Appleは2026年3月16日、AirPods Max 2を発表した。H2チップを搭載し、アクティブノイズキャンセレーション(ANC)は従来モデル比最大1.5倍の効果を持つ。新たにアダプティブオーディオ、カンバセーションアウェアネス、ボイスアイソレーション、ライブ翻訳、カメラリモート、スタジオ品質のオーディオ録音、Siriインタラクションに対応する。
USB-Cケーブル接続時には24ビット・48kHzのロスレスオーディオが利用可能となる。カラーはミッドナイト、スターライト、オレンジ、パープル、ブルーの5色で、米国での価格は549ドルからとなる。注文受付は2026年3月25日に開始し、出荷は翌月初旬を予定している。
From:
Apple introduces AirPods Max 2 | Apple Newsroom
アイキャッチ画像はApple公式Newsroomより引用
【編集部解説】
AirPods Maxが登場したのは2020年のことです。以来5年以上、チップは据え置きのまま時間が過ぎました。AirPods Pro 2にH2が搭載され、AirPods 4にも展開されるなかで、「次こそMaxだ」という期待は毎年外れ続けました。その答えが、今回のAirPods Max 2です。
ノイズキャンセリングの強化——「すでに強い」からの1.5倍
ANC性能は従来比最大1.5倍という数値が示されています。Appleの自己申告値である以上、実機での検証は待つ必要がありますが、前提として初代MaxのANCはすでにトップクラスの評価を受けていた製品です。そこからの強化という点で、数字以上の意味があります。
構造の話もしておきます。カナル型のAirPods Proはシリコンチップで耳道を塞ぐことで遮音します。対してMaxはオーバーイヤー設計で頭部ごと音場を包む。飛行機のエンジン音や地下鉄の走行音といった低周波ノイズへの対応力は、この構造的な差から来るものです。ANCアルゴリズムの強化と物理設計の優位性が重なる今回のアップデートは、静粛性という体験の質を一段引き上げるものになるはずです。
アダプティブオーディオ/カンバセーションアウェアネス——Pro譲りの機能がMaxへ
AirPods Pro 2ユーザーには今さら説明不要の機能ですが、Maxへの搭載は今回が初めてです。周囲の環境に応じてANCとトランスペアレンシーを自動調整し、ユーザーのが会話を始めた際に音量を自動で下げる。いずれも地味ながら、日常の使い心地を確実に変える機能です。「なぜ高価なMaxにこれがないのか」という長年の不満が、ここで解消されます。
ライブ翻訳——小さな体験の変化が、意外と大きい
耳につけたまま、目の前の相手と異なる言語で会話できます。日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、中国語(簡体字・繁体字)に対応しており、iPhoneをポケットに入れたまま使用可能です。翻訳のためにスマートフォンを取り出す必要がない——その小さな差が、会話の自然さと温度を変えます。インバウンドの多い観光・医療・ビジネスの現場では、実用性を感じる機会が多そうです。利用にはiOS 26.4以降を搭載したApple Intelligence対応iPhoneが必要になります。
ロスレスオーディオ——条件をきちんと確認したい
24bit/48kHzのロスレスオーディオに対応しますが、有効になるのはUSB-C有線接続時のみです。Bluetooth接続では圧縮音声のまま変わりません。「ロスレス対応」という言葉だけを見て期待すると、購入後に認識のズレが生じる可能性があります。
ただしLogic Proで音楽制作を行うユーザーには、この仕様は十分に実用的です。有線接続によるロスレス再生とヘッドトラッキング付きパーソナライズド・スペーシャルオーディオを組み合わせた制作・ミックス環境は、これまでAppleのラインナップに存在しなかったものです。
スタジオ品質録音/カメラリモート——わかる人に届く追加
ポッドキャスト制作、取材、一人での動画撮影——コンテンツを作る人の日常に入り込んでくる機能です。スタジオ品質録音はこれまで専用機材が担っていたクオリティをAirPods Max 2単体で実現し、カメラリモートはDigital Crownの操作だけでiPhoneの撮影をコントロールできます。派手ではありませんが、使い始めると手放せなくなる類の機能です。
価格と重量——正直に見ておく二点
米国での価格は549ドル。ソニーWH-1000XM6の価格が459.99ドル(現在はセールで399.99ドル)、BoseのQuietComfort Ultra Headphonesが449ドルであることを考えると、100〜150ドル高い水準にあります。iPhoneやMacを日常的に使うAppleユーザーであれば、エコシステムとの連携を含めて納得感のある価格設定です。Appleデバイスを持たないユーザーには、率直に別の選択肢を勧めます。
本体重量は前モデルと同じ386.2グラムのまま変わっていません。音質もANCも着実に進化したなかで、長時間装着時の快適性という課題だけが次世代への持ち越しとなりました。
H2チップの搭載により、AirPods 4・Pro 2・Max 2という三つのラインが共通の技術基盤で出揃いました。それぞれ異なる役割を持ちながら、Apple Intelligenceという土台でつながる構造は、今後のアップデートでさらに深まっていくはずです。AirPods Max 2は、その設計の頂点に位置する一台です。
【用語解説】
H2チップ
Appleが独自開発したオーディオ向けプロセッサ。コンピュテーショナルオーディオ処理を担い、ANCやアダプティブオーディオなどの高度な音響機能をリアルタイムで実現する。AirPods Pro 2(2022年発売)に初搭載され、今回AirPods Max 2へ展開された。
ANC(アクティブノイズキャンセレーション)
マイクで収集した周囲の騒音に対し、逆位相の音波を生成してノイズを打ち消す技術。物理的な遮音(パッシブノイズキャンセレーション)と組み合わせることで、より高い遮音効果を発揮する。
ロスレスオーディオ
音楽データを非圧縮または可逆圧縮で伝送・再生する方式。MP3やAACなどの非可逆圧縮と異なり、原音の情報を完全に保持する。AirPods Max 2では24ビット・48kHzに対応するが、USB-C接続時のみ有効である。
アダプティブオーディオ
ANCとトランスペアレンシーモードを自動的に切り替え・ブレンドする機能。周囲の環境音を常時解析し、最適なノイズ処理レベルをリアルタイムで調整する。
カンバセーションアウェアネス
ユーザーが話しはじめた瞬間を検知し、自動的に再生中のコンテンツの音量を下げ、周囲の音を聞こえやすくする機能。声を出すだけで操作が不要になる。
ボイスアイソレーション
通話中に話者の声を優先して強調し、周囲の環境音を排除する機能。H2チップのコンピュテーショナルオーディオ処理によって実現される。
パーソナライズド・スペーシャルオーディオ
iPhoneのTrueDepthカメラでユーザーの耳の形状をスキャンし、その個人データをもとに立体音響の定位を最適化する機能。標準的なスペーシャルオーディオより自然な音像定位が得られる。
Siriインタラクション
Siriの読み上げアナウンスに対し、音声を発することなく頭部の動作(縦振り=yes、横振り=no)だけで返答できる機能。周囲に声を聞かれることなくSiriを操作できる。
【参考リンク】
AirPods Max 2 公式ページ(Apple)(外部)
AirPods Max 2の製品仕様、カラー、価格、購入方法を案内するApple公式製品ページ。技術仕様の詳細も確認できる。
Apple Intelligence 公式ページ(外部)
ライブ翻訳を含むApple Intelligenceの各機能を紹介する公式ページ。対応デバイスや言語、利用条件も掲載されている。
Logic Pro(Apple 日本)(外部)
Apple純正プロ音楽制作ソフト。AirPods Max 2とUSB-C接続でパーソナライズド・スペーシャルオーディオによる制作・ミックスが可能。
【参考動画】
【参考記事】
Apple Announces AirPods Max 2 With H2 Chip and More|MacRumors(外部)
本体重量386.2g、バッテリー持続時間など、公式プレスリリースを補足する具体的な数値情報を含む発表レポート。
Bose vs. Sony WH-1000XM6 vs. AirPods Max 比較|PCMag(外部)
ソニーWH-1000XM6(459.99ドル)とBose(449ドル)を比較。AirPods Max 2の価格的立ち位置を把握できる。
Sony WH-1000XM6 商品ページ|Best Buy(外部)
2026年3月時点の実勢価格(398ドル)を確認できるページ。競合との価格差の訂正に使用したソース。
Apple finally launches AirPods Max 2 — ANC could be a game changer|Tom’s Guide(外部)
ANC強化とロスレスオーディオのUSB-C限定という制限を中心に評価したレビュー記事。
Apple AirPods Max Review: 5 Years Later|CNET(外部)
初代AirPods Maxの5年後評価。競合の追い上げで相対的な優位性がどう変化したかを解説した背景記事。
【編集部後記】
今回個人的に一番響いたのは、ANCの強化でもライブ翻訳でもなく、USB-C有線接続でロスレス再生できるという部分でした。
いまはAirPods Proを使っていて、日常のリスニングでは何の不満もありません。ただ、音楽をちゃんと聴きたいときや、DJの選曲作業でトラックを細かく確認したいときに、「このイヤホンで本当に聴けているのか」という引っかかりがあって。かといってそのためだけに本格的なヘッドホンをもう一台買うのも、と思いながらずっと曖昧なままにしていました。
USB-Cで有線接続して24bit/48kHzのロスレスで聴けて、しかも自分の耳の形にチューニングされたスペーシャルオーディオで音場を確認できる。DJとしてトラックの細部を把握したい場面や、純粋に音楽に集中したい時間に、これはかなり刺さる仕様です。
すぐ買うかはまだわかりません。ただ、AirPods Proで満足していたはずなのに、こういう形で気になり始めるとは思っていませんでした。
みなさんはどの機能が気になりましたか?







































