Last Updated on 2025-03-21 16:08 by admin
中国東部の江蘇省の常熟人民法院は、AI生成画像に著作権保護を与えるべきとの判決を下した。これは中国本土でAI生成コンテンツの著作権保護を認めた2例目の判決である。
事件は、林氏(姓のみ公表)がMidjourneyというAIツールを使用して2023年初めに作成したハート型の風船を描いた画像に関するものである。林氏はこの画像をソーシャルメディアに投稿した後、許可なく同デザインをソーシャルメディア投稿に使用した2社を著作権侵害で訴えた。
裁判所は、林氏がプロンプトテキストを修正し、編集ソフトウェアを使用して画像の詳細を洗練する過程で「独自の選択と配置を示した」と認め、その独創性から著作権で保護される作品として認定した。判決では、被告企業に対して公開謝罪と、林氏への10,000人民元(約1,380米ドル)の損害賠償を命じた。
中国での最初のAI生成コンテンツの著作権保護を認める判決は2023年後半に北京インターネット裁判所が下したもので、Stability AIのStable Diffusionで生成された若いアジア人女性の画像について、人間の制作者の知的インプットに基づいて著作権のある芸術作品と見なされるべきだと結論づけていた。
from:East China court rules that AI-generated image should have copyright protection
【編集部解説】
今回のニュースは中国におけるAI生成コンテンツの著作権保護に関する重要な進展を示しています。この事例から、AI技術と知的財産権の関係について、いくつかの重要な点が浮かび上がってきました。
まず、この判決は中国本土で2例目のAI生成コンテンツの著作権保護を認めるものです。最初の判決が2023年末に北京インターネット裁判所で下されたのに続き、今回は江蘇省の裁判所が同様の判断を示しました。これは、中国の司法システムがAI技術の進歩に追いつこうとしている証拠と言えるでしょう。
注目すべきは、裁判所がAI生成画像の著作権を認める際の基準です。人間のユーザーがプロンプトの修正や画像の編集を通じて「独自の選択と配置」を示したことが重視されています。これは、AIツールを使用しても、人間の創造性が作品に反映されていれば著作権が認められる可能性を示唆しています。
この判決が与える影響は広範囲に及ぶ可能性があります。AI生成コンテンツの著作権保護が認められることで、クリエイターたちはAIツールを活用しながら、自身の作品の権利を主張できるようになります。これは、AIを活用したクリエイティブ産業の発展を後押しする可能性があります。
しかし、同時に潜在的なリスクも存在します。AIによる創作物と人間の創作物の境界が曖昧になることで、著作権紛争が増加する可能性があります。また、AIが既存の作品を学習して生成したコンテンツの著作権をどう扱うかという問題も浮上してくるでしょう。
長期的な視点から見ると、これらの動きは、AI技術と著作権法の融合という大きな課題に対する一つの解答を示しています。今後、各国の法制度がAI技術の進歩にどのように対応していくのか、注目していく必要があるでしょう。
【用語解説】
Midjourney:
テキストプロンプトから高品質な画像を生成するAIツール。Discordというチャットアプリ上で動作し、商用利用も可能な有料サービスである。
常熟人民法院:
中国江蘇省蘇州市常熟市にある裁判所。中国の地方裁判所に相当する。
著作権保護の範囲:
著作権が及ぶ範囲のこと。著作権法では、創作性を有する表現に対して保護を与えるが、アイデアや概念自体は保護されない。
【参考リンク】
Midjourney公式サイト(外部)
AIを使って高品質な画像を生成できるサービス。テキスト入力から芸術的な画像を作成できる。
文化庁「AIと著作権について」(外部)
日本政府の文化庁によるAIと著作権の関係についての公式見解や資料を提供している。