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MITが開発、AIコード生成の精度を飛躍的に向上させる新手法 – 小規模モデルで大型AIを凌駕

MITが開発、AIコード生成の精度を飛躍的に向上させる新手法 - 小規模モデルで大型AIを凌駕 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-20 07:51 by admin

MITの研究チームは、AI生成コードの精度を向上させる画期的な手法を開発しました。この新しいアプローチは、大規模言語モデル(LLM)が生成するコードが、プログラミング言語のルールに準拠し、エラーなく動作するよう自動的に誘導します。

研究チームの手法は「逐次モンテカルロ」と呼ばれる技術を用いて、LLMが生成する複数の出力候補を並行して評価し、有望な出力に計算リソースを集中させる仕組みです。これにより、小規模なLLMでも大規模モデルを上回る精度でコードを生成できるようになりました。

MITの大学院生João Loulaを筆頭に、Mila-Quebec人工知能研究所のBenjamin LeBrun、ジョンズ・ホプキンス大学の大学院生Li Duらが中心となって行われたこの研究は、Pythonコード、SQLクエリ、分子構造、ロボット制御計画など多様な領域で有効性が実証されています。

この技術は、プログラミングアシスタント、AIを活用したデータ分析、科学的発見ツールなど幅広い応用が期待され、特に非専門家がAI生成コンテンツを活用する可能性を広げています。研究成果は2025年4月18日に発表され、国際学習表現会議(ICLR)で発表される予定です。

from:Making AI-generated code more accurate in any language

【編集部解説】

テクノロジーの進化とともに、AIによるコード生成は開発者の強力な味方となりつつあります。しかし、AIが生成するコードが実際に動作するか、意図した通りの結果を出すかという「信頼性」の問題は常に付きまとっていました。

今回MITの研究チームが発表した新手法は、この課題に対する画期的なアプローチと言えるでしょう。特に注目すべきは、「構造」と「意味」という二つの側面からコードの品質を担保する点です。プログラミング言語の文法に従っているかという構造的な正確さと、ユーザーが意図した機能を実現するという意味的な正確さ、この両方を効率的に実現する仕組みを編み出したのです。

この研究の革新性は、単にAIモデルを大きくするのではなく、「知識をエンジニアリングする」というアプローチにあります。これは、ディープラーニングの主流である「より多くのデータでより大きなモデルを訓練する」という方向性とは一線を画しています。研究チームが「小さなモデルが自分の重さをはるかに超えるパンチを放てる」と表現しているように、効率的なアルゴリズム設計によって、比較的小規模なモデルでも高性能を実現できることを示しています。

この技術がもたらす可能性は計り知れません。プログラミングの知識がなくても、自然言語で指示するだけで複雑なデータベース操作ができるようになるかもしれません。また、科学研究やロボット工学など専門分野においても、AIが生成する信頼性の高いコードが研究の加速に貢献するでしょう。

AI業界では現在、Llama 4やGPT-4.5、Gemini 2.0 Proなど大規模モデルの開発競争が激化していますが、MITの研究は「より賢いアルゴリズム」によって小規模モデルでも高性能を実現できることを示しており、AI開発の新たな方向性を示唆しています。

この研究はまた、AIの「ハルシネーション(幻覚)」問題に対する一つの解決策も提示しています。LLMは時に、もっともらしいが実際には誤った情報や、文法的には正しいが実行不可能なコードを生成することがありますが、「逐次モンテカルロ」手法はこの問題に効果的に対処できる可能性があります。

長期的には、この技術の普及によりプログラミングスキルの価値が変化する可能性もあります。基本的なコード作成が自動化されれば、プログラマーにはより高度な設計能力や問題解決能力が求められるようになるでしょう。また、AIが生成するコードの著作権や責任の所在といった法的・倫理的問題も今後重要になってくると考えられます。

【用語解説】

大規模言語モデル(LLM)
ChatGPTなどの基盤となる人工知能技術で、大量のテキストデータから学習し、人間のような文章を生成できるAIモデル。Llama 4、GPT-4.5、Gemini 2.0 Proなどが最新の大規模モデルとして知られている。

逐次モンテカルロ法
確率的なサンプリング手法の一種。複数の候補を並行して評価し、有望なものに計算リソースを集中させる技術。

構造的制約と意味的正確さ
プログラミングにおいて、「構造」はコードが言語の文法に従っているかという側面、「意味」はコードが意図した機能を実現するかという側面を指す。

オープンソースモデルとクローズドソースモデル
オープンソースは誰でも中身を見たり改変したりできるモデル(例:Llama 4)、クローズドソースは企業が独占的に所有・管理するモデル(例:GPT-4.5、Gemini 2.0 Pro)を指す。

逐次モンテカルロ法

この研究の「逐次モンテカルロ法」は、以下のように例えるとわかりやすい

1. 将棋の次の一手:プロ棋士は、次の一手を考える際に、有望な手順だけを深く読み、明らかに不利な手順は早めに切り捨てる。この研究のAIも同様に、有望なコード生成パスに集中し、エラーが出そうなパスは早期に破棄する。

2. 投資ポートフォリオ管理:優秀な投資家は、パフォーマンスの良い銘柄に資金を集中させ、成績の悪い銘柄から資金を引き上げる。この研究では、計算リソースを「有望な出力候補」に動的に再配分している。

3. 料理コンテスト:複数の料理人が同時に調理を始め、途中経過を審査員が確認。有望な料理には追加の材料や時間が与えられ、うまくいかない料理は早めに中止される。これにより、限られたリソースで最高の料理が完成する確率が高まる。

【編集部後記】

テクノロジーに関心をお持ちの皆さん、AIによるコード生成の世界は急速に進化しています。今回ご紹介したMITの研究は、「AIが書いたコードは信頼できない」という従来の常識を覆す可能性を秘めています。皆さんも、GitHub CopilotやChatGPTなどのAIコード生成ツールを試してみませんか?実際に使ってみると、その可能性と限界が体感できるはずです。また、Llama 4やGPT-4.5などの最新モデルが登場する中で、この「賢いアルゴリズム」がどのように活用されていくのか、ぜひ一緒に注目していきましょう。皆さんの仕事や学びにどのような影響を与えると思いますか?でのご意見をお待ちしています。

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TaTsu
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