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HUAWEI WATCH GT Runner 2発表―5年ぶりのランニングウォッチ復帰、キプチョゲをアンバサダーに起用

[更新]2026年3月3日

2026年2月26日、Huaweiはスペイン・マドリードでグローバル製品発表イベント「Now is Your Run」を開催した。同社は5年ぶりにプロフェッショナル向けランニングウォッチ市場へ復帰し、HUAWEI WATCH GT Runner 2を発表した。

同製品は新しい3Dフローティングアンテナアーキテクチャとインテリジェント測位アルゴリズムを搭載し、信号途絶時にも測位を継続する。オリンピックマラソン2冠のエリウド・キプチョゲがグローバルアンバサダーに就任した。イベントではこのほか、HUAWEI WATCH Ultimate 2、HUAWEI Mate 80 Pro、HUAWEI MatePad Mini(8.8インチ)、業界初のデュアルエンジンAIノイズキャンセリング搭載ワイヤレスイヤホンHUAWEI FreeBuds Pro 5、HUAWEI Band 11 Seriesも披露された。

From: 文献リンクHuawei Debuts Cutting-Edge Innovations in Madrid with Focus on Running Watches

アイキャッチはHuawei PRNewswireより引用

【編集部解説】

今回のマドリードでの発表は、単なる新製品のお披露目ではありません。米国の制裁下で苦境に立たされてきたHuaweiが、グローバル市場への本格的な再参入を宣言した、戦略的に極めて重要なイベントとして捉える必要があります。

まず注目すべきは、HUAWEI WATCH GT Runner 2の位置づけです。初代GT Runnerは2021年に発表されたものの、限定的なユーザーベースを理由に比較的短期間で販売終了となっていました。5年の空白を経て復活した今作は、チタンケースに1.32インチAMOLEDディスプレイ(ピーク輝度3,000ニト)を搭載し、重量は43.5グラム。GPS連続使用で最大32時間、通常使用で最大14日間というバッテリー寿命を実現しています。欧州での販売価格は399ユーロ(英国では約350ポンド)に設定されており、競合であるGarmin Forerunner 970の649ドルという価格帯に対して、約半額で勝負を挑む構えです。

技術面では、3Dフローティングアンテナによるアンテナ性能が先代比3.5倍に向上したとHuaweiは主張しています。トンネルや高架下といったGPS信号が不安定な環境でも慣性測位アルゴリズムがルート計算を継続する仕組みは、都市部のランナーにとって実用的な進化といえます。さらに、リアルタイムの乳酸閾値検出アルゴリズムを搭載したのは同社のウォッチとして初めてのことで、これは従来チェストストラップなどの外部デバイスが必要だった指標を手首だけで取得できるようにするものです。

一方、HUAWEI Mate 80 Proのグローバル展開は、さらに大きな文脈で読み解く必要があります。Huaweiがストレート型のMateシリーズを海外市場に投入するのは、2022年のMate 50シリーズ以来、約4年ぶりのことです。欧州での価格は1,299ユーロ(約1,533ドル)。16GB RAM+512GBストレージの単一構成で、自社開発のKirin 9030 Proプロセッサを搭載しています。

ここで見逃せないのが、グローバル版と中国版の間にあるソフトウェアの違いです。中国版がHarmonyOS 6.0を搭載するのに対し、グローバル版はAndroidベースのEMUI 15.0で出荷されます。これは、Google Mobile Services(GMS)が利用できないという制約が海外市場では依然として大きな壁であることを示しています。IDCのフランシスコ・ジェロニモ氏(データ・アナリティクス担当バイスプレジデント)は「完全なGoogleサービスなしに国際市場へ復帰することは難しい」と指摘しており、AppGalleryの充実度が今後の海外展開を左右する重要な課題として残ります。

ランニングウォッチ市場に目を向けると、Garmin、Apple、Samsung、COROSがしのぎを削る激戦区に、Huaweiが価格競争力を武器に切り込む構図が見えてきます。とくにエリウド・キプチョゲの起用は象徴的です。キプチョゲはかつてCOROSとパートナーシップを結んでおり、COROS Pace 3のキプチョゲ特別版も発売されていました。このブランドアンバサダーの移籍は、ランニングウォッチ市場の競争がブランドの信頼性とアスリートの支持をめぐる段階へと進んでいることの証左です。

より広い視座で見れば、今回の発表はHuaweiの「制裁後の再構築」がどこまで進んだかを測るリトマス試験紙でもあります。中国国内では2025年第2四半期にスマートフォン出荷台数で首位を奪還したHuaweiですが、海外市場での成否は、ハードウェアの技術力だけでなく、ソフトウェアエコシステムの成熟度にかかっています。マドリードでの発表は、その挑戦の最初の一歩として記憶されることになるかもしれません。

【用語解説】

3Dフローティングアンテナアーキテクチャ
ウォッチのラグ(バンド接続部)内部にアンテナを浮かせるように配置する設計手法。アンテナを本体ケースから物理的に分離することで、金属部品や人体からの電波干渉を低減し、GPS測位精度を高める。先代モデルにも浮体式アンテナは採用されていたが、今回は3D構造へと進化し、Huaweiは先代比3.5倍のアンテナ性能向上を主張している。

慣性測位アルゴリズム(インテリジェント測位アルゴリズム)
GPS信号が途絶した際に、加速度センサーとジャイロスコープのデータを組み合わせてランナーの軌跡と距離を推定し続ける技術。トンネルや高架下など衛星信号を受信しにくい環境で効果を発揮する。

乳酸閾値(Lactate Threshold)
運動強度を上げた際に、血中乳酸濃度が急激に上昇し始めるポイントのこと。「嫌気性閾値」とも呼ばれる。持久力系アスリートにとってトレーニング強度の最適化に欠かせない指標であり、従来はチェストストラップや採血による計測が一般的だった。GT Runner 2はこれを手首のセンサーだけでリアルタイム検出する。

Kirin 9030 Pro
Huaweiが自社設計し、中国のSMIC(中芯国際集成電路製造)が製造するモバイル向けプロセッサ。米国の制裁下で先端半導体の調達が制限されるなか、Huaweiが独自に開発を進めてきた自社製チップである。

EMUI 15.0
Huaweiがグローバル市場向けに提供するAndroidベースのカスタムOS。中国国内向けの独自OS「HarmonyOS」とは異なり、海外ユーザーの利用習慣に合わせた仕様となっている。ただし、Google Mobile Services(Gmail、Google Play Storeなど)は利用できない。

Google Mobile Services(GMS)
Googleが提供するアプリ群およびAPIの総称。Google Play Store、Gmail、Google Mapsなどを含む。2019年以降の米国制裁により、Huawei製スマートフォンにはGMSを搭載できず、海外市場での最大の障壁となっている。

エンティティリスト(Entity List)
米国商務省産業安全保障局(BIS)が管理する貿易制限リスト。掲載された企業・団体への米国技術の輸出にはライセンスが必要となる。Huaweiは2019年5月に掲載され、以降、先端半導体やGoogle関連サービスへのアクセスが制限されている。

【参考リンク】

HUAWEI WATCH GT Runner 2 公式製品ページ(外部)
3Dフローティングアンテナやインテリジェントマラソンモードなどの機能詳細とスペックを掲載。

HUAWEI Mate 80 Pro 公式製品ページ(外部)
True-to-Colorカメラ、Dual Space Ringデザイン、第2世代Kunlun Glassなどの詳細を確認できる。

Huawei Consumer(グローバル)(外部)
スマートフォン、ウェアラブル、タブレット、オーディオ製品など全製品ラインアップを網羅した公式サイト。

Garmin Forerunner シリーズ 公式ページ(外部)
編集部解説で競合として言及したGarminのランニングウォッチシリーズ。Forerunner 970などの製品情報を掲載。

COROS 公式サイト(外部)
キプチョゲが以前パートナーシップを結んでいたGPSスポーツウォッチメーカー。パフォーマンス重視の製品で知られる。

【参考記事】

Huawei Watch GT Runner 2 brings updated GPS antenna, marathon mode and 14 days of battery life(外部)
GSMArenaによるGT Runner 2の詳細レポート。チタンケース、43.5グラム、GPS32時間、英国価格350ポンド、先代比3.5倍のアンテナ性能向上などを網羅。

Huawei Mate 80 Pro launches with 3000 nits display and 50MP variable aperture camera(外部)
Gizmochinaによるグローバル版Mate 80 Proの詳細。EMUI 15.0搭載、16GB+512GB構成、中国版のみのモデルがグローバル展開されない点を報道。

Huawei targets global comeback with Mate 80 Pro smartphone, new smartwatch(外部)
SCMPの報道。グローバル版1,299ユーロ、Kirin 9030 Pro搭載、ストレート型MateシリーズはMate 50以来約4年ぶりの海外展開であることを伝えている。

Huawei Watch GT Runner 2 review: it may be made for marathons, but this amateur runner still liked it(外部)
英テックメディアStuffの実機レビュー。399ユーロでGarmin Forerunner 970の約半額。実使用で9〜10日のバッテリー持続を確認。

Huawei bringing back ‘Runner’ smartwatch: Are you excited?(外部)
GT Runnerシリーズ復活の背景。初代の2021年発売と販売終了の経緯、キプチョゲとCOROSの過去の関係などを報道。

Huawei charts cautious global comeback with ultra-expensive phones — but major challenges remain(外部)
CNBCの分析記事。IDCジェロニモ氏の「Googleサービスなしの国際市場復帰は困難」との指摘を引用し、海外展開の課題を分析。

【編集部後記】

ランニングウォッチの進化は、単なるガジェットの話にとどまりません。GPSの精度、乳酸閾値のリアルタイム計測――こうした技術が手首の上で実現することで、走ることの体験そのものが変わろうとしています。一方で、Huaweiのグローバル市場への再挑戦は、米中テクノロジー競争の縮図でもあります。皆さんはランニングウォッチを選ぶとき、何を一番の決め手にしていますか?ぜひSNSで聞かせてください。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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