Last Updated on 2025-03-18 11:06 by admin
Zoomは2025年3月末に、AI Companion機能に「エージェント型」アップグレードを導入する予定である。この新機能により、ユーザーに代わってタスクを識別し実行できるようになる。
Zoom Workplace内の新しい「タスク」タブを通じて、ユーザーはAI Companionにフォローアップミーティングのスケジュール設定、会議からのドキュメント生成、ビデオクリップの作成などを依頼できるようになる。
また、Zoom Workplaceモバイルアプリには新しい音声レコーダー機能が追加され、対面会議の録音、文字起こし、要約が可能になる。この機能は2025年3月中に提供開始予定である。さらに5月にはライブノート機能が展開され、Zoomミーティングや電話通話中にリアルタイムの要約を生成する。
Zoomの最高製品責任者Smita Hashim氏は「AIがすべての製品とインタラクションのあらゆる部分に広がり、本当に役立つ方法で、より多くのことを実現できるようにサポートする」と述べている。
さらに2025年4月には、月額12ドル(約1,800円)の「Custom AI Companion」アドオンが提供開始される。このアドオンには、チームにメッセージを送信するために使用できる自分自身のAIバージョンを生成するカスタムアバター機能が含まれる。Zoomは追加コストなしで汎用アバターテンプレートも提供する予定である。
これらの新機能はすべて、Zoom Workplaceユーザーに追加コストなしで提供される予定である。
from:Zoom’s AI will soon help you do busywork, too
【編集部解説】
Zoomが2025年3月17日に発表した「エージェント型AI Companion」は、単なる会議支援ツールから一歩進化し、ユーザーに代わって実際にタスクを実行できる「エージェント」へと変貌を遂げようとしています。これは、AIアシスタントの領域で大きな転換点となる可能性を秘めています。
従来のAI Companionは会議の要約や文書作成の支援といった「補助的な役割」に留まっていましたが、新しいエージェント型AIは「推論」と「記憶」の能力を活用し、複雑な問題解決や意思決定を行えるようになります。これにより、フォローアップミーティングのスケジュール調整や会議からのドキュメント生成といった、これまで人間が手作業で行っていた業務を自動化できるようになるのです。
特に注目すべきは「Zoom Tasks」機能です。この機能は会議の要約やチャット、メールから自動的にアクションアイテムを検出し、それらのタスクを実行に移すことができます。例えば、会議中に「来週フォローアップの打ち合わせをしましょう」という発言があれば、AIがそれを検知して自動的にスケジュール調整を行うといったことが可能になります。
また、Zoom Workplaceモバイルアプリに追加される音声レコーダー機能も見逃せません。この機能を使えば、対面での会議内容を録音し、自動的に文字起こしと要約を行うことができます。さらに5月にはライブノート機能も導入され、Zoomミーティングや電話通話中にリアルタイムで要約が生成されるようになります。
これらの機能は、単に時間を節約するだけでなく、ビジネスコミュニケーションの質を根本から変える可能性を持っています。例えば、会議に参加できなかった人でも、AIが生成した要約や重要ポイントを確認することで、迅速に情報をキャッチアップできるようになるでしょう。
AIエージェントがもたらす業務効率化の可能性と課題
Zoomの最高製品責任者であるSmita Hashim氏は「AIがすべての製品とインタラクションのあらゆる部分に広がり、本当に役立つ方法で、より多くのことを実現できるようにサポートする」と述べています。これは単なるマーケティング的な表現ではなく、AIが業務プロセス全体を最適化する方向へと進化していることを示しています。
特筆すべきは、ZoomがAI Companionをオープンプラットフォーム化し、サードパーティのエージェントとの連携も可能にする計画を持っていることです。例えば、ServiceNowのAIエージェントとの統合が予定されており、これによりZoomの会議内容からServiceNowのワークフローを自動的に開始するといったことが可能になるでしょう。
また、2025年4月には月額12ドル(約1,800円)の「Custom AI Companion」アドオンが提供開始される予定です。このアドオンには、自分自身のAIバージョンを生成するカスタムアバター機能が含まれており、チームへのメッセージ送信などに活用できます。これにより、例えば休暇中でも自分のAIアバターが基本的な質問に回答したり、情報共有を続けたりすることが可能になるかもしれません。
一方で、このようなAIエージェントの普及には課題もあります。例えば、AIが自律的に意思決定を行うことによる責任の所在の問題や、セキュリティやプライバシーに関する懸念が挙げられます。Zoomは「AI Companionはセキュリティとプライバシーを核とした信頼、安全性、責任あるAIの基盤の上に構築されている」と主張していますが、実際の運用においてはこれらの懸念に対する明確な対応が求められるでしょう。
ビジネスコミュニケーションの未来像
Zoomのエージェント型AIの導入は、単なる機能追加にとどまらず、ビジネスコミュニケーションの未来像を示すものと言えます。特に注目すべきは、AIが「記憶」機能を持ち、過去の会話や決定事項を覚えておくことで、より文脈に沿った支援を提供できるようになる点です。
例えば、「前回の会議で決まったことは何だっけ?」といった質問に対して、AIが過去の会議記録を参照して回答できるようになります。これにより、情報の断片化や伝達ミスによる業務の非効率が大幅に改善される可能性があります。
また、AIが会議の準備段階から支援を行えるようになる点も重要です。3月末からは、AIが自動的に会議のアジェンダを準備できるようになると報じられています。これにより、会議の準備時間が短縮されるだけでなく、より構造化された効率的な会議運営が可能になるでしょう。
さらに、Zoomは独自の小規模言語モデル(SLM)とサードパーティの大規模言語モデル(LLM)を組み合わせた「連合型アプローチ」を採用しています。これにより、特定のタスクに最適化されたAIモデルを効率的に活用し、コスト効率と性能のバランスを取りながらAIサービスを提供することが可能になっています。
テクノロジーの民主化と今後の展望
Zoomの新機能の多くは、Zoom Workplaceユーザーに追加コストなしで提供される予定です。これは、高度なAI機能を特別なスキルや追加投資なしに誰もが利用できるようにする「テクノロジーの民主化」の流れを強化するものと言えるでしょう。
Saint Leo大学の最高情報責任者であるSteven Carroll氏は「この技術は単に効率性だけでなく、従業員が手作業に費やす時間を減らし、意味のあるコラボレーションにより多くの時間を費やすことを可能にします」と評価しています。これは、AIが単調な作業を代行することで人間がより創造的で価値の高い業務に集中できるようになるという、AIとの共存の理想的な形を示しています。
今後、このようなエージェント型AIの進化により、業務プロセスの自動化はさらに進み、人間とAIの役割分担も変化していくことが予想されます。特に、複数のAIエージェントが協調して複雑なタスクを遂行する「マルチエージェントコラボレーション」の領域は、今後の発展が期待される分野です。
Zoomのエージェント型AI Companionは、単なる会議ツールの進化にとどまらず、私たちの働き方そのものを変革する可能性を秘めています。テクノロジーの進化と人間の創造性が融合した新しいワークスタイルの到来を、私たちは目の当たりにしているのかもしれません。
【用語解説】
エージェント型AI(Agentic AI):
人間の介入を最小限に抑えながらデータやツールと対話し、目標指向の動作に重点を置いたAIシステム。手順のリストを作成してそれを自律的に実行することでタスクを達成する。従来のAIが単に質問に回答するだけだったのに対し、エージェント型AIは自ら判断して行動を起こせる。
AI Companion:
Zoom社が提供する最新型生成AIデジタルアシスタントツール。ユーザーの生産性を向上させ、チームメンバーとより効果的に共同作業をすることができる。2023年9月の提供開始以来、400万以上のアカウントで有効化されている。
Zoom Tasks:
Zoom Workplaceの新機能で、AI Companionを使用して会話に基づきユーザーのタスクを検出、提案、完了するツール。会議内容から自動的にタスクを抽出し、管理できる。
フェデレーテッドアプローチ:
Zoomが採用しているAI戦略で、自社独自の大規模言語モデル(LLM)に加え、OpenAIやAnthropic等の外部企業のモデルも活用して機能を強化する手法。これにより、各タスクに最適なAIモデルを選択できる。
【参考リンク】
Zoom AI Companion(外部)
Zoomの生成AIアシスタント。メール作成、会議要約、ブレインストーミング支援など多様な機能を提供する。
Red Hat – エージェント型AI解説(外部)
エージェント型AIの概念や特徴、活用事例について詳しく解説しているページ。
【編集部後記】
みなさんは会議の後、「あのタスク、誰が担当するんだっけ?」と思い出せなくなったことはありませんか?Zoomの新しいエージェント型AIは、そんな日常の小さな悩みを解決してくれそうです。AIが会議を聞いて自動的にタスクを拾い上げ、実行までサポートする未来。これは単なる便利ツールを超えた、働き方の変革かもしれません。みなさんならZoomのAIエージェントにどんなタスクを任せてみたいですか?あるいは、AIに任せたくない業務はありますか?ぜひSNSでお聞かせください。