【解説】Spotify、AIペルソナ選択の曲にバッジ出ず クレジットに「AI」の印

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DistroKidで「AIペルソナ」を選んで配信した曲の、Spotifyでの姿を確かめました。プロフィールにバッジは出ていません。AIの表示は、スマートフォンの楽曲クレジットで、アーティスト名の役割に付いた小さな「AI」の印でした。パソコンで同じ画面を開くと、その印は消えます。

筆者は2026年10月1日、イラストの架空の二人組Half Bitten Apple Clubの曲「りんごの色」を、DistroKidで配信申込した。AIクレジットでは楽曲と音声すべてをAI生成と申告し、アーティストを「AIペルソナ」と選んだ。曲は10月9日にSpotifyで公開された。10月11日の時点で、アーティストのプロフィールにAIペルソナのバッジは表示されていない。スマートフォンの楽曲クレジットでは、メインアーティスト、作曲家、オーディオの3つの役割に「AI」の印が付いた。パソコンのクレジットには印がなく、作曲家とオーディオに「GenerativeAI」という名前が表示された。作詞家は筆者の名前だけで、印は付いていない。

DistroKidで選んだ「AIペルソナ」は、Spotifyでどう表示されるのか。配信前に書いた記事「【解説】SpotifyがAIペルソナのバッジ導入を発表、DistroKidの画面で確かめた」では、この問いを配信後に確かめると約束していました。

答えは、プロフィールのバッジではありませんでした。AIの表示は、曲のクレジットの中に、役割ごとの「AI」の印として現れました。 しかも、現在のベータ版では、その印をリスナーが見られるのはモバイルだけです。

曲はSunoで生成し、その音源に合わせて、歌詞の文字が画面に飛び込むMVも作りました。その手順は「Sunoの曲を、歌詞が飛ぶMVにしてみた」に書いています。今回は、その曲が配信された先の画面を読みます。

配信までの時系列

時期 出来事 出典
2026年8月11日 Spotify、AIペルソナのバッジ導入を発表。自己申告の受け付けを開始 前編
2026年10月1日 筆者、DistroKidで「りんごの色」を配信申込。楽曲と音声すべてをAI生成と申告し、「AIペルソナ」を選択 前編
2026年10月2日 配信前の記録として、前編を公開 前編
2026年10月9日 Spotifyで配信開始 Spotifyのシングルのページ
2026年10月11日 筆者、パソコンとスマートフォンで表示を確認 筆者の画面(図1〜3)

プロフィールに、バッジはなかった

10月11日の朝、パソコンとスマートフォンの両方で、Half Bitten Apple Clubのアーティストのプロフィールを開きました。名前の横に、「AI Persona」のバッジも、Spotifyの審査で付く「Likely AI Persona」のバッジもありませんでした。

Spotifyのスマートフォンアプリで表示した、Half Bitten Apple Clubのアーティストのプロフィール。名前の横にバッジはなく、月間リスナー0人と表示されている
配信開始から2日後のアーティストのプロフィール。名前の横にバッジはない(2026年10月11日、画像:筆者のスマートフォンの画面)

このときの月間リスナーは0人、「りんごの色」の再生数は「1000未満」の表示でした。10月9日の配信開始から、2日後の表示です。

Spotifyの公式ヘルプによると、バッジが出る場所は4つあります。プロフィールの名前の横、プロフィールの「About」内のバッジの欄、スマートフォンの検索結果、そしてプレイリストの曲の行です。今回、筆者が見たのは、このうちプロフィールの名前の横です。

バッジがなかった理由は、画面からは一つに絞れません。Spotifyは、写実的でない架空のキャラクターをバッジの対象外としています。審査は、一定のリスナー規模に達したアーティストから始めたと説明しています。さらに、バッジはアプリに順次展開している途中で、まだ見えない場合がある、とも注記しています。どの理由で付いていないのかは、今の時点では分かりません。

「AI」の印は、曲のクレジットに出た

AIの表示が見つかったのは、スマートフォンで曲を開き、メニューから楽曲クレジットを表示したときです。

Spotifyのスマートフォンアプリの楽曲クレジット。メインアーティスト、作曲家、オーディオの役割の横にAIの印が付き、作詞家には付いていない
スマートフォンの楽曲クレジット。メインアーティスト、作曲家、オーディオに「AI」の印が付いた(2026年10月11日、画像:筆者のスマートフォンの画面)

スマートフォンの楽曲クレジット

区分 名前 役割 AIの印
アーティスト Half Bitten Apple Club メインアーティスト あり
作曲&歌詞 Tatsuya Yamamoto 作詞家 なし
作曲&歌詞 GenerativeAI 作曲家 あり
パフォーマー GenerativeAI オーディオ あり
出典 NIJIMI PRODUCTION

注目したいのは、1行目です。「メインアーティスト」という役割に、「AI」の印が付いています。 DistroKidの公式ヘルプは、音声すべてをAI生成と申告したあとに出る「人間かAIペルソナか」の質問を、曲のアーティストのクレジットを正しく表示するためのものと説明しています。今回の表示は、その説明と整合しています。ただし、この選択がSpotifyのどの表示項目に対応するのかは、公式資料には示されていません。

Spotifyの公式ヘルプは、AIクレジットを、曲全体ではなく役割ごとに付くものと説明しています。歌詞、ボーカル、制作などの役割単位で、AIの関与を示す仕組みです。表2は、その説明どおりの姿をしています。

最下段の「出典」と、シングルのページの©・℗の表記には、申込時にレーベル名として指定したNIJIMI PRODUCTIONと同じ名前が出ていました。

パソコンでは、印が消えて名前が残る

同じクレジットを、パソコンで開くと、見え方が変わります。

Spotifyのパソコン版の楽曲クレジット。GenerativeAIが作曲家とパフォーマーとして並び、AIの印はない
パソコンの楽曲クレジット。「AI」の印はなく、GenerativeAIの名前だけが並ぶ(2026年10月11日、画像:筆者のパソコンの画面)

パソコンでは、どの行にも「AI」の印がありません。作曲家とパフォーマーの欄に、「GenerativeAI」という名前が、人の名前と同じ形で並んでいるだけです。

これは、Spotifyの公式ヘルプの説明と合っています。AIクレジットはベータ版で、リスナーにはモバイルでしか見えず、曲のクレジットと再生画面に表示される。アーティストのプロフィールや、曲単位のラベルには出ない、という説明です。

一方で、「GenerativeAI」という名前は、印のないパソコンにも出ています。筆者がDistroKidで入力したのは、AIクレジットのチェックとAIペルソナの選択で、この名前を自分で書いた覚えはありません。この名前がどこで付けられ、役割ごとの「AI」の印とどう関係しているのかは、DistroKidのヘルプにも書かれていません。

つまり、パソコンで聴く人には「AI」の印は見えませんが、クレジットを開けば、作曲とオーディオがAIによるものだと名前から読み取れます。

作詞家に印がない理由

作詞家の欄は、筆者の名前だけで、AIの印はありません。DistroKidでは歌詞のAIクレジットにチェックを入れておらず、表示はその申告と整合しています。

前編に書いたとおり、歌詞づくりにはAIを使い、筆者が手直しと推敲を重ねました。DistroKidがAIクレジットの対象とするのは、人間が書いたものでない歌詞で、AIを道具として使っただけの場合は対象外としています。筆者は、手直しを経た今回の歌詞は対象に当たらないと判断しました。

ただ、Spotifyの公式ヘルプは、同じ役割にAIと人間の両方が関わった場合、それぞれを分けてクレジットするよう案内しています。AIの案に手を入れた歌詞を、どこから「AIが生成した」と数えるのか。 両社の公式ヘルプには、その具体的な境界までは示されていません。

2つの仕組みを、もう一度分けて読む

前編で整理したとおり、SpotifyのAIペルソナのバッジとAIクレジットは、別々の仕組みです。配信後の画面は、その違いを、そのまま見せてくれました。

AIペルソナのバッジとAIクレジットの違い

AIペルソナのバッジ AIクレジット
何を示すか アーティストの見せ方が、写実的なAI生成の人物であること 曲の役割ごとのAIの関与
どこに出るか プロフィールの名前の横、About、モバイルの検索、プレイリストの曲の行 楽曲クレジットと再生画面(モバイルのみ)
誰が設定するか 自己申告(Spotify for Artists)、またはSpotifyの審査 配信代行会社を通して申告
筆者の画面(10月11日) 表示なし メインアーティスト・作曲家・オーディオに「AI」

イラストのキャラクターで活動するアーティストにとって、この結果は一つの目安になります。AIで作ったことは、クレジットで正直に示す。アーティストの顔は、写実的でない絵のまま保つ。 2つの仕組みが分かれているから、この両立が成り立ちます。

これから確かめたいことも残っています。バッジは順次展開の途中で、リスナーが増えれば審査の対象にもなりえます。Half Bitten Apple Clubの顔が、Spotifyにどう受け止められていくのか。10月の毎日1曲の企画を続けながら、画面の変化を記録していきます。

【関連記事】

【解説】SpotifyがAIペルソナのバッジ導入を発表、DistroKidの画面で確かめた
本記事の前編。配信申込の時点で、SpotifyとDistroKidの「AIペルソナ」という同じ言葉の意味の違いを整理した。

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【編集部後記】

スマートフォンのクレジットで、アーティストの役割に「AI」の印が付いているのを見たとき、少し不思議な気持ちになりました。ひいろとちーは、絵として描いた二人です。その二人の名前の横に、AIの印が並んでいます。

Spotifyの仕組みでは、顔は絵のまま、作り方はクレジットで示す、という分け方ができます。では、毎日新しい歌い手が生まれるこの企画で、その印は聴く人にどう読まれていくのか。31曲が並んだとき、もう一度この画面を開いてみます。


【用語解説】

AIペルソナ
Spotifyの公式ヘルプでは、公開上のアイデンティティが写実的なAI生成の人間であるアーティストを指す。音楽の作り方ではなく、アーティストとしての見せ方を問う。写実的でない架空のキャラクターは対象外である。

Likely AI Persona
Spotifyが審査し、プロフィールがAI生成のアイデンティティを表すと判断したときに付くバッジ。通知を受けたアーティストは、自己申告で確定するか、異議を申し立てられる。

AIクレジット
曲の特定の役割(歌詞、ボーカル、演奏、制作など)がAIで生成されたことを示す仕組み。配信代行会社を通して申告する。Spotifyでは現在ベータ版で、リスナーにはモバイルでのみ表示される。

楽曲クレジット
曲ごとに、アーティスト、作詞家、作曲家、演奏者などの参加者と役割を示す情報。Spotifyでは曲のメニューから開ける。

配信代行会社
アーティストに代わって、Spotifyなどの配信サービスへ曲とメタデータを届ける会社。本記事ではDistroKidを指す。

ベータ版
正式提供の前に、範囲を限って公開する段階の機能。仕様や表示が今後変わることがある。

【参考リンク】

Spotify for Artists「AI credits on Spotify」(外部)
SpotifyのAIクレジットの公式ヘルプ。役割ごとに付き、現在はベータ版で、リスナーにはモバイルでのみ表示されると説明している。

Spotify for Artists「AI Persona badges on Spotify」(外部)
AIペルソナのバッジの公式ヘルプ。対象の定義、自己申告の手順、審査で付くバッジ、バッジが表示される4つの場所を説明している。

DistroKid Help Center「How to Fill Out AI Credits」(外部)
DistroKidのAIクレジットの入力方法。4つの選択肢と、音声すべてを選んだあとの人間かAIペルソナかの質問を説明している。

DistroKid Help Center「What Are AI Credits?」(外部)
AIクレジットの対象の基準を示すヘルプ。AIが生成した音声・歌詞・楽曲を対象とし、道具として使っただけの場合は対象外とする。

Spotify「りんごの色 – Half Bitten Apple Club」(外部)
本記事で扱ったシングル「りんごの色」のSpotifyのページ。2026年10月9日リリースで、楽曲クレジットもここから開ける。

【参考記事】

Introducing a New Label for AI-Generated Artist Identities on Spotify(外部)
Spotifyが2026年8月11日にAIペルソナのバッジを発表した公式ニュース。自己申告と審査の2つの付き方を説明している。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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