ノートPCを閉じると、手元で動くClaude Codeの作業は止まります。その前提を外す機能が、正式版になりました。注目したいのは、同時に配られたクレジットよりも、機能の呼び名が「Claude Code on the web」から「クラウドセッション」へ改められたことです。名前が指すものが、画面から、作業が進む場所へと移りました。
Anthropicは2026年9月23日(米国時間)、Claude Codeのクラウドセッションをリサーチプレビューから正式提供に移行した。クラウドセッションは既定ではAnthropicが管理する基盤で動作し、ノートPCを閉じても作業が続く。claude.ai/code、モバイルアプリ、デスクトップアプリ、CLIの「claude –cloud」から開始でき、GitHubの連携が必要である。既存のPro契約者には100ドル、Max契約者には250ドルの1回限りのクレジットが付与される。
クレジットはクラウドセッション専用で、開始時に自動で適用され、通常のプラン利用枠より先に消費される。受け取り期限は太平洋時間10月7日23時59分、利用期限は同11月4日23時59分である。
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ClaudeDevs|クラウドセッション正式提供の告知(X)
【編集部解説】
「Web版」から「実行する場所」へ
今回の発表には、見落とされやすい変化がひとつあります。名前が変わりました。2025年10月にリサーチプレビューとして始まったとき、この機能は「Claude Code on the web」と呼ばれていました。ブラウザから開発作業を頼める、という位置づけです。
正式提供にあたり、呼び名は「クラウドセッション」に改められました。公式ドキュメントが挙げる入口は、ブラウザ、スマートフォンのClaudeアプリ、デスクトップアプリ、ターミナルの「claude –cloud」、定期実行のルーティンの5つです。このうちブラウザの入口は、いまも「Claude Code on the web」と呼ばれています。入口がどこであっても、作業は手元のPCではなくクラウドで進みます。既定の実行先は、Anthropicが管理する仮想マシンです。名前の変更は、「どの画面から使うか」ではなく「どこで動くか」を指す言葉への切り替えだと読めます。
手元で動かすか、向こうで動かすか
8月23日の記事「Claude Codeが直したのは機能ではなく信頼性」は、Claude Codeを手元のPCで動かしたままスマートフォンから操作する形を取り上げていました。社内ネットワークの中にしかないデータベースや、端末に紐づいたライセンスを使う仕事には、「実行は手元、操作はどこからでも」が合う、という見立てです。
クラウドセッションは、その反対側の答えです。PCを閉じても、作業はクラウドで続きます。公式ドキュメントも、「–cloud」はクラウドに新しいセッションを作るもの、「–remote-control」は手元のセッションを外から操作するもので、両者は別物だと書き分けています。
二つの道具は行き来もできます。クラウドで進めた作業は「–teleport」で手元のターミナルに引き戻せますし、デスクトップアプリからは手元のセッションをクラウドへ送り出せます。長いテストや修正を向こうに任せ、仕上げは手元で行う。どちらか一方を選ぶのではなく、作業ごとに実行場所を振り分ける使い方が、正式に整ったと言えそうです。
安全面の設計も明記されています。Anthropicが管理する環境では、セッションはそれぞれ隔離された仮想マシンで動き、gitの認証情報や署名鍵はその外側に置かれます。コードを他社の基盤に預けることへのためらいに、仕組みで応えようとする姿勢がうかがえます。
クレジットが描く導線
既存のProとMaxの契約者には、1回限りのクレジットが用意されました。Proで100ドル、Maxで250ドルです。
公式の告知画像には、使い方の流れが3段階で描かれています。クラウドセッションを始め、ノートPCを閉じる。そして、手元で利用上限に達しても、クレジットが尽きるまでクラウドで作業が続く。上限に当たったその瞬間を、クラウドを試すきっかけに変える設計です。
発表の同日、Anthropicは料金の説明を補足し、混乱を招いたことを詫びました。補足によれば、クラウドセッションは他のClaude Codeと同じくプランの利用枠で動きます。クレジットはその上に乗る分で、先に消費され、使い切ると通常の枠に戻ります。告知にある「利用上限の外」が指すのは、クレジットの部分だけです。仮想マシンに別途の計算料金はかかりません。なお、100ドルがどれほどの作業量に当たるかは示されていません。
受け取り期限は太平洋時間10月7日23時59分、日本時間では10月8日(木)15時59分です。利用期限は太平洋時間11月4日23時59分、日本時間で11月5日(木)16時59分になります。受け取るには「claude.ai/code/claim-credit/10」を開くか、CLIで「/claim-credit」を実行します。セッションの開始にはGitHubの連携が必要です。
日本の現場で使うときに
クラウドセッションの正式提供の対象は、Pro、Max、Teamと、一部のシートのEnterpriseです。一方でクレジットはProとMaxの既存契約者向けで、Teamは含まれていません。
企業で導入を考える場合、組織の設定によっては使えないことがあります。IPアドレスの許可リストで接続元を絞っている組織では、Anthropicの基盤で動くクラウドセッションがそこからAPIを呼び出すため認証エラーになり、サポートへの例外申請が必要です。ゼロデータ保持(ZDR)を有効にしている組織も、クラウドセッションの機能は使えません。GitHub以外でコードを管理している場合も、手元のリポジトリをバンドルとしてクラウドへ送る方法はあります。ただし、結果をGitLabやBitbucketなどの元のリモートへ書き戻すことはできません。
逆に言えば、GitHubで開発していて、組織の設定にも制約がなく、手元の環境に縛られない作業であれば、条件はすでに揃っています。
PCを閉じてから始まる仕事
Claude Codeは、ターミナルで隣に座らせる相棒として広まりました。今回の正式提供で、仕事を渡して席を立つという任せ方が、標準の選択肢に加わります。
8月の記事が立てた問いは「手元の環境をどこまで手元に置いたままにするか」でした。その問いに、公式の答えが二つ並んだことになります。どの作業を手元に残し、どの作業を向こうへ渡すか。その線引きを考えること自体が、これからの開発の腕の見せどころになっていくのかもしれません。
【関連記事】
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手元で動くClaude Codeを、スマートフォンから起動して操作する仕組みを扱った記事。実行が手元に残る点で、今回と対になる。
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定期実行やGitHubのイベントで動くルーティン機能を公開した際の記事。ルーティンの各実行も、クラウドセッションとして動く。
【編集部後記】
名前の変遷は、コマンドにも残っています。クラウドセッションを始める「–cloud」には、以前の名前の「–remote」が、非推奨の別名として残っています。
これまで「remote」の語は、クラウドで動かす側と、手元のセッションを外から操る「–remote-control」の両方にありました。クラウドの側が「–cloud」に改まり、「remote」を名乗るのは後者だけになりました。遠くにいるのは作業場ではなく自分のほう。その使い分けに、道具の重心の置き方が表れているように見えます。
【用語解説】
クラウドセッション(cloud sessions)
手元のマシンではなくクラウド上の環境で動くClaude Codeのセッション。既定ではAnthropicが管理する基盤で動き、ノートPCを閉じても作業が続く。旧称はClaude Code on the webで、ブラウザからの入口はいまもこの名で呼ばれる。
リサーチプレビュー
正式提供の前に、利用者の反応を集めながら仕様を固めていく試験的な公開の形態。提供中に仕様が変わることがある。
CLI(Command Line Interface)
ターミナルに文字でコマンドを打ち込んで操作する方式。Claude Codeはもともとこの形で提供されてきた。
仮想マシン(VM)
1台の物理的なコンピューターの上に、ソフトウェアで作られた独立したコンピューター。クラウドセッションでは、セッションごとに隔離された仮想マシンが割り当てられる。
ルーティン
Claude Codeの作業を、決まった時刻、APIの呼び出し、GitHubのイベントをきっかけに自動で実行する機能。実行のたびにクラウドセッションとして動く。
–remote-control / –teleport
どちらもClaude Codeのコマンドの指定。「–remote-control」は、手元で動くセッションをスマートフォンやブラウザから操作するためのもの。「–teleport」は、クラウドで進めたセッションを手元のターミナルに引き戻すためのもの。
ゼロデータ保持(ZDR:Zero Data Retention)
AIとのやり取りの内容を、事業者側に原則として保存しない契約上の取り決め。有効にしている組織は、クラウドセッションの機能を使えない。
IP許可リスト
接続元のIPアドレスを登録したものだけにサービスの利用を認める設定。組織の情報漏洩対策として使われる。
バンドル
gitリポジトリを、履歴ごと1つのファイルにまとめたもの。GitHub以外で管理しているコードをクラウドセッションへ送るときに使う。
【参考リンク】
Anthropic(外部)
Claudeを開発する米国のAI企業。AIの安全性の研究を軸に、大規模言語モデルとそれを使った製品群を開発・提供している。
Claude Code(claude.ai/code)(外部)
ブラウザからClaude Codeのクラウドセッションを開始し、進み具合を確認できる公式の画面。GitHubとの連携が前提。
GitHub(外部)
ソースコードの管理と共同開発のためのサービス。クラウドセッションでは、リポジトリの複製とプルリクエストの作成に使われる。
【参考記事】
Claude Code on the web(外部)
2025年10月にリサーチプレビューとして公開した際の公式ブログ。冒頭に、2026年9月23日付で正式提供と改名の追記がある。
Use Claude Code in the cloud(外部)
クラウドセッションの公式ドキュメント。実行環境、–cloudと–teleport、隔離の仕組み、利用上の制約をまとめている。
ClaudeDevs(X)の料金に関する補足(外部)
@ClaudeDevsが発表当日に出した料金の補足。クラウドセッションはプランの利用枠で動き、クレジットが先に消費されると説明。


















