折りたたみスマートフォン市場が熱を帯びています。HUAWEIが横開きフォルダブルで先手を打ち、サムスンとアップルも大きな動きを控えるなか、モトローラがフォルダブル戦線の主役として名乗りを上げました。同社は2026年のRazrラインナップを、フリップ型3モデルに加え初のブック型端末Razr Foldを揃えた4モデル体制で臨む構えです。4月20日(現地時間)に公式ティーザーが投稿され、正式発表の日時が確定しました。今年のRazrは何が変わり、何が問われるのでしょうか。
モトローラは4月20日、公式ソーシャルメディアアカウントに予告映像を投稿し、新Razrファミリーを4月29日に正式発表することを明らかにした。映像にはブラック、グリーン、パープルの3色のフリップ型端末が映し出されており、発売時のカラーバリエーションの一端が示されている。
発表が予告されているのは、標準モデルのRazr 2026、Razr Plus 2026、最上位のRazr Ultra 2026の3フリップモデルと、同社初のブック型折りたたみ端末Razr Foldの計4モデルだ。Razr Foldについてはすでに一部の国でプレオーダーの受付が始まっている。
価格についてはリーク情報メディアDealabsが詳細を報告しており、米国向け価格はRazr 2026が799.99ドル、Razr Plus 2026が1,099.99ドル、Razr Ultra 2026が1,499.99ドル、Razr Fold 2026が1,899.99ドルになるとされている。前年比では、ベースモデルとPlusモデルが各100ドル、Ultraモデルが200ドルの値上げとなる。米国での発売日は2026年5月21日と伝えられている。
From:
Foldable season in full swing: Motorola confirms launch date for new Razr family
アイキャッチ画像はモトローラ公式サイトより引用
【編集部解説】
「フリップ一本足」で築いた50%、その先にある死角
モトローラが置かれているのは、ねじれた地形図です。IDCのアナリストがMWC 2026で明らかにしたところによれば、同社は米国の折りたたみスマートフォン市場で約50%のシェアを握り首位に立っています。ラテンアメリカでは約55%、グローバルでは約14%——いずれも、売ってきたのはフリップ型のRazrだけという条件下での数字です。
この「フリップ一本足」で築いた優位は、裏返せば死角でもあります。Counterpoint Researchの予測では、2026年の折りたたみ出荷のうち約65%をブック型が占める見通しで、前年の52%から一気に増加する予測になっています。サムスン内部でも重心移動が起きており、2025年後半にはGalaxy Z Fold 7の販売数がGalaxy Z Flip 7を上回るという、フリップ優勢時代を反転させる現象が起きました。
モトローラはこれまで、ブック型に踏み込まない理由としてアプリの最適化不足を挙げてきました。しかし市場全体の重心がフリップ中心からブック型中心へと傾くなか、ブック型を欠いたままでは、50%の牙城を守ることすら難しくなります。Razr Foldの投入は「新カテゴリへの野心的挑戦」というより、「すでに傾き始めた船の重心を取り直す」作業に近い、と読み解くのが妥当でしょう。
1,899ドルという”折衷点”——後発の位置取り
Razr Foldの価格戦略には、モトローラらしい「中庸」のにおいが漂います。米国向けリーク価格は1,899.99ドル。Galaxy Z Fold 7が1,999ドル台からであることを踏まえれば、わずかながらサムスンを下回ります。一方、年内の登場が噂されるアップルのiPhone Foldは約2,400ドルと見込まれており、三者の価格序列は「モトローラ<サムスン<アップル」が仮に成立することになります。
スペックに目を移すと、搭載チップはSnapdragon 8 Gen 5——サムスンGalaxy S26 Ultraに採用されるフラッグシップ級のSnapdragon 8 Elite Gen 5ではなく、その一段下の「ハイエンド値頃」クラスです。内部8.1インチ・外部6.6インチのP-OLED、16GB RAM、6,000mAhバッテリー、80W有線・50W無線充電を備えます。カメラは50MPのSony Lytia 828メインに加え、50MP超広角、光学3倍の50MP望遠(ペリスコープ)という3眼構成です。注目すべきは、書き込みに使えるスタイラス対応を明示している点で、これはGalaxy Z Fold 7や、公式スペックでスタイラス対応を打ち出していないPixel 10 Pro Foldとの明確な差別化ポイントです。
読み取れるのは、「最高スペックで殴り合う」のではなく、「生産性用途に振ったブック型」として差別化しようとする姿勢です。親会社レノボのThinkPad的な文脈——娯楽より業務、指よりペン——を折りたたみスマートフォンに持ち込もうとしている、とも言い換えられるでしょう。Razr Foldに搭載予定の新AIプラットフォーム「Qira」がレノボ全社のデバイスに横展開されることも発表されており、PC・スマートフォン・ウェアラブルを横断するエコシステムの駒として、Razr Foldは位置づけられているようにも見えます。
アップル参入前、モトローラは何を確立できるか
時間軸の設計も、この発表の読みどころです。Razr Foldの米国発売は2026年5月21日と報じられています。他方、アップルのiPhone Foldは2026年秋、iPhone 18 Proシリーズとの同時発表が噂されています。IDCはアップルが参入初年度に、折りたたみ市場の台数ベースで22%、金額ベースで34%を握るとの大胆な予測を出しました。
この予測が現実に近づけば、モトローラがRazr Foldで独占的に戦える時間は、5月下旬から9〜11月までのおよそ4〜6か月ということになります。この短い時間のあいだに、ブック型Razrのブランド認知、主要アプリの最適化、Qira AIやスタイラスを含む生産性ソフトウェアの実地評価を積み上げられるかが試されることになりそうです。
もうひとつ留意したいのは、モトローラの50%シェアが「低価格フリップ」に依存してきた構造です。699ドルからのRazrベース(2025年モデル)と1,099ドルからのGalaxy Z Flip 7——その400ドルの価格差が、米国の買い手を動かしてきました。しかしブック型で1,899ドルという価格帯は、これまでモトローラを手に取ってきた層とは異なる顧客に届ける必要があります。Razr Foldの主戦場は「既存のモトローラ・ユーザーを引き上げる」ことではなく、「サムスンを使ってきたユーザーを奪う」ことになる公算が高い——そう見ておくのが自然でしょう。
同じ日に発表される3機種のフリップ——Razr 2026、Razr Plus 2026、Razr Ultra 2026——は、既存シェアの防衛を担います。Razr Foldはその足場に乗って、これまでモトローラが立ったことのない場所へ踏み出すための一手です。それが4月29日の正式発表で、どれだけの輪郭をもって立ち上がるのか。各モデルの値上げ幅——ベースとPlusが100ドル、Ultraが200ドル——が米国の消費者にどう受け止められるのか。発表後の店頭反応と、5月21日の実発売時のキャリアの扱いを見ていくと、2026年の折りたたみ市場の勝敗が、早くも輪郭を帯びてくるのかもしれません。
【用語解説】
Razr Fold(レイザー フォールド)
モトローラが2026年に投入する初のブック型折りたたみスマートフォン。縦に折りたたむ従来のRazrフリップ型とは異なり、タブレットのように横に開く形状。内部画面8.1インチ、外部画面6.6インチのP-OLEDを採用。
フリップ型 / ブック型
フォルダブルスマートフォンの2大フォームファクター。フリップ型は縦折りで携帯時のコンパクトさが特徴(RazrシリーズやGalaxy Z Flip)。ブック型は横折りで展開時に大型タブレット画面として使えるのが特徴(Galaxy Z Fold、Pixel 9 Pro Fold等)。
Snapdragon 8 Gen 5
Qualcomm製のハイエンドスマートフォン向けSoC(システム・オン・チップ)。Razr Foldに搭載予定。同じQualcommの最上位「Snapdragon 8 Elite Gen 5」より一段下のクラスにあたる。
P-OLED(ピー・オーレッド)
Plastic OLEDの略。ガラス基板の代わりに樹脂(プラスチック)フィルムを使った有機ELディスプレイ。折りたたみデバイスの柔軟な画面に広く採用されている。
ペリスコープカメラ
プリズムを使って光を90度屈折させ、薄い筐体内に長い焦点距離のレンズを収める構造のカメラ。望遠機能を持ちながらカメラの出っ張りを抑えられる。Razr Foldは光学3倍の50MP望遠にこの方式を採用。
Qira(キーラ)
モトローラとレノボが開発した新AIプラットフォームの名称。スマートフォンだけでなく、レノボのPC・ウェアラブルなど複数デバイスへの横展開が予定されている。
Counterpoint Research
スマートフォン・通信機器市場に特化した調査会社。フォルダブル市場の成長予測など、細分化されたセグメント調査を強みとする。
【参考リンク】
Motorola Razr シリーズ(公式)(外部)
Razrフリップ型・Razr Foldのラインナップ、スペック、購入情報を確認できるモトローラ公式ページ。
Qualcomm Snapdragon 8シリーズ(公式)(外部)
Razr Foldに搭載予定のSnapdragon 8 Gen 5を含む、Qualcommのフラッグシップ・スマートフォン向けプロセッサの公式情報。
【参考記事】
Motorola Razr 2026 series — everything we know about the Razr, Razr Plus, Ultra, and Fold(Android Authority)
DealabsリークをもとにRazrファミリー全4モデルの価格・スペック・米国発売日(5月21日)を詳報。本記事の価格情報の主要出典。
Motorola now commands 50% of the US foldable market(Android Authority)
IDCアナリスト発言をもとにモトローラの米国50%・グローバル14%シェアを報告。編集部解説における市場分析の根拠。
Book-style foldable phones set to dominate 2026 market, says Counterpoint(Android Headlines)
Counterpoint ResearchによるブックVSフリップ型シェア予測(2026年65%ブック型)を詳報。フォルダブル市場の構造変化を示す。
Apple iPhone Fold may redefine foldable market in 2026, says IDC(The Hans India)
IDCによるiPhone Fold参入予測。初年度に台数シェア22%・金額シェア34%、価格約2,400ドルという大胆な数字を報告。
The reason why Motorola isn’t making a book-style foldable(2023年)(Trusted Reviews)
2023年当時、モトローラがアプリ最適化不足を理由にブック型参入を見送っていた経緯を伝えた独自レポート。今回の路線転換を読み解く歴史的文脈として参照。
Pre-order details for Motorola’s first book-style foldable surface(Gizmochina)
Razr Foldの詳細スペック(Snapdragon 8 Gen 5、16GB RAM、6,000mAh、80W/50W充電)とプレオーダー情報を報告。
【編集部後記】
フリップを手のひらで閉じる小さな動作と、ブック型を開いたときに目の前に広がる画面の面積。2026年の折りたたみスマートフォンは、どちらの所作を日々に取り込むかという問いを私たちに差し出しています。4月29日にモトローラが並べる4機種は、その選択肢の輪郭を一段はっきりさせるはずです。発表で示される数字と、やがて手に取ったときの感触——その両方に触れながら、この新しいカテゴリーの地形を見ていきたいところです。











