SBIホールディングスとStartale Group Pte. Ltd.は2026年2月27日、共同開発中の日本円ステーブルコインのブランド名称を「JPYSC」とすることおよびロゴを発表した。
JPYSCは、新生信託銀行株式会社が信託型の3号電子決済手段として発行するステーブルコインであり、既存の金融システムとブロックチェーンネットワークを接続する設計となっている。SBI VCトレード株式会社が主要な販売パートナー、スターテイルがコアパートナーを務める。正式ローンチは規制・制度への対応体制の整備を前提に2026年度第1四半期を目指している。用途として実務決済、資金管理、クロスボーダー決済などが想定されており、機関投資家レベルの大規模取引やトークン化資産の決済にも対応可能な設計である。
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SBIホールディングスとStartale Group、日本初の信託型日本円建てステーブルコイン「JPYSC」を発表
【編集部解説】
JPYSCを理解するうえで、まず押さえておきたいのが「信託型」という仕組みです。日本の改正資金決済法(2023年6月施行)では、ステーブルコインを「電子決済手段」として定義し、発行者を銀行(1号)、資金移動業者(2号)、信託会社(3号)の3類型に限定しています。JPYSCは信託銀行が発行する3号類型にあたり、利用者の資金が信託財産として法的に保全される点が特徴です。万が一発行体に問題が生じた場合でも、信託法の枠組みにより資産が保護されるため、機関投資家や大企業が求める堅牢性を備えた設計といえます。
日本円ステーブルコインの領域では、2025年10月にJPYC Inc.が資金移動業者(2号類型)として「JPYC」を発行しており、これが法規制に準拠した日本初の円建てステーブルコインとなりました。JPYSCはこれとは異なる信託型の枠組みを採用しており、「日本初の信託型」という位置づけになります。両者は競合というより、制度上の異なるアプローチから円のデジタル化を進める存在として併存する形です。
注目すべきは、JPYSCが単独のプロダクトではなく、SBIホールディングスとスターテイルが構築する広範なデジタル資産インフラの一部であるという点です。両社は2026年2月にトークン化証券の取引・決済に特化したLayer 1ブロックチェーン「Strium Network」を発表しており、JPYSCはその決済レイヤーとしての役割が想定されています。Strium NetworkはSBIグループが抱える5000万人超の顧客基盤を活用し、アジアのオンチェーン証券市場の基盤となることを目指しています。
スターテイルの渡辺創太CEOは、JPYSCについて「日常的な決済手段にとどまらず、完全にオンチェーン化された世界で中心的な役割を果たす」と述べ、とくにAIエージェント間の決済やトークン化資産の分配における可能性に言及しています。AIが自律的に経済活動を行う未来を見据えた発言であり、ステーブルコインの用途が人間同士の取引を超えて拡張していく可能性を示唆するものです。
ポジティブな側面として、日本はステーブルコイン発行に明確な法的枠組みを持つ数少ない主要国のひとつであり、この規制の明確さ自体が国際的な競争力となりえます。2025年3月には資金決済法の改正案が閣議決定され、信託型ステーブルコインの裏付け資産の最大50%を短期国債や解約可能な定期預金で運用できるようになりました。従来は全額を要求払い預金で保持する必要があったため、発行者の収益性向上につながる重要な規制緩和です。
一方で、潜在的なリスクも存在します。現在、世界のステーブルコイン市場は米ドル建てが99%以上を占めており、円建てステーブルコインがグローバルな流動性を獲得するには相当の時間を要するでしょう。また、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループといったメガバンクも円建てステーブルコインの開発を進めており、国内市場での競争も激化が予想されます。規制面では、金融庁が暗号資産の監督を資金決済法からより厳格な金融商品取引法へ移行させる検討を進めている点も、今後の事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
JPYSCの成否は、規制対応の完了と実際のユースケースの拡大にかかっています。クロスボーダー決済やトークン化資産の決済といった機関投資家向けの領域で実績を積み上げられるかどうかが、デジタル円の国際的な存在感を左右することになるでしょう。
【用語解説】
ステーブルコイン
法定通貨(円やドルなど)と価値を連動させたデジタル資産。価格の安定性を保つため、発行者が裏付けとなる預金や国債などの資産を保有する仕組みを採用している。
3号電子決済手段(信託型)
改正資金決済法で定められたステーブルコインの発行類型のひとつ。信託銀行・信託会社が発行し、利用者の資金を信託財産として法的に保全する。1号・2号に適用される国内送金・滞留の100万円制限が課されない。
トークン化資産(RWA)
株式、不動産、債券などの現実世界の資産(Real World Assets)をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの。取引の効率化や流動性の向上が期待される。
Layer 1ブロックチェーン
ブロックチェーンネットワークの基盤となる層。EthereumやBitcoinなどが代表例。Strium Networkはトークン化証券に特化した新しいLayer 1として設計されている。
クロスボーダー決済
国境を越えた国際送金・決済のこと。従来の銀行送金では数日を要する場合があるが、ブロックチェーンを活用することで即時性の向上とコスト削減が見込まれる。
【参考リンク】
SBIホールディングス株式会社(公式サイト)(外部)
金融サービス、資産運用、暗号資産事業など幅広いビジネスを展開する日本有数の総合金融グループ。
Startale Group(公式サイト)(外部)
Soneium、Astar Networkなどを手がける日本発のグローバルWeb3インフラ企業。SBIとJPYSCを共同開発。
SBI VCトレード株式会社(公式サイト)(外部)
SBIグループの暗号資産交換業者。JPYSCの主要販売パートナーとして流通を担う。
【参考記事】
SBI Holdings unveils trust bank-backed JPY stablecoin with Q2 launch target(外部)
The Blockによる報道。JPYSCの信託型構造やSBI VCトレードの販売パートナー体制について詳述。
SBI Holdings, Startale Group to issue first trust-based yen stablecoin JPYSC(外部)
CryptoBriefingの記事。渡辺創太CEOのAIエージェント決済構想やSBI北尾会長のコメントを紹介。
SBI Unveils Trust Bank-Backed Yen Stablecoin Targeting Q2 Launch(外部)
FinanceFeedsの報道。Strium NetworkやCoinhako買収計画などSBIの広範なデジタル資産戦略を解説。
SBI Holdings Unveils Layer 1 Proof of Concept for Tokenized Stocks(外部)
The Blockの記事。JPYSCの決済基盤となるStrium Networkのコンセプト実証について報じている。
Japan’s Stablecoin Landscape: Regulation, Innovation, and the Road Ahead(外部)
Blackbox JPによる日本のステーブルコイン規制の全体像と市場動向の解説記事。
Fintech 2025 – Japan: Trends and Developments(外部)
Chambers and Partnersによる日本のフィンテック法規制の専門的な解説。電子決済手段の法的枠組みを詳述。
Japan’s 2025 Payment Services Act Amendment: Key Regulatory Changes(外部)
FINOLABの解説。信託型ステーブルコインの裏付け資産運用ルール緩和など2025年改正のポイントを整理。
Japan’s SBI and Startale Unveil Yen Stablecoin JPYSC Set for Q2 2026 Launch(外部)
BeInCryptoの記事。金融庁による暗号資産規制の金融商品取引法への移行検討にも言及。
【編集部後記】
ステーブルコインという言葉を最近よく目にするようになった方も多いのではないでしょうか。「デジタルな円」が当たり前になる未来は、私たちの日常の買い物や送金のあり方を大きく変えるかもしれません。
みなさんは、お金がブロックチェーン上で動く世界にどんな期待や不安を感じていますか。ぜひSNSなどで考えを聞かせていただけるとうれしいです。








































