GPT-Live-1がAPIで提供開始、音声層は1分0.05ドル

[最終更新]

Googleで優先するソースとして追加するボタン

利用者が考え込んで黙っている間も、裏で処理を待っている間も、メーターは回り続けます。9月にAPIで使えるようになったGPT-Live-1は、会話を時間で数える音声モデルです。しかもOpenAIは、安いモデルを選べば安く済むとは限らないと自ら書いています。値札の分け方から、音声エージェントの物差しの変化を読み解きます。


OpenAIは2026年9月10日、音声モデルGPT-Live-1をAPIで提供開始した。7月にChatGPTで公開したモデルで、聞くことと話すことを同時に行い、推論やツール呼び出しはGPT-6 Astraや他社モデルなど背後のモデルに委任できる。料金は音声層が1分0.05ドルで、背後のモデルとツールは別に課金される。Full Duplex BenchではGPT-Realtime-2.1を30パーセントポイント上回り、GPT-6 Astraを中程度の推論強度で組み合わせるとTau3で1位になった。

Speakは初期評価で、学習者が考え込む間の割り込みが従来のターン制システムより約80%減ったとしている。電話回線での運用に対応し、声を12種類追加した。

From: 文献リンクBuild more natural voice experiences with GPT-Live-1 in the API

【参考動画】

ChatGPTデスクトップ版で、GPT-Liveを使ってChatGPT WorkやCodexの複数の作業を指示する様子を紹介する公式動画。

【編集部解説】

7月、ChatGPTの音声機能としてGPT-Liveが登場したとき、注目を集めたのは「聞きながら話す」会話の手触りでした。相づちを打ち、考え込む相手を待ち、難しい問いは裏側の別のモデルに任せる。会話を担う層と、深い推論や複雑な作業を担う層を切り分ける設計です。

その設計が、今回APIとして開発者の手に渡りました。私がいちばん興味深く読んだのは、機能の一覧よりも値札の分かれ方です。

2つのメーター

GPT-Live-1の料金は、音声の層が1分0.05ドルです。秒単位で課金され、1分に切り上げられることはありません。一方、背後のモデルとツールの利用料は、それぞれに適用される料金で別に請求されます。

比較のために、7月6日に公開され、今回の性能比較にも使われたGPT-Realtime-2.1を見てみます。Realtimeでは1つのモデルが音声、推論、ツール選択を担い、利用料はトークンの量で決まります。音声は100万トークンあたり入力32ドル、出力64ドルです。

GPT-Live-1では、メーターが2つに分かれました。会話は「時間」で、深い推論は主に「トークンの量」で測る。7月に示された二層設計が、APIでは請求書の構造にも現れたと言えます。

時間で測るということ

時間課金には、見落としやすい性質があります。OpenAIの料金ガイドによれば、課金の対象はセッションを開いている時間全体で、利用者が黙っている時間や、背後の処理を待っている時間も含まれます。マイクをミュートしてもセッションは閉じません。

つまり、利用者を待たせる設計は、そのままコストになります。OpenAI自身も、会話の前に分かっている情報を渡しておく、背後の処理を速くする、長い作業の間はいったんセッションを閉じて結果が出たら呼び戻す、といった工夫を勧めています。

体験の良さと費用の安さが、同じ方向を向く。音声エージェントの設計として、健全な物差しだと感じます。

単価ではなく、1件あたりで比べる

背後のモデルは開発者が選べます。OpenAIは例として、予約や注文状況の確認のような大量の定型業務にはGPT-5.6 Lunaを、推論が必要な複雑な問い合わせにはGPT-6 Astraを挙げています。

ここで大切なのは、安いモデルを選べば安く済むとは限らない点です。料金ガイドは、安いモデルが遠回りしたり失敗したりすれば総額はかえって高くなり、高いモデルでも早く片づけば音声の時間が縮んで安くなりうると明記しています。比べるべきは単価ではなく、用件を1件やり遂げるまでの総額です。

これは音声に限らず、AIを業務に組み込むときの損得の考え方が「トークン単価」から「成果1件あたり」へ移りつつあることの、ひとつの表れだと私は見ています。

開発者に残る仕事

構成が単純になった効果は、顧客の声にも表れています。医療の予約などを手がけるEliseAIのトニー・ストヤノフ氏(共同創業者兼CTO)は、従来の連結型の構成と比べてコードが80%簡素になり、2万3000行を削れたと述べています。語学学習のSpeakは初期評価で、学習者が考え込んでいる間の割り込みが、従来のターン制システムと比べて約80%減ったとしています。

一方で、音声モデルがすべてを引き受けるわけではありません。権限の管理、利用者への確認、実際の処理の実行、作業の状態の保存は、アプリケーション側の役割と位置づけられています。発話を遮っても、背後で始まった処理は自動では止まりません。電話口で「やっぱり取り消して」と言われたときに何が起きるかは、開発者が設計する領域です。会話が自然になるほど、その裏で動く業務の確かさが問われるようになります。

日本の現場にとって

電話回線での運用に対応したことは、日本の予約受付やコールセンターにとっても身近な話題です。今回の発表で音声対話にGPT-Live-1を使うとされた企業向けのOpenAI Presenceでは、7月の発表の時点で、ソフトバンクが自然な日本語での顧客対応を試しており、現場のチームが自然さと正確さを高く評価したと紹介されていました。ただ、APIで組み込んだ場合に日本語でどこまで自然に話せるかは、実際に試して確かめることになります。OpenAIは7月の時点で、言語によってはなまりや流暢さに課題が残りうると自ら挙げていました。9月のAPI発表では、声の選択肢と対応言語を今後数か月で広げるとしています。なお、SpeakとEliseAIの数値は、いずれも発表ページに掲載された顧客企業側の説明です。

安心材料もあります。OpenAIは7月31日、GPT-Liveで生成した対象の音声にSynthIDの透かしを入れ、APIで作った音声もその対象に含めました。声がこれほど自然になると、なりすまし電話への不安は避けて通れません。出どころを後から確かめられる仕組みが用意されているのは、事業者にとっても利用者にとっても心強い点です。

声が「窓口」になる

従来型の電話自動応答の多くは、「1番を押してください」と、人間の側が機械に合わせるものでした。GPT-Live-1が開くのは、機械の側が人間の会話の間合いに合わせる窓口です。Yelpでは、電話をかけてきた人が、よりまとまった自然な文で話すようになったといいます。人が機械に合わせるのをやめたとき、窓口の向こうの業務がどう組み替わっていくのか。これから各社の実装が、その答えを見せてくれるはずです。

【関連記事】

GPT-Live登場──OpenAIの新音声モデルが「聞きながら話す」全二重で人間の会話に近づく
7月8日のChatGPT版GPT-Live発表を扱った記事。会話を担う層と推論を担う層を分ける設計思想を詳しく紹介している。

ChatGPT Voiceがデスクトップに、声だけで複数エージェントを指揮する時代へ
ChatGPT VoiceのデスクトップでGPT-Liveが会話を担い、背後のモデルが複数のエージェント作業を束ねる構成を解説。

GPT-Transcribe登場、OpenAIが文字起こしをライブと収録で分ける設計へ
OpenAIが7月にAPIへ追加した文字起こしモデル2種を扱う記事。ライブ用と収録用に分けた設計と、誤り率の変化を比べている。

【解説】成果課金の論点は「解決の定義」へ|OpenAIは物差しを変えた
成功した1件あたりのコストで比べるOpenAIの物差しを解説。Presenceでのソフトバンクの日本語テストにも触れる。

【解説】GPT-6 Astra|見出しの数字より17個の注釈を読む
9月3日公開のGPT-6 Astraを、料金や提供条件などの注釈から読み解く記事。背後のモデルを選ぶ際の判断材料になる。

【編集部後記】

GPT-Live-1のモデルページには、知識の区切りとして2025年7月31日という日付が載っています。

声の層そのものは、その日より後の出来事を学んでいません。新しい情報を扱う場面では、検索や判断を背後のモデルに任せる設計です。耳に届く声の賢さの多くは、声の向こうにいる別のモデルのものでもあります。

AIの電話窓口で答えを受け取ったとき、その答えを出したのがどのモデルなのかを、利用者は知らされるべきでしょうか。


【用語解説】

Full Duplex Bench
全二重(聞きながら話す)の音声対話モデルを評価するベンチマークの系列である。ターンの受け渡しや割り込みへの反応などを測る。2026年4月公開のv3は、言いよどみを含む実際の音声でのツール利用も評価対象にしている。

Tau3
OpenAIが今回示した評価の一つである。航空・小売・通信の顧客対応タスクを音声でやり遂げられるかを、1回目の試行での成功率(Pass@1)で測る。

ターン制システム
利用者が話し終えるのを待ってから応答する方式の音声対話である。相手が話している間、システムは聞くか話すかのどちらか一方しかできない。

委任
GPT-Liveが、推論やツール呼び出しを背後のモデルやアプリケーションに任せることである。OpenAI側で背後のモデルを呼び出す方式と、アプリケーション側で処理を担う方式の2種類がある。

GPT-Realtime-2.1
2026年7月6日に公開された、Realtime API用の音声モデルである。GPT-Realtime-2を更新し、英数字の聞き取り、無音や雑音の扱い、割り込み時のふるまいを改善した。

GPT-6 Astra
OpenAIが2026年9月3日に公開した、同社がこれまで広く提供した中で最も高性能とするモデルである。今回の発表では、背後で推論を担うモデルの例として挙げられている。

GPT-5.6 Luna
2026年7月に公開されたGPT-5.6ファミリーのうち、大量処理向けの効率を重視したモデルである。7月30日に料金が80%引き下げられた。

連結型の構成
音声認識、言語モデル、音声合成を順につなぐ音声エージェントの構成である。英語ではカスケード型と呼ばれる。段を渡るたびに遅延が生じやすい。

セッション
GPT-Liveで1回の音声会話を始めてから終えるまでの単位である。音声層の料金は、この時間に対して秒単位でかかる。

トークン
AIモデルが処理する文字や音声の小さな単位である。多くのモデルの利用料はトークンの量で決まる。

SynthID
Google DeepMindが開発した電子透かしの技術である。生成した画像や音声などに人が知覚しにくい目印を埋め込み、後から出どころを確かめられるようにする。

【参考リンク】

GPT-Live 1 Model | OpenAI API(外部)
GPT-Live-1のモデル仕様ページ。1分0.05ドルの秒課金、対応する機能、利用段階ごとの同時セッション数の上限を掲載している。

Getting started with GPT-Live | OpenAI API(外部)
GPT-Liveの公式導入ガイド。会話を担う層と背後の処理の分担、2種類の委任方式、ブラウザや電話との接続方法を解説している。

Cost optimization | OpenAI API(外部)
GPT-LiveとRealtime APIの費用の考え方をまとめた公式ガイド。無音時間も含む課金の範囲や、総額の計算例を示している。

GPT-Realtime-2.1 Model | OpenAI API(外部)
今回の比較対象となったRealtime API用の音声モデルの仕様ページ。音声・テキストのトークン単位の料金と対応機能を掲載している。

EliseAI(外部)
住宅と医療の分野で、電話やメール、チャットでの問い合わせ対応を自動化する会話AIを提供する企業EliseAIの公式サイト。

Speak(外部)
話すことに重点を置いたAI語学学習アプリSpeakの公式サイト。日本を含む各国の学習者が英語などの会話練習に使っている。

Yelp Host(外部)
Yelpが飲食店向けに提供するAI電話応答サービスYelp Hostの紹介ページ。予約や持ち帰り注文の受付、待ち時間の案内を担う。

【参考記事】

Introducing GPT-Live(外部)
ChatGPT版GPT-Liveの発表。言語によってはなまりが残りうるとの説明と、7月31日のSynthID導入の追記を含む。

OpenAI split a voice model’s brain. Then one team deleted 23,000 lines of code.(外部)
GPT-Live-1のAPI版を会話の層と推論の層の分割として紹介。EliseAIのコード2万3000行削減やSpeakの事例を報じる。

Full-Duplex-Bench-v3: Benchmarking Tool Use for Full-Duplex Voice Agents Under Real-World Disfluency(外部)
言いよどみや言い直しを含む実際の人間の音声で、全二重音声エージェントのツール利用を評価するベンチマークの論文。2026年4月公開。

Googleで優先するソースとして追加するボタン
投稿者アバター
山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

おすすめ記事