Last Updated on 2024-11-12 08:16 by admin
米国防総省は2023年8月、新興防衛企業Allen Control Systems(ACS)が開発した自律型AI搭載機関銃システム「Bullfrog(ブルフロッグ)」の技術実証実験を実施しました。
システムの特徴と性能
重量400ポンド(約180kg)未満の小型システムながら、7.62mm口径M240機関銃を搭載し、電気光学センサー、独自AI、コンピュータービジョンソフトウェアを組み合わせることで、驚異的な命中精度を実現しています。200ヤード(約180m)の距離で小型ドローンをわずか2発で撃墜可能で、1回の撃墜コストは約10ドルという圧倒的なコスト効率を達成しました。
開発の背景
ウクライナ戦争での経験が開発の直接のきっかけとなりました。開発者のSteve Simoni氏とLuke Allen氏は、ウクライナ軍兵士がAK-47でドローンを撃ち落とそうとする様子を見て、これを「ロボティクスで解決できる問題」と認識しました。
今後の展開
ACSは今後12-18ヶ月以内に、走行中の車両での運用や、複数システムを連携させた統合防空網の構築を目指しています。
from:The AI Machine Gun of the Future Is Already Here
【編集部解説】
米軍が新たに導入を検討している「Bullfrog(ブルフロッグ)」システムは、AIと従来の機関銃を組み合わせた革新的な対ドローン防衛システムです。この開発の背景には、中東やウクライナでの紛争で顕在化した小型ドローンの脅威があります。
特筆すべきは、このシステムのコスト効率性です。1回の撃墜にかかるコストはわずか10ドル程度とされており、従来の対空ミサイルシステムと比較して圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。
技術面では、電気光学センサーと独自開発のAI、コンピュータービジョンを組み合わせることで、人間の射手では困難な高速移動する小型ドローンの追尾と撃墜を可能にしています。特に注目すべきは、200ヤード(約180m)の距離で小型ドローンを2発で撃墜できる精度です。
しかし、このシステムは完全自律型の致死性兵器システムとしても機能可能であり、ここに重要な倫理的課題が存在します。現在は人間による発射判断を必要とする設定となっていますが、将来的な完全自律化への懸念は払拭できません。
国際社会においても、AIを活用した自律型兵器システムの規制に向けた動きが加速しています。2023年11月に発表された「AI及び自律性の責任ある軍事利用に関する政治宣言」には51カ国が署名しており、2026年までに完全自律型兵器システムの規制枠組みを確立することが目標とされています。
このシステムが示唆する未来は、人間の直接的な戦闘参加が減少し、AIによって制御される自律型システム同士の戦いへと戦場が変容していく可能性を示唆しています。
一方で、この技術は軍事利用に限らず、重要インフラの保護や災害救助における危険区域での作業など、民生利用の可能性も秘めています。
テクノロジーの進化は避けられませんが、私たちはその利用における倫理的枠組みの構築と、適切な規制の確立を同時に進めていく必要があります。