Last Updated on 2024-10-08 07:24 by admin
ソフトバンク株式会社は2024年10月3日、「SoftBank World 2024」を開催した。13回目を迎えるこのイベントでは、「加速するAI革命。未来を見据え、いま動く。」をテーマに、AI活用の加速に向けた講演や展示が行われた。
特別講演には、ソフトバンクグループ株式会社の代表取締役 会長兼社長執行役員である孫正義氏が登壇した。孫氏は冒頭で、「人間の知能を1万倍超えるレベルのAI、超知性(ASI)が10年以内に実現する」と主張し、AGI(汎用人工知能)は2~3年以内に実現すると述べた。
孫氏はAGIの進化を5つのレベルに分類。レベル1では人間と自然な会話が可能になり、レベル2では複数の科目で博士号を取得できる知能を持つ。レベル3ではエージェントとして機能し、レベル4ではAI自身が発明を行う。レベル5ではAI同士が組織的な活動を開始すると説明した。そして、超知性(ASI)はこのAGIのレベルを1万倍超えるものと定義した。
さらに、2024年9月にOpenAIが新モデル「o1」を発表したことに触れ、「o1」によりAIが「理解」だけでなく「思考」することが可能になったと強調。難解な物理・科学・生物の問題で、「GPT-4o」の正答率が56%、人間の専門家が70%であるのに対し、「o1」は78%の正答率を達成したと述べた。数学の難問でも、「GPT-4o」が13%の正答率であるのに対し、「o1」は83%を記録したという。
「o1」の思考手法として、論理的思考の連鎖(Chain of Thought:CoT)を採用し、数千のエージェントが並列で数十億回の試行錯誤を行うことで、新たな解決策の「発見」や「発明」が可能になると説明した。その結果、「知のゴールドラッシュ」が到来し、AIによる発明は「早い者勝ち」になると述べた。
また、2~3年以内にパーソナルエージェント(PA)が登場すると予測。PAは個人の健康状態を把握し、病院の予約などを代行するAIであり、エージェント同士がやり取りを行う「A to A」の世界が訪れるとした。AGIの進化はさらに8つのレベルに達し、最終的にはPAが個性や思いやり、倫理観などの自己意識を持つパーソナルメンターになると語った。
最後に、AIの最大のゴールを「人々の幸せを最大化」することに設定し、社会的・文化的な倫理基準を考慮した安全なAIの進化が重要であると強調した。
from:孫正義氏、超知性AIにより「知のゴールドラッシュ」の到来を予想。SoftBank World 2024 レポート
【編集部解説】
AI革命の可能性とリスクについて
今回開催された「SoftBank World 2024」では、AIの未来に関する革新的なビジョンが示されました。ソフトバンクグループ株式会社の孫正義氏は、特別講演でAIの進化がもたらす驚異的な可能性を語られましたが、その一方で慎重な対応が必要な点も浮き彫りになりました。
孫氏が強調したAGI(汎用人工知能)やASI(人工超知能)の到来は、技術の急速な進歩を示しています。AIが人間の知能を大きく超えることで、社会や産業は劇的に変化するでしょう。しかし、その変化がポジティブなものだけでなく、潜在的なリスクも伴うことを私たちは認識する必要があります。
特に、AIが自ら「発明」を行う段階に達した場合、その制御や倫理観の保持が重要となります。AIによる発明が「早い者勝ち」となると、不公平な競争が生まれたり、テクノロジー格差が広がる可能性もあります。私たちは、AIの進化が人々の幸福に直結するよう、適切なガバナンスや倫理基準を確立することが求められます。
パーソナルエージェントの未来と課題
孫氏が予測するパーソナルエージェント(PA)の登場は、私たちの生活を大きく変える可能性があります。PAは、個人のニーズに合わせて最適な支援を提供し、時間や労力の節約に貢献するでしょう。しかし、その一方で個人情報の取り扱いやプライバシー保護など、解決すべき課題も存在します。
PAが私たちの生活に深く関与することで、データの保護やセキュリティの確保がこれまで以上に重要になります。技術の恩恵を最大限に享受するためには、ユーザー側の意識向上とともに、企業や社会全体での取り組みが不可欠です。
AIと共存する未来への取り組み
AIの進化は止まることなく続いています。私たちは、この変化に対応し、AIと共存するための準備を進めていかなければなりません。技術そのものは中立であり、どのように活用するかは人間次第です。
孫氏が提唱する「人々の幸せを最大化」するAIのゴール設定は、その方向性を示す重要な指針となります。AIの開発・利用においては、倫理的な配慮や社会的な影響を考慮し、持続可能な未来を築くことが求められます。
技術者や研究者だけでなく、一般の人々もこの議論に参加し、共により良い社会を目指していくことが大切です。AIがもたらす可能性と課題を理解し、適切な形で取り入れることで、私たちの生活はより豊かになるでしょう。