Stability AI、アカデミー賞3度受賞のVFXディレクター、ロバート・レガートを迎え映画業界進出を加速

2025年3月21日11:38

AI（人工知能）ニュース

Last Updated on 2025-03-21 12:24 by admin

アカデミー賞を3度受賞したVFXの専門家、ロバート・レガートがStability AIに参画したことを発表した。レガートは『タイタニック』、『ヒューゴの不思議な発明』、『ジャングル・ブック』でアカデミー賞を獲得し、『アバター』では革新的な仮想撮影技術の開発に貢献した。

レガートは長年ジェームズ・キャメロン監督と協力関係にあり、キャメロン監督は1年前からStability AIの取締役会メンバーを務めている。Stability AIはStable Diffusionという画像生成AIモデルで知られる企業である。

Stability AIのCEOプレム・アッカラジュは、レガートに同社のツールを業界で活用するためのパイプライン開発とVFX業界全体との関係構築を任せると発表した。

レガートは30年以上のキャリアを持ち、パラマウント・ピクチャーズ、デジタル・ドメイン、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスなどの企業でも働いた経験がある。

Stability AIは画像、動画、3D、音声などの様々な形式のオープンソースモデルを開発し、高品質な視覚メディア制作のためのプロフェッショナルツールを提供している企業である。

from:Oscar-Winning VFX Director Robert Legato Joins Stability AI

【編集部解説】

VFXの巨匠ロバート・レガートがStability AIに参画したことは、映画業界とAI業界の融合が新たな段階に入ったことを示しています。

レガートは『タイタニック』『ヒューゴの不思議な発明』『ジャングル・ブック』でアカデミー賞を獲得し、特に『アバター』では革新的な仮想撮影技術を開発しました。この技術により『アバター』は世界興行収入で大きな成功を収めました。

注目すべきは、レガートの長年の協力者であるジェームズ・キャメロン監督が1年前からStability AIの取締役を務めていることです。キャメロン監督は『タイタニック』や『アバター』シリーズで知られる映画界の巨匠であり、彼の参画はStability AIの映画業界への本格的な進出を示唆しています。

Stability AIはStable Diffusionという画像生成AIモデルで知られていますが、最近ではイメージだけでなく、動画、3D、音声などの様々な形式のオープンソースモデルを開発しています。同社のCEOプレム・アッカラジュ氏は、レガートの採用によってVFX業界との関係を強化し、生成AI技術を映画製作のパイプラインに統合する意向を示しています。

レガート自身は「アーティストを第一に考えたAIへのアプローチ」という点に共感を示しており、AIが創造性を置き換えるのではなく高めるツールとなることを目指しています。これは、AIが人間のクリエイターを脅かすという懸念に対する重要な姿勢表明と言えるでしょう。

この動きが示唆するのは、ハリウッドの映画製作においてAIが単なる補助ツールではなく、創造的なプロセスの中核に位置づけられつつあるという現実です。VFXの世界では、CGIが映画製作に革命をもたらしたように、今度は生成AIが新たな革命を起こす可能性があります。

特に注目すべきは、レガートのような伝統的な映画製作のプロフェッショナルがAI企業に参画することで、技術と芸術の橋渡しが行われている点です。彼の30年以上にわたるキャリアで培われた経験は、AIツールを実際の映画製作のニーズに合わせて調整する上で非常に価値があります。

一方で、生成AIの映画業界への導入には課題もあります。著作権の問題や、AIが既存のVFXアーティストの仕事を奪うのではないかという懸念は依然として存在しています。しかし、Stability AIが掲げる「アーティスト・ファースト」のアプローチは、これらの懸念に対処しようとする姿勢を示しています。

今後、レガートとStability AIの協力によって、映画製作のパイプラインがどのように変化していくのか、そして観客の映画体験がどう進化していくのかに注目が集まるでしょう。テクノロジーと創造性の融合が新たな映画表現の可能性を広げることを期待したいものです。