Last Updated on 2024-11-30 16:24 by admin
カナダの主要メディア企業5社が2024年11月29日金曜日朝、オンタリオ州上級裁判所にOpenAIを提訴した。
原告
- トロントスター(Torstar)
- ポストメディア(Postmedia)
- グローブ・アンド・メール(The Globe and Mail)
- カナダン・プレス(The Canadian Press)
- カナダ放送協会(CBC/Radio-Canada)
被告
- OpenAI(企業価値1,570億ドル、2024年10月時点)
訴訟内容
- 賠償請求額:1記事あたり最大2万カナダドル(約14,700米ドル)
- 2015年以降、原告らが公開した記事数:合計1,065万件
- 請求内容:懲罰的損害賠償、利益の配分、今後の記事使用差し止め
背景
- OpenAIは既にAssociated Press、NewsCorp、Condé Nast、Axel Springer、Le Mondeなどとライセンス契約を締結済み
- 同様の訴訟が米国でも進行中(ニューヨーク・タイムズ対OpenAI・Microsoft)
- コロンビア大学トウ・デジタルジャーナリズムセンターの調査によると、OpenAIと提携しているか否かに関わらず、全ての出版社のコンテンツがChatGPTで不正確に表現されている
OpenAIの対応
OpenAIは「公開データを使用し、フェアユースと国際著作権原則に基づいてモデルを訓練している」と主張している。同社は訴状への回答に40日間の猶予がある。
from:Canadian media companies sue OpenAI in case potentially worth billions
【編集部解説】
編集部解説
今回のカナダメディア企業によるOpenAIへの訴訟は、AIと著作権の関係性に新たな一石を投じる重要な事案となっています。
この訴訟の特徴的な点は、原告に公共放送のCBCが含まれていることです。これは単なる営利目的の訴訟ではなく、公共の利益を守るという側面も持ち合わせています。
また、コロンビア大学トウ・デジタルジャーナリズムセンターの調査によると、OpenAIとライセンス契約を結んでいるメディアであっても、ChatGPTによる不正確な情報の生成を防ぐことができていないことが明らかになっています。
興味深いのは、OpenAIの対応です。同社は「公開データを使用し、フェアユースと国際著作権原則に基づいてモデルを訓練している」と主張していますが、この「フェアユース」の解釈が国際的な論点となっています。
特に注目すべきは、この訴訟が84ページにも及ぶ詳細な法的文書を提出している点です。これには「Robot Exclusion Protocol」やペイウォールなどの技術的保護手段を無視してコンテンツを収集した具体的な事例が含まれています。
この訴訟の影響は、AI開発企業とコンテンツ制作者との関係性を再定義する可能性を秘めています。既にAssociated Press、Axel Springer、Le Mondeなどの大手メディアとOpenAIの間でライセンス契約が結ばれていますが、これらの契約内容も今後見直される可能性があります。
さらに重要なのは、この訴訟がAIの学習データに関する新たな法的基準を確立する可能性があることです。特に、「パブリックドメイン」と「フェアユース」の概念が、AI時代にどのように解釈されるべきかという問題提起となっています。
メディア業界にとって、この訴訟の結果は、デジタル時代における知的財産権の保護と、AIとの共存の在り方を左右する重要な転換点となる可能性があります。