Last Updated on 2025-04-01 10:56 by admin
Runway AI社は2025年3月31日、同社の最新AIビデオ生成モデル「Gen-4」を発表した。このモデルは、AIビデオ生成における最大の課題であった「キャラクターと背景の一貫性」を解決し、複数のショットやシーンを通して同一のキャラクターや背景を維持できる技術を実現している。
Google、Nvidia、Salesforceに支援されているニューヨークを拠点とするこのスタートアップは、「Gen-4」をすべての有料サブスクライバーと企業顧客向けにリリースし、今週後半には追加機能も予定している。現在、ユーザーは720p解像度で5秒から10秒のクリップを生成できる。
Gen-4の特徴は、ビジュアル要素の「永続的なメモリ」のような機能を作成することで、キャラクター、オブジェクト、環境が確立されると、システムはその核となる属性を維持しながら、異なる角度からそれをレンダリングできる点である。Runwayのドキュメントによると、Gen-4はユーザーが被写体の参照画像を提供し、望む構図を説明すると、AIが異なる角度から一貫した出力を生成できる。
モデルの能力を紹介するために、Runwayは「New York is a Zoo」や「The Retrieval」といった短編映画をGen-4で完全に作成した。「The Retrieval」は謎の花を探す探検家を追う内容で、1週間未満で制作された。
Runwayは2018年にCristóbal Valenzuela（CEO）、Alejandro Matamala（最高デザイン責任者）、Anastasis Germanidis（CTO）によって設立された。同社は現在40億ドルの評価で新たな資金調達ラウンドを進めていると報じられている。
Runwayは現在、著作権で保護された作品がAIモデルのトレーニングに無許可で使用されたと主張するアーティストからの訴訟に直面しており、フェアユース原則を防御として引用している。
Gen-4は、Runwayの有料プランで利用可能で、スタンダードプランは月額12ドル、プロプランは月額28ドル、無制限プランは月額76ドルとなっている。
from:Runway Gen-4 solves AI video’s biggest problem: character consistency across scenes
【編集部解説】
Runway AIが発表したGen-4は、AIビデオ生成技術における画期的な進化と言えるでしょう。これまでのAIビデオ生成の最大の課題は「キャラクターの一貫性」でした。つまり、異なるショットやシーンを通して同じキャラクターや背景を維持することが極めて困難だったのです。
従来のAIモデルでは、各フレームが独立した創造的タスクとして処理されていたため、キャラクターの顔が微妙に変化したり、背景要素が突然消えたりするという問題がありました。これは、複数のアーティストがそれぞれ独立して映画の1フレームずつを描くようなもので、結果として視覚的に不連続な映像になっていたのです。
Gen-4の革新的な点は、「ビジュアル要素の永続的なメモリ」とも言える機能を実装したことにあります。一度キャラクターやオブジェクト、環境が確立されると、システムはその核となる属性を維持しながら、異なる角度からレンダリングできるようになりました。これは単なる技術的改善ではなく、「面白い映像の断片を作る」ことと「実際の物語を語る」ことの間にある大きな隔たりを埋める進化です。
特筆すべきは、ユーザーが被写体の参照画像を1枚提供するだけで、AIがさまざまな照明条件や場所、処理を通じて一貫したキャラクターを生成できる点です。これにより、クリエイターは複雑なVFXやアニメーション技術がなくても、一貫性のあるビジュアルストーリーテリングが可能になります。
Runwayは「New York is a Zoo」や「The Retrieval」といった短編映画を完全にGen-4で制作し、その能力を実証しています。特に「The Retrieval」は1週間未満で制作されたとのことで、従来の映像制作と比較して驚異的な速さです。
この技術の登場は、映画制作、広告、コンテンツ制作業界に大きな影響を与える可能性があります。独立系クリエイターは、これまで大手スタジオにしか利用できなかったようなビジュアルエフェクト機能にアクセスできるようになる一方で、従来のVFXやアニメーションの専門家は職業的な不確実性に直面することになるでしょう。
Animation Guildが委託した2024年の調査によると、AIを採用した映画制作会社の75%が既に仕事を削減、統合、または排除しており、2026年までに10万以上の米国エンターテイメント業界の仕事がAIの影響を受けると予測されています。これは技術革新がもたらす光と影の両面を示しています。
また、著作権に関する問題も浮上しています。Runwayは現在、許可なく著作権で保護された作品がAIモデルのトレーニングに使用されたと主張するアーティストからの訴訟に直面しています。同社はフェアユース原則を防御として引用していますが、裁判所はまだこの著作権法の適用について決定的な判断を下していません。
技術的な側面では、Gen-4は720p解像度で5秒から10秒のクリップを生成できます。これは高品質な映像制作に十分な解像度と言えるでしょう。
価格面では、Runwayの有料プランで利用可能で、スタンダードプランは月額12ドル、プロプランは月額28ドル、無制限プランは月額76ドルとなっています。比較的手頃な価格設定により、プロフェッショナルだけでなく、個人クリエイターにも利用しやすい環境が整っています。
興味深いのは、Gen-4の発表がOpenAIのジブリスタイル画像生成機能が大きな話題となった直後だという点です。OpenAIのこの機能は非常に人気となり、前例のない需要によりサーバーを一時的にクラッシュさせ、サム・アルトマンCEOは「GPUが溶けている」とツイートするほどでした。この出来事は、AIによる芸術スタイルの模倣に関する著作権問題も浮き彫りにしています。
Runwayはまた、「Hundred Film Fund」という基金を設立し、AIを使用して映画を制作する映画製作者に最大100万ドルを提供しています。これは、AIを活用した新しい映像表現の可能性を広げる取り組みとして注目されています。
【用語解説】
キャラクター一貫性（Character Consistency）:
複数のショットやシーンを通して、キャラクターの外見、服装、特徴などが一貫して維持されること。従来のAIビデオ生成では、各フレームが独立して生成されるため、キャラクターの顔や特徴が微妙に変化してしまう問題があった。
コンティニュイティ編集（Continuity Editing）: 映画やビデオにおいて、時間と空間の一貫性を維持するための編集システム。アイライン（視線の方向）やマッチングアクションなどの技術が含まれる。
世界一貫性（World Consistency）:
キャラクターだけでなく、背景や環境も含めて、ビデオ全体で一貫した世界観を維持する能力。
リファレンス機能（References）:
Gen-4の新機能で、ユーザーが1枚の参照画像を提供するだけで、様々な照明条件や場所、処理を通じて一貫したキャラクターを生成できる。
Hundred Film Fund:
Runwayが設立した基金で、AIを使用して映画を制作する映画製作者に最大100万ドルを提供している。新しい映像表現の可能性を広げる取り組み。
【参考リンク】
Runway AI（外部）
AIを活用した映像制作ツールを提供する企業。Gen-4をはじめとする最先端のAIビデオ生成技術を開発している。
Imagine AI（外部）
AIを使って画像やステッカーを生成するツール。キャラクター一貫性機能を備えている。
InVideo AI（外部）
テキストプロンプトからAIビデオを生成するツール。編集も簡単なコマンドで行える。
【参考動画】
【編集部後記】
Gen-4の登場により、私たちは映像制作の新たな時代に入りつつあります。技術的なスキルや予算ではなく、想像力と目的が制作のボトルネックとなる時代です。誰でも説明できる任意の映像を作成できる世界では、「何を見せる価値があるのか？」という問いがますます重要になってくるでしょう。
テクノロジーの進化は止まることがありません。Gen-4が解決した「キャラクターの一貫性」という課題は、AIビデオ生成の可能性を大きく広げるものですが、同時に私たちはこの技術をどう活用し、どのような物語を語っていくのか、という創造的な挑戦に直面しています。技術と創造性の共進化が、これからの映像表現にどのような革新をもたらすのか、目が離せません。
【関連記事】
AI（人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む
