化することで、企業はAI検索に引用されるための記事設計をデータに基づいて行えるようになる。主な機能は、実行された検索クエリの取得、検索意図の可視化、参照された情報源の表示、CSV出力の4点である。今後はChatGPTなど他の生成AIモデルへの対応拡大や、クエリファンアウトと引用率の相関分析機能の追加を予定している。
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Queue株式会社、生成AIの検索クエリ分解プロセス「クエリ・ファンアウト可視化ツール」無料公開

【編集部解説】
私たちが普段ChatGPTやGeminiに質問を投げるとき、AIはその問いをそのまま検索しているわけではありません。内部で複数のサブクエリに自動分解し、それぞれを並列で検索したうえで、得られた情報を統合して回答を生成しています。Googleはこの仕組みを「クエリファンアウト(Query Fan-out)」と呼んでおり、2025年5月に米国で正式展開されたAI Modeの中核技術として位置付けています。
この技術の存在自体は、Googleの特許(US20240289407A1「Search with Stateful Chat」、2024年8月公開)やWO2024064249A1(多様な検索のためのプロンプトベースクエリ生成)といった文書から以前より知られていました。しかし、実際にどのようなサブクエリが生成されているかは、これまで外部からは確認する術がほとんどありませんでした。
Queue株式会社のツールは、Geminiが実際に実行した検索クエリを抽出・表示するという点で、このブラックボックスに風穴を開ける試みです。海外では、フランスのRESENEOが2025年10月にChatGPTのファンアウトクエリを取得する拡張機能を公開しているほか、WordLiftやWellowsなどがシミュレーションベースのファンアウト分析ツールを提供しています。Queue株式会社のアプローチは、シミュレーションではなく実データの取得を謳っている点が差別化ポイントとなります。
この動きの背景には、SEOからLLMO(大規模言語モデル最適化)/GEO(生成エンジン最適化)へのパラダイムシフトがあります。2025年9月にはGoogleのAI Modeが日本語でも提供開始され、2026年1月にはAI概要からAI Modeへのシームレスな連携も発表されました。従来の「キーワードで上位表示を狙う」という発想だけでは、AIに引用される情報源として選ばれることが難しくなりつつあります。
ポジティブな側面として、このようなツールの登場により、企業は推測ではなくデータに基づいたコンテンツ戦略を立てられるようになります。「なぜ自社の記事がAIに引用されないのか」という問いに対して、具体的な手がかりが得られるようになるのは大きな前進といえます。
一方で、潜在的なリスクも見逃せません。まず、Surfer SEOが2025年12月に約17万3000件のURLを分析した調査では、AI Overviewsで引用されたページの68%が従来のオーガニック検索の上位10位圏外だったと報告されています。クエリファンアウトによって情報源の選定ロジックが根本的に変わった以上、ファンアウトクエリの可視化だけで「AIに引用される」保証が得られるわけではない点には留意が必要です。
また、こうしたツールの普及は、AIの引用を獲得するためだけに最適化されたコンテンツが大量生産される事態を招きかねません。情報の質よりもAI対策を優先する傾向が強まれば、結果としてウェブ全体の情報品質が低下するという逆説的な状況も起こりえます。
長期的な視点で見ると、クエリファンアウトの可視化は「AIがどのように世界を理解しているか」を人間が読み解くための入口に過ぎません。Googleの特許が示すように、AIの検索プロセスはパーソナライゼーションや会話履歴の文脈保持といった要素と結びつきながら、今後さらに複雑化していくことが予想されます。本質的に求められるのは、小手先のテクニックではなく、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)に裏打ちされた、ユーザーにとって真に価値のある情報を発信し続けることでしょう。
【用語解説】
クエリファンアウト(Query Fan-out)
生成AIがユーザーの質問を複数のサブクエリ(小さな検索クエリ)に自動分解し、それぞれを並列で検索・統合して回答を生成する技術。Googleが2025年5月のAI Mode発表時に公式に命名した。特許US20240289407A1(Search with Stateful Chat)がその技術的基盤とされる。
LLMO(Large Language Model Optimization)
大規模言語モデル最適化の略称。ChatGPTやGeminiなどの生成AIの回答において、自社の情報が引用・参照されることを目的とした最適化施策である。米国ではGEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)という呼称が定着しつつある。
AI Mode
Googleが2025年5月に米国で正式展開した、AI搭載の新しい検索体験。カスタム版Geminiモデルを採用し、クエリファンアウト技術により従来の検索より広範で深い情報を提供する。2025年9月に日本語対応を開始した。
AI Overviews(AIによる概要)
Google検索の結果ページ上部に表示されるAI生成の要約回答。AI Modeほど高度な推論は行わないが、同様にクエリファンアウト技術を活用している。
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)
Googleがコンテンツ品質を評価する際の基準。Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字をとったもの。AI検索時代においても引用される情報源の選定基準として重視されている。
ブラックボックス
内部の仕組みや処理過程が外部から観察・理解できない状態を指す。本記事では、生成AIがどのようなサブクエリを生成しているかが不透明であったことを表す。
【参考リンク】
Queue株式会社 公式サイト(外部)
LLMO事業とAI受託開発を手がける東京都中央区のスタートアップ。2024年4月設立。
umoren.ai(外部)
Queue株式会社が提供するAI検索最適化プラットフォーム。クエリファンアウト可視化ツールなどを無料提供。
クエリファンアウト可視化ツール(外部)
Geminiが実際に内部で実行した検索クエリを抽出・表示する無料ツール。CSV出力にも対応。
Google公式ブログ – AI Mode in Google Search(外部)
2025年5月公開のAI Mode公式発表。クエリファンアウト技術やDeep Search機能について解説。
【参考記事】
What Is Query Fan-Out? How One Query Becomes 12 in AI Search(外部)
Surfer SEOの調査でAI Overviews引用ページの68%が上位10位圏外と判明。iPullRankのデータも収録。
How AI Mode and AI Overviews work based on patents(外部)
複数のGoogle特許からAI ModeとAI Overviewsを支えるクエリファンアウト技術の仕組みを詳細に解説。
Query-Fan-Out Technique in AI Mode: New Details From Google(外部)
Google副社長がクエリファンアウトの動作例を語り、AI搭載検索が月間約15億人に提供と明かした。
Everything You Need to Know About Query Fan-Out(外部)
RESENEOの調査を基に、ChatGPTで3層のファンアウトが並列動作していることを報告した2026年1月の記事。
Google AI Mode’s Query Fan-Out Technique: What is it & How Does it Mean for SEO?(外部)
SEOコンサルタントのアレイダ・ソリス氏がファンアウトの発動条件を実例とともに整理した解説記事。
WTF is ‘query fan-out’ in Google’s AI mode?(外部)
Digidayがパブリッシャー視点で取材。ファンアウトのクエリデータ非公開と参照トラフィック減少の懸念を報道。
【編集部後記】
みなさんが普段ChatGPTやGeminiに投げかけている質問の裏側で、AIがどんな検索を走らせているのか、想像したことはありますか。「検索する」という行為そのものの意味が、いま静かに変わり始めています。
自社のコンテンツを届けたい方も、純粋にAIの仕組みに興味がある方も、一度ご自身の質問がどう分解されるのか覗いてみると、新しい発見があるかもしれません。





































