WordPressとAIをつなぐ公式プラグイン「MCP Adapter」が、管理画面から検索して入れられるようになりました。ところが公式の説明には、このプラグイン自体はAI機能を持たない、とはっきり書かれています。入れた先で何ができて、何がまだできないのか。入口と、その先にある中身を分けて見ていきます。
WordPress.orgは、WordPressのアビリティをModel Context Protocol(MCP)のツール、リソース、プロンプトとしてAIエージェントに公開するプラグイン「MCP Adapter」を、公式プラグインディレクトリに掲載した。「AI Building Blocks for WordPress」の一部に位置づけられ、管理画面の「プラグイン」→「新規追加」から検索してインストールできる。
動作要件はWordPress 6.9以上、PHP 7.4以上である。2026年10月2日付のバージョン0.7.0では、MCPの2025-11-25と2026-07-28の2つのリビジョンに対応した。あわせて、ほかのプラグインに同梱するライブラリとしての利用を非推奨とした。
From:
MCP Adapter – WordPress plugin | WordPress.org
【編集部解説】
MCP Adapterはこれまで、GitHub上で開発・配布されてきました。導入には、GitHubで配布されるZIPファイルを入れるか、開発者がComposerで自分のプラグインに組み込む方法が案内されていました。公式ディレクトリに載ったことで、ほかのプラグインと同じ画面から名前で探して入れられます。
WordPressのAI対応は、WordPress 6.9でAbilities APIがコアに入ったところから本格化しました。MCP Adapterは、その上で「外部のAIがWordPressを呼び出す」側の入口を受け持つ部品です。
アビリティとは、WordPressのコアやプラグインが「この操作ができます」と登録しておく単位のことです。投稿を読み出す、設定を更新する、といった操作が1つずつ、入力と出力の形、実行に必要な権限とあわせて登録されます。MCP Adapterは、この登録内容をClaudeなどMCPに対応したAIクライアントが読める形に変換し、窓口として公開します。
ここで押さえておきたいのは、公式FAQがMCP Adapter自体はAI機能を持たないと明記している点です。入れた瞬間にAIが下書きを保存できるようになるわけではありません。AIにできることは、そのサイトに登録されたアビリティの範囲で決まります。導入手順の3番目に「公開したいアビリティを登録するか、登録してくれるプラグインを入れる」と書かれているのは、そのためです。
公開の仕組みも、慎重な側に倒して設計されています。標準のMCPサーバーから呼び出せるのは、公開対象として指定されたアビリティです。標準の接続ではWordPressユーザーとしての認証が求められ、実行の前には、アビリティごとに登録された権限確認が走ります。どの操作にどの権限を求めるかは、アビリティを作った側が決めます。必要な権限をきちんと確かめる作りであれば、AIの操作も、接続したユーザーに許された範囲にとどまります。
裏返すと、AIに渡す鍵の重さは、どのユーザーで接続するかと、どのアビリティを公開するかの組み合わせで決まります。下書きの保存だけを任せたいなら、管理者ではなく、その作業に足りる権限のユーザーで接続するのが筋です。使うアビリティが必要な権限を確かめているかも、あわせて見ておきたいところです。WordPressが長年使ってきた権限グループの考え方は、AIとの付き合い方にもそのまま役立ちます。
公式のAIプラグインも同じ方向を向いています。8月のバージョン1.3.0では、プラグインが持つ独自のアビリティを外部に公開するかどうかを、管理画面の設定ひとつで選ぶ方式に変えました。
今回の更新で、もう一つ見ておきたいのが0.7.0の変更点です。ほかのプラグインに同梱するライブラリとしての使い方が非推奨になり、MCP Adapterはサイトに1つ入れて共有する「プラグイン」として扱う方針が示されました。開発者向けには、自分のプラグインの見出し情報に Requires Plugins: mcp-adapter を書き、依存関係として宣言するよう案内しています。
これまでは、MCPに対応したいプラグインが、それぞれ自分の中にMCP Adapterを抱える形も取られてきました。8月の0.6.0で、複数のコピーが同居したときに新しい版が使われる仕組みを入れたのは、その状態への手当てです。0.7.0はそこから一歩進み、配布元を1か所にまとめる方向へ舵を切りました。公式ディレクトリは、その形を成り立たせる配布経路になります。
MCPそのものも動きの速い規格です。0.7.0では2026年7月付の新しいリビジョンに対応しました。このリビジョンでは、接続ごとのセッションと最初の初期化のやり取りがなくなり、サーバーの対応状況を問い合わせる仕組み(server/discover)が加わっています。規格の更新を各プラグインが個別に追いかけるより、共有のMCP Adapterが受け止めてくれるほうが、サイト運営者にとっても開発者にとっても負担は小さくなります。
一方で、バージョン番号はまだ0.xです。0.7.0にも破壊的変更が含まれており、独自の通信方式を組んでいた場合や、削除された検証用のクラスを使っていた場合は、公式の移行ガイドに沿った対応が要ります。ほかのMCPプラグインから乗り換える場合も、どのアビリティが公開されるかを一度確かめてから切り替えると安心です。
8月にXServer for WordPressのAPI対応を取り上げた際は、同社の「XServer MCP Server」が同サービスに対応したことは確認できませんでした。ただ、そちらはサイトの作成やバックアップといったホスティングの管理を扱うものです。今回のMCP Adapterは、WordPressサイトの中の機能をMCPで公開する入口で、役割が異なります。WordPress 6.9以上・PHP 7.4以上という要件を満たすサイトであれば、公式ディレクトリからプラグインとして導入できます。
これからの焦点は、入口の先にあるアビリティの充実に移ります。WordPressのAIチームは、コンテンツの検索、作成、更新、削除を別々のアビリティに分ける構成を、WordPress 7.2でコアに取り込むことを目標に検討しています。入口が公式に整った今、AIにどこまでを任せられるかは、アビリティが1つ増えるごとに広がっていきます。
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【編集部後記】
MCP Adapterが新しく並んだ公式プラグインディレクトリには、2026年3月から、それ自体のMCPサーバーが用意されています。AIの開発ツールから、ガイドラインの参照や申請状況の確認、プラグインの申請までを行える仕組みで、土台にはAbilities APIとMCP Adapterが使われています。
配布の窓口のほうが、同じ部品で一足先にAIへ開かれていたわけです。その入口が、今度は一つひとつのサイトに届きました。あなたのサイトなら、最初にどの操作をAIに任せてみますか。
【用語解説】
MCP(Model Context Protocol)
AIアプリケーションを外部のシステムやツールにつなぐためのオープン標準。システムができることを「ツール」「リソース」「プロンプト」として公開すれば、MCP対応のAIクライアントから共通の方法で使える。
Abilities API/アビリティ
WordPress 6.9でコアに入った仕組み。コアやプラグインが持つ機能を、入力・出力の形や権限の確認方法とあわせて「アビリティ」として登録し、人にも機械にも分かる形で公開できる。
AI Building Blocks for WordPress
WordPressのAIチームが進める取り組みの総称。Abilities API、MCP Adapter、AI Clientなど、AI連携の土台となる部品をそろえる。
公式プラグインディレクトリ
WordPress.orgが運営するプラグインの配布場所。ここに載ったプラグインは、WordPressの管理画面から検索してインストールでき、更新も管理画面で受け取れる。
Composer
PHPのライブラリ管理ツール。開発者が、必要な部品を自分のプラグインやアプリケーションに組み込むときに使う。
Requires Plugins
WordPressのプラグインが、動作に必要な別のプラグインを宣言するための見出し項目。
リビジョン(MCP)
MCP仕様の版。「2025-11-25」のように公開日で呼ばれる。
server/discover
MCPの2026-07-28版で加わった仕組み。サーバーが、対応する仕様の版や機能、自身の情報を返す。
破壊的変更
ソフトウェアの更新のうち、これまでの使い方や連携していたコードが、そのままでは動かなくなる変更。
【参考リンク】
MCP Adapter(WordPress.org)(外部)
WordPressのアビリティをMCPのツールやリソースとして公開する公式プラグイン。導入方法、FAQ、変更履歴を掲載する。
WordPress/mcp-adapter(GitHub)(外部)
MCP Adapterの開発リポジトリ。導入ガイドや権限設定の解説、0.7.0の移行ガイドなどの技術文書がまとまっている。
MCP Adapter 0.7.0 移行ガイド(GitHub)(外部)
0.7.0の破壊的変更への対応手順。他のプラグインに同梱していたライブラリを外し、依存プラグインとして宣言し直す方法を示す。
Model Context Protocol「Key Changes」(外部)
AIアプリケーションと外部のシステムをつなぐオープン標準MCPの仕様書。2026-07-28版で加わった変更点を一覧にしている。
Abilities API in WordPress 6.9(Make WordPress Core)(外部)
WordPress 6.9でコアに入ったAbilities APIの開発者向け解説。アビリティの登録とREST APIでの公開を説明する。
【参考記事】
What’s new in AI 1.3.0 (18 AUGUST 2026)?(外部)
公式AIプラグイン1.3.0のリリース解説。独自のアビリティを外部に公開するかを、管理画面の設定ひとつで選べる方式に変えた。
AI Contributor Weekly Summary – 19 August 2026(外部)
AIチームの週次議事録。コンテンツの検索・作成・更新・削除を分けるアビリティを、WordPress 7.2でコアに入れる目標を示した。
AI Contributor Weekly Summary – 2 September 2026(外部)
AIチームの週次議事録。MCP Adapterを公式ディレクトリへ申請する準備と、新しいMCPリビジョンへの対応状況を伝える。
Key Changes(MCP Specification 2026-07-28)(外部)
MCP仕様2026-07-28版の変更点。プロトコル上のセッションと初期化のやり取りを撤廃し、server/discoverを加えた。

















